はじめに
近年、歯科治療においては、予防的観点から接着技法を積極的に取り入れた修復法が検討されるようになった。材料面でもレジン系歯冠修復材料および接着材の高性能化が進み、これまでの治療に対する考え方が大きく変わろうとしている。
修復材料に関しては、硬質レジンに無機質フィラーを高密度に充填することで高い物性を得ようとする方向で開発が進み、新素材ハイブリッドセラミックス「エステニア」(図1)が誕生した。エステニアは、審美性のみならず、臼歯部の咬合圧にも耐えうる機械的強度を有するうえ、対合歯の摩耗や歯周組織に対する影響にも配慮した生体適合性に優れた材料として大きく期待されている。
また、最近新しく開発された接着材クリアフィル ライナーボンドIIΣ(図2)は、従来のライナーボンドIIのコンセプトである操作の簡便性と、優れた歯髄保護効果を継承し、さらに改良、発展させたものである。従来から接着耐久性の低下は、接着材自体の強度不足によることが報告されているが、このクリアフィル
ライナーボンドIIΣのボンディング材層は、マイクロフィラーの含有により、優れた機械的強度を示し、耐久性、封鎖性が大幅に向上している。また、光重合に加え、デュアルキュアにも対応できるようなり、さらに、歯質だけでなく、金属や陶材等への接着性が付与されたことにより、充填から合着、リペアまで幅広く応用することが可能となった。
これまで 生活歯のエステニア修復において、クリアフィル ライナーボンドIIΣを接着材に用いたところ、セット後の冷水痛や咬合痛といった不快症状もなく良好な予後を得ている。そこで今回は、代表的な症例をもとにその臨床術式を紹介したい。
エステニア(インレー、アンレー)の臨床術式
1. 窩洞形成時のおもな注意点
- メタルインレーに比較して、テーパーをやや大きくし、全体に丸みをもたせる。
- ファセットを横断するときは、ファセットを窩洞に含める。
- クリアランスは咬頭で1.5mm以上、小窩で1.0mm以上確保する。
- 咬合圧に抵抗するため、側室マージン部はショルダー形成、機能咬頭を窩洞に含める場合は水平に削除する。
- 窩縁斜面は付与しない。
2. クリアフィル ライナーボンドIIΣによる接着操作
エステニアは、92wt%無機質フィラーを含有するため、ポーセレンに準じた接着操作を行う必要がある。
図3にクリアフィル ライナーボンドIIΣによる接着操作の流れを示す。また、図4以下に下顎大臼歯を例に臨床術式を解説する。
図4 咬合紙であらかじめ対合関係をチェックしてから窩洞形成を行う。
図5 模型上で作製したエステニアインレーおよびアンレー(咬合面観)。
図6 頬側面観。
図7 口腔内試適。 適合状態を十分にチェックしたうえで咬合調整を行う。
図8 必要に応じてエステニアの被着面に弱圧でサンドブラストを行うと、フィラーが露出して接着性が向上する。
図9 K-エッチャントGEL(リン酸)による被着面の活性化。
図10 K-エッチャントGELをエステニア被着面に5秒間以上作用させ、水洗、乾燥する。
図11 シランカップリング剤の活性化。プライマーとポーセレンボンドアクティベーターを混和すると、ポーセレンボンドアクティベーターに含まれるシランカップリング剤が活性化される。
図12 シランカップリング処理。プライマーA液、B液とポーセレンボンドアクティベーターの3種混和物をエステニア被着面に5秒間作用させ、乾燥する。
図13 プライマーA液、B液を混和する。
図14 混和したプライマーを歯面に塗布し、30秒間処理した後、液溜まりが無いように確実に乾燥させる。
図15 ボンドA液、B液を混和する。A液のみで光重合型ボンディング材として使用できるが、エステニアの合着では、B液と混和してデュアルキュアとして用いる。
図16 混和したボンドを、歯面に塗布してマイルドなエアブローで均一にする。
図17 クラパールDCは低粘度デュアルキュアタイプのコンポジットレジンで、陶材等とのなじみが良いため、エステニアの処理にボンドは不要である。
図18 クラパールDCを等量出して、30秒間練和する。
図19 練和したクラパールDCをエステニア被着面に塗布する。
図20 インレー装着後、余剰セメントを小筆で拭き取る。
図21 多方向から十分に光照射する。
図22 再度を咬合をチェックして研磨、完成。
まとめ
これまでの修復治療においては、細菌の侵入に関してあまり認識されておらず、二次齲蝕などのトラブルの中には、修復材料、合着材、歯質の力学的な不調和に起因すると思われるものが数多い。
したがって、これからの修復材料には、審美性だけでなく、理工学的性質が天然歯に近似しており、機能性、耐久性、生体親和性、操作性を兼ね備えた材料が求められている。エステニアはこれらの点で現在最も理想に近い素材であろう。
また、優れた封鎖性を維持するためには、修復材と歯質の間をとりもつ接着材にも配慮が必要である。エステニアのような歯冠修復材料の接着耐久性、衝撃耐久性は、使用するセメントの影響を大きく受けることが指摘されている。
今回紹介したクリアフィル ライナーボンドIIΣは、接着力だけでなく、機械的性質が一段と向上し、優れた耐久性を示すため、エステニアの特性を最大限に発揮できるものと期待している。
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