はじめに


 アーウィンは、作用機序としてH基を破壊し、さらにその効果としては表層のみであり、深部には効果がない。今までのレーザーとの決定的な差は熱蒸散による作用機序でないことだ。私が現在アーウィンを気に入っているのは、この2点である。  歯科の疾患は多数あるが、中でも細菌あるいはウイルスによるものが中心である。カリエスについては、ミュータンス菌の酸産生であり、歯周病に関しては、咬合性外傷(悪習癖や不適合な補綴)だけで発生するもの以外は、歯周病菌(嫌気性菌)の毒素の関与がはっきりしている。この2大歯科疾患で考えれば、細菌がもし完全に除去できれば発病しないのであるが、口腔内の環境を考えた時、全く消滅させることは不可能だと思われる。しかし、細菌数を減少させることによって、発生はかなり抑制することができる。それでは、今まで細菌のコントロールが可能だったろうか?私が今アーウィンに求めているのはこの点にある。


歯周病について


 歯周病に関した患者さんを数多く診るうちに、口腔内の清掃状態があまり良くない人でも、X-P上しっかりとした白線があり、歯肉の炎症もあまり認められない場合がある一方、かなり徹底したプラークコントロールの管理が行われ、SRPやF.O.Pを行いEPPの改善があったにもかかわらず、3〜4カ月以上経過するとポケットが深くなり、歯周の炎症が認められる人もいることを経験する。  口腔内の細菌の種類は様々であり、我々開業医レベルでは、細菌に対する検査等もなかなか正確に行えるものではないと思う。しかも、最も大切なPに対しては、ポケット内部の嫌気性菌であり、その検査は非常に難しい。  何度SRPしてもまた繰り返すGA、プラークコントロールが比較的良く、フルマウスで固定され安定した咬合にもかかわらず歯周の炎症が消失しない、そういった細菌の強さや数などに問題があると思われる症例にアーウィンは特に適していると思う。今まではもう一歩としていたPに対して、大きな効果があるのがアーウィンである。  私はメーカーに対して、「Pに対して全部に効果のあるというような話はダメだ」とよく話をする。Pに対して、EPP検査もきちんとしない、プラークコントロールをしない、SRPもしない、それでアーウィンを使っても、アーウィンの良さを引き出せないと思っている。  コーヌスクローネ、インプラント、メタルボンド等、完全な咬合の再現が必要な症例では、必ずPに対しての完全な治療管理が必要となる。ポケット内の消毒(特にセメント質)がある程度長い間可能であれば、自分の治療物に対して長期間使用できる可能性が高まり、今までの私たちの悩みはかなり少なくなると思う。1度かなり感染を受けた歯牙に対してのメンテナンスは感染のコントロールが大切になる。  なお、痛みは炎症の強い所ほど有り、2日ほど続くようである。照射中も炎症部は疼痛もあり、出血もしてくる。その後は、患者さんが実感できるほど歯肉の引き締まりや口腔内のさっぱり感も出てくる。こういったリアクションは現状を把握する上で臨床家にとっては重要である。  使用方法については10pps.60mj.曲80°チップにて、なるべく歯質に向けて照射している。ポケット底を照射する場合は10pps.60mj.曲p60°チップが良いと思う。


カリエスについて

 次に、カリエスに対しての使用について述べたいと思う。  私たちがよく口にする“カリエス”とは、どの範囲までを考えればいいのだろうか。エキスカで軟化した部分をとった所、齲蝕検知液で着色した所、象牙細管に感染した部分まで、と色々な考え方がある。  経験を積めば積むほど、軟化象牙質の除去は難しいと感じるようになった。「まあいいや」と思えば、どんどんいいかげんになる部分でもある。しかし、感染に対しての診断は、抜髄がよいか保存処置がよいかの判断にもつながる重要な要因である。  インレー形成時、かなり深い軟化象牙質をどうするか、着色はどう処置するか、私はかなり迷っていたのである。  例えば、歯根膜炎を起こしたクラウンを除去した時、そのメタルコア、レジンコアにセメントの流出による感染が必ずあることが、その酸化の程度によって認められる。CR充填時のホウロウ象牙質の感染、症状のない慢性齲蝕の露髄等、様々な悩みがあった。  そういった部分に、今、アーウィンを積極的に使用している。歯頸部カリエスにはもちろん、3級窩洞にも、エナメル質には軽くタービンで、他は全てアーウィンで、麻酔を使用せずカリエスの除去をしている。  今までは、ある程度切削しないとできなかった歯頸部も、アーウィンでは少量の切削で非常にきれいな面を出すことができ、また、出血もほとんどない。  ボンディングおよびライニングが接着の対象を象牙質としている現在、象牙質がきれいであることは非常に大切なポイントとなっている。  象牙細管の感染については、アーウィンを利用してから数年にわたる長期間の症例がないため、今後の経過を観察していきたいと思っている。  なお、切削についての痛みは、永久歯に対しては少し痛みを感じることがあるが、軽度であり、全く痛みを感じない人も多いようである。人間は長い時間の痛みの刺激には弱いと思われるが、レーザーはパルスなので、かなり感覚的に軽く感じているようである。また、乳歯に対しては全く痛みはないようで、これは乳歯の構造上、当然と考えている。


その他の使用例

 以上、簡単に歯周病とカリエスについて述べたが、次に、それ以外の使用例について報告する。

1.アフタについて
 何故アフタができるか。これも細菌やウイルス関与がいわれている。  1〜2日目の新しいアフタについては、処置後痛みは消え、アフタもかなり消失した形態となる。その後軟膏の塗布を行う。  また、1〜2週間を経過した難治性のアフタに対しては、消失まで2日ほどかかり、処置後もアフタの口腔粘膜の欠落は視覚上も認められる。そうした場合には、軟膏の塗布、アフタッチの併用もよい。アフタの再発は同部位ではほとんどなくなり、数もかなり減ってくるようである。10pps.60mj.曲80°チップ、非注水で円を描く様に行う。

2.メラニン色素の除去について
 レーザー照射後もゆっくりとなくなり、かなり効果があった。特に美しさを求める女性にとっては、メタルボンドによる補綴の仕上がり感が良いことについては満足度は高かったようである。痛みはほとんどなかった。10pps.60mj.曲80°チップ、非注水。

3.脱離の再Setについて
 脱離するメタルコアおよび補綴物は、かなり感染し酸化している。補綴物はサンドブラスターおよびスチームクリーナー等による作業が可能であるが、歯牙の処置はなかなかできない。もちろん明らかにやり直す症例を除いてであるが、メタルボンド等の脱離については再合着を希望する患者さんは多く、そんな時は、歯面はまだ軟らかくはないが変色していることが多い。こういった場合、できる限り残っているセメント等を除去した後、レーザーを10pps.80mj.曲80°チップにて歯面に当てながら照射すると、変色はかなり取れ、歯面も少し硬くなる。少しは歯質も飛んでいると思われるが、合着に対して溶解しないセメント(レジン・セメント等)を使用することで、かなり良い接着を得ることができる。  なお、私は通常のSet時、保険自費を問わず、必ずスチームクリーナーによる洗浄を行った後、合着するようにしているが、気をつければつけるほど、脱離は減少する。  また、現在コーヌスクローネを多症例行っており、かなりの治療期間、歯質(象牙質)が口腔内にさらされている例がある。Pの管理も必要なので、治療の期間は長くなる傾向がある。こうした場合も、内冠をSetする時に歯冠を10pps.60mj.曲80°チップ、非接触にて、照射すると、明らかに歯面の色は変化し、歯質も少し強くなる。コーヌスにとって内冠は最も取れて困る部分のためかなり気を遣っている。

4.歯牙破折等の新鮮な歯髄の露出に対しての消毒、滅菌および凝固を与えたい症例
 外傷やインレー形成時によるあまり感染が著しくない露髄に適している。アーウィンにて歯質の消毒を注水下で行った後、露髄した部位に非注水、非接触にて照射し、凝固層を作り、その後は通常通り水酸化カルシウム製剤にて直覆する。10pps.60mj.曲80°チップで行う。60°は出血がし易くなる。

5. GA等について
 口腔内の細菌が活性化しているので、全顎超音波スケーリングを行う。肉芽の増殖が少ない場合、ポケット内を10pps.60mj.曲60°チップにて歯牙および肉芽部分に十分出血するまで行う。肉芽が大きい場合は、10pps.160mj.曲80°チップにて肉芽の除去を行った後、ポケット内を60mj.に下げて行う。無麻酔下で行うことができる。少し痛みはあるが局麻より軽い。JGにてポケット内の消毒を行うことも必要である。

6. Perについて
 何度根管治療をしても消失せず、過去歯根端も行い、X-P上は骨欠損が少なくなっているがフィステルが消えない症例に対し、フィステル内部に照射した。  今までこのような症例は絶対に治癒しないと思っていたが、3回目の照射時にフィステルが消失していた。これは、過去に不適当な根管治療を受けた後、長い間放置された例では、歯質自体が感染していて治癒していかないものと考えている。こういった症例には、非常に効果が認められる。

7.根管治療について
 今までも、ほとんど現在の方法でPerができなかったので、根管の拡大後も歯質が少し汚れていると判断した場合に使用している。急性のPerには直接根尖にあたるとどろんとした出血があり、急性状態の消失は1〜2日でかなり早い。

8.メタルコアの形成時について
 完全に根管が閉塞していて、歯質の崩壊も多いがもう一度保存したい症例には、コア形成後、歯面全体に照射し、FCにて固定し消毒する。また、合着時にも軽く非接触照射し、乾燥も行う。10pps.80mj.曲80°チップ。まだ症例の経過が短いため、年単位での経過を追ってみるつもりである。

9.舌苔について
 舌苔の多い人は口腔内細菌が多いと考えているが、特に舌に対しては消毒がしにくい部分である。今回は半分照射したその面のみ苔が消失し、きれいになっていたが、照射しない対称部位には変化がなかった。この時、含嗽剤を必ず併用している。味覚の変化はない。

10.補綴物が古くなり、歯頸部に変色(崩壊ではない)した症例
 カリエス防止に10pps.50mj.曲60°チップにて照射。フッ素含有PPMが高い歯磨剤でプラークコントロールを実行する。

11.メンテナンスについて
図1(治療の流れ)

 今まで不満だったのがメンテナンスである。磁性アタッチメント、コーヌスの支台歯のメンテナンスを現在レーザーにて行っている。10pps.60mj.曲60°チップ。


症 例 @

S.K. ♂ 6歳6カ月   D部の乳歯齲蝕に光重合型アイオノマー充填を行ったケース。 Eは他院にて治療されている。10pps.121mj.曲80°チップにて約3分ほど切削(接触)した。なお、エナメル質は少しタービンにて切削してある。もちろん、無麻酔下で行ったが、痛みは全くなかった。齲窩の深さは、露髄まで0.5〜0.7mm程度と、かなり深いカリエスであった。以前は、局麻を行いカリエスの除去をする際、追求するとこの程度のカリエスでも露髄してしまうケースも結構あったが、レーザー使用により歯質の切削はかなり減少する。  また、表面の処理も同時に行えるため(私はCR時もエッチングアイオノマー充填時も必ず表面処理をするが)、よりきれいな接触が得られるように思う(こういった数値が必要な部分は大学等の研究結果を早く知りたいと思っている)。患者さんは「タービンより絶対にいい」という感想が多い。

症例1-1 術前。

症例1-2 照射直後。

症例1-3 術後。


症 例 A

J.M. ♂ 11歳  初診日当日、学校のプールで上顎前歯部を強打。 1の歯冠部1/3程度より破折し、点状(約1mm程度)露髄して来院。  破折した部分はプールの中から友人が見つけ、牛乳に入れて持参した。  歯冠部の破折のエネルギー吸収により歯牙の脱臼は認められず、自発痛もほとんど無い状態で、破折からの時間を考えると新鮮な症例であり、歯髄への感染は少ないだろうと判断し、アーウィンによる歯牙破折片への照射を10pps.60mj.曲80°チップにて行い、最後に露髄した面へ10pps.60mj.曲p80°チップにて照射し、消毒および凝固させた。  さらにカルビタール、ウルトラブレンドにて直接歯髄覆罩を行い、クラパールにて合着を行った。  予後については、まだ不確定だが、当日、翌日、1週間、3カ月後共に自発痛等の症状は認められなかった。

症例2-1 術前。

症例2-2 術前。

症例2-3 破折片。

症例2-4 照射直後。

症例2-5 合着直後。

症例2-6 合着直後。


症 例 B

N.Y. ♂ 63歳
 平成元年の初診時より、歯周の治療を主に行ってきた患者さんである。  EPPにおいても、実際にFop時にも骨のレベルにはかなりの差があり、EPPは1〜7mmと1本の歯牙においても骨のレベルの差が激しく、上顎はフルマウスにて固定し、下顎もG7E5CBA1 1ABCのブリッジにしている。  Fopも全顎行ったが、いつも1年ごとの定期検診の前に、GAを作って自発痛を訴えて来院される。  プラークコントロールもそんなに悪くなく、プラークスコアも10〜17%をキープしている。下顎ブリッジは急性炎症時にも動揺もなく、咬合によるものとは考えにくいと思われる。  32 間のGA時に10pps.60mj.曲80°チップにて照射。術後少し経過しているが、2週間後のSP時にはほぼ同じ状態となっている。こういった骨の状態が良くなく、細菌数も多いと考えられる症例には、アーウィンは非常に有効だと思う。  なお、歯周においては、急性症状がある場合を除いてペリオクリンの併用をレーザー1〜2回目までは行い、その後はレーザーのみとしている。  また、少しでも細菌数を減らし、口腔内を清潔に保つ必要があるため、照射後、JGにて必ず周囲への消毒も行う。さらに含嗽剤の使用も勧めている。TBIの必要性はいうまでもないところである。

症例3-1 術前。

症例3-2 2カ月後。


症 例 C

K.A. ♂ 50歳
23部にCR充填を行った症例。私は歯頸部の充填はSRP後に行うようにしているが、それでも歯肉縁下にカリエスが進行している場合がよくある。  以前は、どんなに気をつけてもタービンによる出血が多く、電気メスによる歯肉形成を行ったり、止血を待ったりして、時間と局麻が必要な場合が多くあった。  そして、感染した歯面をきれいにしようと、ラウンドバーなどを使用したが、なかなかきれいにはならなかった。  現在、私は5級窩洞のみならず3級のCR充填にも無麻酔でレーザーを使用している。エナメル質はタービンにて少し切削するが、ごくわずかである。  アーウィンの良さは、まず歯頸部の出血をほとんどしないこと。また、出血してもすぐに止血し、だらだらとした出血とならないことである。  さらに、感染した象牙質の変色がきれいになること。切削量も必要最小限で済む。  この症例では、10pps.123mj.曲80°チップにて約4分ほど、接触下で行った。痛みに関しては、この場合は全くなかった。人によっては少し痛みを感じる時もあるようだが、「麻酔をしてほしいか」という問いには、必ず「いらない」という返事が返ってくる。そして、次に同じ治療を行う時もレーザーを希望される。  レーザーは、3級においてエナメル象牙質の切削および消毒には非常に適しているが、チップの方向の問題で照射不可能な部位も出てくる。やはり接触下でないと確実な切削は無理なので、今後はチップ形態のバリエーションがほしいところである。

症例4-1 術前

症例4-2 照射直後

症例4-3 術後9日後


おわりに

 私はアーウィンを万能のスーパーマンとは考えていない。  しかし、今まで私を悩ませてきた細菌感染に対して、著しい効果があることは実感できた。  熱蒸散によらないレーザー特性については、その良さをうまく利用することで、アーウィンは臨床家の強い味方になると考えている。  GTR、エムドゲイン、歯根端等のOpeへの利用も、今後経過を追っていきたい。  また、局麻を減らし、タービンによる切削の弱点をフォローアップすることで、患者さんが実際に喜んでいるのを見て、今後も、より苦痛のない、より完全な治療を追求したいと思っている。  今後の希望としては、
1.大学においてアーウィンと細菌の研究
2.より使用しやすいチップおよび折れにくいファイバーへの改善
3.理論に基づいた利用方法のマニュアル化
があげられる。  最後に、多くの先生方とよりオープンに情報の交換をし、より良い考え方、方向性を是非アドバイスいただきたいと思っている。

アーウインの治療効果が大きいもの
図2 (アーウィンの治療効果が大きいもの)


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