備後編/広島県布野村
父が築いた診療所を礎に、
地域にしっかり根を下ろした
「村のドクター」をめざしたいですね。

瀧口歯科医院 瀧口 久良先生
●1956年(昭和31年)広島県双三郡布野村生れ
●1983年(昭和58年)広島大学歯学部卒業後、同大口腔外科学第一講座に入局
●1988年(平成元年) 公立三次中央病院歯科口腔外科に医長として勤務
●1998年(平成10年)布野村で新築開業
父・忠邦が村で診療所を開業したのが昭和26年ですから、今年で47年です。父は歯科診療40年の功績で学校医表彰も受けていますが、ただ長く診療に携わってきただけではなく、村の皆さんからの信頼や声援の支えがあったからこそ、こうして続けてこられたのだと思います。
私が歯科医をめざしたことについては、私なりに考えるところがありました。私は広島大学歯学部卒業後は第一口腔外科に入局し、平成元年からは、公立三次中央病院歯科口腔外科の医長を務めてきましたが、新しい臨床歯学や包括治療には意欲的に取組みたいとずっと考えていました。
しかし、診療所を継ぐことが具体化したのは2年ほど前です。父もそろそろ70歳を迎えます。今は健康で仕事ができても、村の診療所としての役割や、患者さんの口腔衛生や健康の維持を考え合わせれば、私も役立ちたいと考えました。
父とも相談して準備を進め、役場に程近い国道沿いのこの場所が確保できて、1月5日の新築開業となりました。私には25年ぶりの帰郷です。
村の高齢化率は約29%と高いため、在宅訪問治療などの課題もありますし、歯周疾患への認識などはまだまだ低いと思います。今後はやはり、父が長年培ってきた患者さんとの信頼関係を強めること、予防を中心とした診療に徹すること、それが私の仕事と思いますね。特に来院されていない患者さんに対して、歯の健康の大切さを啓蒙し、丁寧に指導していきたいと考えています。
子供の頃から布野川の河原で釣りをするのが好きで、よく父に「一日川から帰らん」とひやかされました。釣りは今でも大きな楽しみです。父も私も園芸や土いじりが趣味でして。去年は老人福祉センターがある福祉公園内で、村のボランティアの人達と一緒に汗して、パンジーや葉牡丹の苗を植えるお手伝いをしました。この春、きれいな花が庭一面に咲き競うのを、父も私もひそかに心待ちしているところです。
布野村(ふのそん)は、広島県の北部にある人口2,128人の山村です。北は島根県、東は君田町、西は作木町、南は三次市に隣接し、広島市まで約80km、三次市まで約12kmの距離に位置しています。村の中央を南北に布野川(江の川水系)が流れ、流域沿いに集落や耕作地が広がり、広島市と松江市をつなぐ国道54号が縦走しています。村一帯が沼地で「浮沼」と伝えられたことから「布野」と呼ばれました。
古来より出雲文化の影響が色濃く残り、古墳群が多く散在し、山陰と山陽を結ぶ出雲街道の宿場町として栄えた山村です。明治22年の町村制施行で、横谷村・上布野村・下布野村・戸河内村の4村が合併して布野村になり、今年で109年を迎えました。
知波夜比売(ちはやひめ)神社の無形文化財・古代神楽や秋祭りの楽打ちをはじめ、臨済宗松雲寺の境内にある県指定重要文化財の石造五輪塔、県の天然記念物・二反田断層帯のほか、伊藤左千夫に師事し、斎藤茂吉、土屋文明、島木赤人らとも親交を深めたアララギ派の歌人・中村憲吉の生家や歌碑もあります。また、平成8年にオープンした「道の駅・ゆめらんど布野」は地域文化の交流拠点として注目を集めています。