琉球編/沖縄県伊是名村
2000人が暮らす離島に4年。
海にも似た島民の素朴さに魅かれ、
支えられて診療を続けています。

伊是名村立歯科診療所 中 島 健 先生
●1960年(昭和35年)福岡県北九州市生まれ
●九州歯科大学卒業、同大学院修了
●1993年(平成5年)4月より伊是名村 で委託開業
島に診療所ができて約15年、私がこちらに渡って丸4年です。私が離島診療に携わることになったのは、在学中に厚生省が派遣する「離島診療班」に参加したことがきっかけです。約1ヵ月間、無医村の津堅島(つけんじま)に渡り、人口800人余りの島民の診療に当たりました。抜歯オンリーの口腔状態にとてもショックを受け、この時に知り合った沖縄県環境保健部医務課の方から、伊是名島の離島診療を薦められたことが発端ですね。島に渡った日、村長さんや村の人の温かい歓迎を受け、私の決心は揺るぎないものになりました。
村は4人に1人が65歳以上のため、高齢者治療が中心です。特に65歳以上の女性で総義歯の方が多いようです。毎日15〜20人が予約で見えます。「沖縄タイム」でしょうか、残念ながら皆さん、時間厳守とはいきませんが。(笑)午前中は義歯の患者さん、午後からは下校した子供たちが増えます。1月〜3月は農繁期なので、患者さんは少なくなります。
診療は、やはり予防が基本です。当初は、予防の大切さがなかなか理解してもらえませんでした。しかし、学校検診ではフッ素のうがいを薦めて、健全歯率が向上するように努めていますし、島内の小学生175人、中学生104人全員に唾液検査を行い、データを集めて分析中です。日々の診療の他には、村の広報誌「広報いぜな」に「歯と健康」をシリーズ連載したり、福祉課主催の講演会や出産前のお母さん対象のマタニティ教室を開いたりしています。歯科衛生士、アシスタント、私のわずか4人の小所帯ですが、「予防第一と笑顔」の診療で、患者さんに親しまれる診療所をと願っています。
見知らぬ土地では、馴れない言葉や風習に苦労するのが常です。私も方言が分からなくて困りましたが、村の行事がある度に出かけて、村の人達と顔見知りになれるように心がけてきました。また、離島の暮らしは
「フェリーいぜな」が運び、フェリーなしでは生活が成り立ちません。この診療所の北側にはドクターが1人
常駐する「県立伊是名診療所」もありますが、急患の時は、ヘリコプターで空輸もします。冬に海がしけたらフェリーは欠航します。待っていた補綴物が名護の技工所から届かないことを経験してからは、東京や那覇の勉強会に出席して、現在、補綴義歯を勉強中なんです。
スポーツは好きで、学生時代は野球一筋。「いぜな88トライアスロン」にも2回参加しました。余裕でしょうか、近頃は魚釣や夜のタコ採りも楽しんでいます。
今後は、離島診療に携わっているドクターたちの情報交換や人的交流のネットワークを広げたいですね。青い海のように純朴で穏やかな人柄がほのぼのと伝わる伊是名島です、島の皆さんの口腔衛生と健康づくりのために、少しでも役立てればと思います。
サンゴ礁の美しい 陸ギタラ・海ギタラ
神代の昔から変わらない青い海、
白いサンゴ礁、おおらかな人柄
琉球王国のルーツをたぐれば、
伊是名島に辿り着きます。
面積13.95Km、人口1,935人(1994年)の伊是名村は1939年(昭和14年)村制を施行。琉球王国第二尚氏の始祖・尚円王の誕生地で知られる島です。尚円王は1470年王位に就いて以来、400有余年続く琉球王国の礎を築いた人物。尚円王にまつわる伝説や遺跡が古を偲ばせます。日本の渚100選に選ばれた二見ガ浦海岸、伊是名城跡と玉御殿(県指定史跡)、銘苅家住宅(国指定重要文化財)、島の全景が見渡せる伊是名山森林公園・チジン山、尚円王御庭公園内の尚円王の誕生地・みほそ所(県指定史跡)や尚円王金丸の銅像、神に豊作を祈る最古の古謡ティルクグチ、神からの使者を招くイルチャヨー祭り、五穀豊饒を願う仲田の組踊り、サトウキビ畑を渡る風のすがすがしさ、採れたてのモズクの懐かしさ、1988年にスタートし、鉄人たちが集ういぜな88トライアスロン、そして屋那覇島の島影が蜃気楼のように見える伊是名ビーチ。伊是名島は、古人が耳にした潮騒が今も聞こえてくる、神と素朴な心と自然が同居する桃源郷です。
● 写真:永野一晃