ラテックスアレルギーとは


ラテックスアレルギーは即時型と遅延型に分かれる。
 即時型反応はラテックスに接触してから5〜20分後に何らかの症状を呈する。その症状は、接触蕁麻疹といった接触した部位のみに紅斑、膨疹、そう痒を呈するものから、鼻炎、結膜炎、顔面浮腫、咽頭浮腫、呼吸困難、喘息、アナフィラキシーまで様々であり、死亡に至ることもある。
 遅延型アレルギーは接触後1〜2日で発症する。紅斑、乾燥、亀裂といった湿疹の症状を呈する。多くはゴム製品の製造過程で加硫促進剤や酸化防止剤として用いられる化学物質の過剰残余物によるものが多く、ラテックスの遅延型アレルギー報告例は少ない1)。  


ラテックスアレルギーの
ハイリスクグループ


外科医、歯科医、手術室看護婦など医療従事者、二分脊椎患者のような何度も手術を経験した患者、アトピー素因をもつ人、ゴム採取者のようにラテックスにしばしば暴露される人は、ラテックスの接触感作を起こす可能性が高い。


検 査

ラテックスアレルギーの検査方法は、血液検査、皮膚テスト、使用テストに分けられる。血液検査はラテックス特異IgE値の測定によって、50〜80%の感度でラテックスアレルギーを診断できる。皮膚テストはスクラッチテスト(プリックテスト)とパッチテストに分けられる。
 スクラッチテスト(プリックテスト)で即時型アレルギー、パッチテストで遅延型アレルギーを診断する。スクラッチテスト(プリックテスト)はゴム手袋1gを細かく刻み、生理食塩水5mlを加え30分常温で保存しその抽出液を綿棒に含ませ、表皮を傷つけた皮膚に塗る。15〜20分後に紅斑と膨疹の大きさを測る。陽性対照としてヒスタミン液を、陰性対照として生理食塩水を用いることが多い。
 パッチテストはラテックスシートをそのまま、あるいはラテックス抽出液を用い、48時間閉鎖貼布する。除去後1時間、24時間に判定を行う。同時に加硫促進剤、酸化防止剤などもパッチテスト至適濃度で検査を行う。使用テストは手(指)をぬらし、実際使用していたゴム手袋をはめる。15〜20分でゴム手袋をはずし、紅斑、膨疹、そう痒を判定する。


交差反応

ラテックスアレルギー患者は抗原蛋白質量が同一の果物、野菜と交差反応を示すことが報告されている。バナナ、アボカド、クリ、キウイ、ポテトなどの報告がある2)。このような交差感作が成立している患者はその食物の摂取を中止しなくてはならない。


予 防

その食物の摂取を中止しなくてはならない。  ラテックスアレルギー患者は、ラテックス製品に接触しないように注意する必要がある。また手術を受けるときや、救急時にそなえ必ずラテックスアレルギーであると ラテックスアレルギー患者は、ラテックス製品に接触しないように注意する必要がある。また手術を受けるときや、救急時にそなえ必ずラテックスアレルギーであると示す物を身につけておかなければならない。医療従事者であれば、処置・手術時の手袋をラテックス手袋ではなく、プラスティック手袋や最近市販されている脱蛋白ゴム手袋に変更する必要がある。脱蛋白ゴム手袋は殆どラテックス蛋白が除去されているが、わずかに含まれたラテックスに反応する場合も考えられるので、使用前には必ず専門機関での使用テストが必要である。


症例1

年齢;23歳
性別;女性
職業;歯科衛生士
アレルギー歴;なし
現病歴;仕事でゴム手袋を使用し1カ月両手に強いそう痒を認め、引っかいていた。その後両手に紅斑、丘疹、亀裂を認めた。ステロイド外用によっても治癒しないため当科を受診した。 (図1)
血液検査;白血球数5000/μl、好酸球数410/μl、IgE RIST 2559 IU/mlであった。
スクラッチテスト、パッチテスト;スクラッチテストはラテックスシート抽出液で行った。PRICK-LANCETTERで皮膚表皮をスクラッチし試料をスクラッチ部位に塗り20分、50分後に判定した。パッチテストは患者ゴム手袋、ラテックスシート、その他加硫促進剤など21種で行った。
結果;スクラッチテスト、パッチテストの結果を (表1)
に示す。スクラッチテストはラテックスシート抽出液陽性であった (図2)。パッチテストは患者ゴム手袋、ラテックスシート陽性、プラスチック手袋、治療に使用したステロイド外用剤、その他加硫促進剤など21種は陰性であった(図3)
症例1のまとめ
 スクラッチテスト、パッチテストの結果から、この症例はラテックスの即時型と遅延型アレルギーの混合型であると診断した。プラスチック手袋が陰性であったので、仕事時ゴム手袋をプラスチック手袋に変更するよう指導した。


症例2

年齢;25歳
性別;女性
職業;歯科衛生士
アレルギー歴;なし
現病歴;仕事でゴム手袋を使用し、2〜3カ月後手湿疹を認めた。妊娠を期に退職し手湿疹は軽快した。不幸にも死産のため産婦人科で児を子宮からラテックスバルーンで摘出した。その直後に両眼瞼浮腫、血圧低下、咽頭浮腫となり、意識消失した。ステロイド点滴により症状改善した。
(図4)
血液検査;白血球数3800/μl、好酸球数312/μl、IgE RIST 139IU/ml、ラテックス特異IgE(CAP-RAST)0.93U/ml(クラス1、陽性)、バナナ、アボカド特異IgE(CAP-RAST)、クリ特異IgE(シオノリア)陰性であった。
スクラッチテスト、使用テスト;スクラッチテストはラテックスシート抽出液、患者ゴム手袋抽出液、バナナ、アボカドで行った。PRICK-LANCETTERで皮膚表皮をスクラッチし試料をスクラッチ部位に塗り5分、20分、30分、50分後に判定した。
 使用テストは、ゴム手袋と脱蛋白ゴム手袋の2種類で行った。ゴム手袋使用テストは右第5指を濡らし、ゴム手袋をはめ2〜3回こすった。5分後に手袋を除去し判定し、さらに20分判定も行った。脱蛋白ゴム手袋使用テストは右手全体を水で濡らし脱蛋白ゴム手袋をはめ2〜3回こすり、20分後に除去し判定を行った。
結果;スクラッチテスト、使用テストの結果を (表2)。 に示す。スクラッチテストは、ラテックスシート、ゴム手袋、バナナで陽性であった(図1)。使用テストはゴム手袋陽性、脱蛋白ゴム手袋陰性であった。(図5)  (図6) 
症例2のまとめ
 この症例は、仕事で使用していたゴム手袋で感作され、ゴム製バルーンの処置によってアナフィラキシー症状を呈した1例である。バナナはスクラッチテスト陽性であったが、日常生活で食しても何の症状も認めないことから、大量に食べることを禁止した。また、仕事時に現在は脱蛋白ゴム手袋を使用している。


まとめ

症例1は、脱蛋白ゴム手袋が開発される前の症例であり、仕事時使用していたゴム手袋をプラスチック手袋に変更することを指導したが、プラスチック手袋では細かい操作ができないために、仕事を辞めなくてはならなかった。プラスチック手袋や、ビニール手袋ではゴムの持つ弾性に欠けるため細かい手作業に向かない。症例2は脱蛋白ゴム手袋を使用することで、以前に使用していたゴム手袋と使用感で大差なく現在も仕事を続けている。
 我々が経験した歯科衛生士のラテックスアレルギーの2例で脱蛋白手袋の有用性を確認した。


参考文献
1)Sugiura M, Hayakawa R, Kato Y: A case of latex contact allergy, Environ Dermatol Vol3: 165-169, 1996
2)Tanaka S, Hayakawa R, Sugiura M, Azuma Y, Ikeya T:A case of contact urticaria due to latex, Environ Dermatol Vol4: 225-230, 1997


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