はじめに
クラレ社により
クリアフィルメガボンド
(以下メガボンド)が開発された。現在普及している、
クリアフィルライナーボンドIIΣ
(以後ライナーボンドIIΣ)も引き続き供給されるが、この2種の接着システムに関しては使用に際して若干の差異があることをよく理解し、それぞれの臨床スタイルにあったシステムを選択すべきである。
化学重合型レジンを用いる場合、あるいはデュアルキュア型のコア用レジンの接着、さらにはポーセレンや金属材料などの間接法修復に際しては、マルチユース接着システムとして開発されたライナーボンドIIΣが便利である。
一方、光重合レジンに限定されるものの、通常のコンポジットレジン修復を中心に使用するのであれば、一液プライマーと1液ボンドとから成るメガボンドが推奨される。水洗不要というセルフエッチングプライマーの大きな利点に加えて、プライマーの混和も不要である。メガボンドはプライマーとボンドが1液化されただけでなく、プライマーの処理時間とボンドの光照射時間が著しく短縮され、接着操作に必要な時間が短縮されたことも大きな特徴である。接着操作の簡便化により、簡易防湿により修復処置を行うことができる。コンポマーと同程度の簡便さで、それ以上の優れた修復が可能になったといえよう。
メガボンドを用いた症例とライナーボンドIIΣを用いた症例の要点を解説し、両者の使い分けについて述べる。
表1
メガボンドとライナーボンドIIΣとの使い分け
歯頸部の修復
写真1
メガボンドの接着操作手順。
写真2
右下犬歯、第一小臼歯唇側歯頸部に齲蝕を伴う不良充填物が存在する。
写真3
旧充填物と齲蝕の除去を行う。旧充填物はエアータービンで、齲蝕の除去は低速のラウンドバーで行う。歯肉側窩縁部が歯肉縁すれすれのところにあり、歯肉から出血させてしまった。
写真4
プライマー採取。
写真5
プライマー塗布。たっぷりと塗布する。特に窩縁部エナメル質にはプライマーが滞留しにくいので数回繰り返して塗布すると効果がより確実になる。処理時間は20秒。
写真6
軽くエアー乾燥する。プライマーの液だまりが残らないようにする。プライマーの蛋白凝固作用により歯肉からの出血がおさえられている。水洗不要のため、簡易防湿のための巻綿花を交換する必要がない。
写真7
ボンド採取。
写真8
ボンドを塗布し、軽圧のエアーでボンドを薄層にする。
写真9
光照射を行う。10秒間。
写真10
コンポジットレジンを選択して充填する。この程度の窩洞の大きさなら、一塊としてレジンを充填する。レジンを追加すると気泡が入りやすい。
写真11
光照射により重合させる。
写真12
スーパーファインのダイヤモンドポイントにより形態修正する。
写真13
ホワイトポイントで面を仕上げる。
写真14
シリコンポイント(茶、青)で研磨する
写真15
修復完了。
臼歯の修復
写真16
術前:上顎第一大臼歯、口蓋側近心咬頭が破折した症例。
写真17
プライマー採取。
写真18
プライマー塗布。ラバーダム防湿が望ましいとされるが、メガボンドによる修復では操作が非常に簡便で短時間に処置が終了するので簡易防湿でも可能である。
写真19
軽圧エアーにて乾燥。
写真20
ボンド採取。
写真21
ボンド塗布、エアーにて薄層にし、光照射10秒。
写真22
コンポジットレジン充填、付形、光照射。
写真23
形態修正、咬合調整、仕上げ研磨を行う。
写真24
修復完了。
口腔内での修復物の
写真25
上顎第二小臼歯の陶材焼付け冠の遠心部ポーセレンが破折している。食片圧入を主訴に来院。
写真26
補修部の窩洞を調整する。被着体は金属とポーセレンである。メガボンドでもライナーボンドUΣでも修理が可能である。以下にメガボンドを用いる際のステップを示す。
写真27
リン酸で5秒間エッチングし、水洗乾燥する。
写真28
アロイプライマーを塗布し乾燥する。
写真29
プライマーとアクチベーターを混和して、被着面全体を5秒間処理し、乾燥する。
写真30
ボンドを塗布して光照射する。
写真31
コンポジットレジンを充填し、形態修正、咬合調整、仕上げ研磨を行う。
写真32
前装部の破折症例。
写真33
同様の処置により補修が可能である。
レジンコーティング法を応用したエステニアによる修復
写真34
大型の修復物が脱離した症例。修復象牙質の形成により露髄はしていない。歯髄は正常な生活反応を示す。
写真35
齲蝕を除去した後、歯面をレジンでコーティングする。メガボンドによるレジンコーティングの操作ステップ。
写真36
コーティング材料としてクリアフィルプロテクトライナーFを使用する。
写真37
レジンコーティングの模式図。レジンコーティングにより、形成歯の歯髄保護と、レジンセメントの接着性向上とが期待される。
写真38
コーティング終了後、印象を採得し、模型を製作する。レジンとシリコーン印象とが反応して接着を阻害する危険があるので、寒天アルジネートによる連合印象がよい。
写真39
ハイブリッドセラミックス“エステニア”により修復物を製作する。
写真40
接着には、パナビアフルオロセメントを用いる。
写真41
修復物内面とコーティング面には、リン酸エッチングのあと、ライナーボンドIIΣのプライマーとアクチベーターの混和液を用いて処理する。
写真42
パナビアにより、修復物を接着する。光照射後、咬合調整マージン部の仕上げ研磨を行う。
ライナーボンドIIΣによるレジンコア
写真43
根管充填の終了した前歯。光照射が十分に行えないような症例ではメガボンドは使用できない。この症例ではライナーボンドIIΣが適している。
写真44
プライマーを塗布し、20秒処理の後エアー乾燥。
写真45
ボンドA、Bを混和してデュアルキュアとする。
写真46
布後光照射する。デュアルキュアの時でも光を照射した方が接着性は向上する。
写真47
デュアルキュア型のコア用レジン、DCコア。
写真48
ADポスト、サンドブラスト処理が施されている。
写真49
DCコアとADポストによりレジンコア築盛。
写真50
必要に応じてクリアフィルフォトコア、AP-Xを併用する。
写真51
光照射後、形成し、印象採得に移る。AP-Xを用いるとマージンが歯肉縁上に設定されても審美性が損なわれない。
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