| デンタルマガジン96号対談(1999年6月20日発行) | ||||||
|
| 近年、我が国では急速に高齢社会を迎えて、歯科医療の多様化が進み、歯科医師の責任も大きくなってきた。在宅寝たきり老人が増加する一方、各地の歯科医師会を始めとして、歯科訪問診療への取り組みも積極的に行われるようになり、今後ますます新しい歯科医療の概念への意識改革が重要になってくるであろう。 また、日本の歯科医療を大きく変革すると思われる2000年4月の介護保険法の施行にあたり、高齢者の摂食・嚥下・表情・構音・分泌・感覚を十分機能させ、心身の健康維持を支援するためにも、歯科・口腔ケアの役割は極めて大きい。今回の対談では、明倫短期大学「歯科口腔介護学」講座で教鞭を執られるとともに、医療法人仁友会日之出歯科診療所において、歯科入院診療と歯科訪問診療を実践しておられる新井俊二先生をお迎えし、「介護保険と歯科・口腔ケアの関わり」をテーマに、介護保険制度の問題点と将来の展望について、有益なご意見をお伺いした。 |
増原 今日はお忙しいところをご出席いただきまして、ありがとうございます。今、日本では患者が減って困っている歯科医院が多い反面、一方では、患者が増えている歯科医院もあるという二極分化が進んでいます。 山田先生が東京医科歯科大学から虎の門病院の歯科部長になられてから、患者が非常に増えているということが評判になっています。なぜ患者が増えたのか、今日はその秘密を聞かせていただきたいと思います。 山田 私が虎の門病院に歯科部長で就職しましたのは、1997年の4月ですから、ちょうど2年になります。 虎の門病院は、国家公務員・共済組合病院で、東大医学部の系列病院の一つなのですが、病院全体の外来患者数は毎日約4,000人を超えます。病床の数も約900床ありますが、歯科はいたって患者さんが少なかったのです。本院は虎の門にあり、分院が川崎にあります。過去5年間、歯科はその両方合わせまして、年間の延べ患者数が15,000〜16,000人しかありませんでした。初診も、年間で2,700〜2,800人です。私が行った1年目は、初診は3,000を超え、2年目は3,700〜3,800になり、延べ患者総数では28,000人を超えました。 なぜ患者さんが増えたかといいますと、それまでは治療のスピードが遅かったのです。例えば一度来院して、次の予約は1カ月後、早くても2〜3週間後です。対応が非常にゆっくりしているのです。それと、使っている材料やシステムが古く、20〜30年前のシステムと思われ、びっくりしまして、病院長先生にお願いして、器材を揃えていただき、技工士さんにも意識を改革していただいて、技工物もできるものは早くつくって入れてしまうようにしました。 治療については、患者さんの主訴をよく聞いて、その主訴をまずきちんと治す。それから歯石を取ったり、予防的なことまで含めて治療していくということを主にやりました。 それと、やはり大きな病院ですから、職員がどうしても官僚的でした。例えば患者さんを診療室に呼び入れる時、「何々さーん」と言うだけです。ですから、必ずドアから待合室まで出て、「何々様、おはようございます。どうぞお入りください」。5分ほどお待たせしても、「お待たせしました」というふうに言いなさいというようなことをまずやってもらったわけです。 そして、患者さんが診療室に入ると、「椅子にお座りください。エプロンをおかけしますよ、おうがいください」。それから、「今日はこういう治療をいたします」ということを話してから治療を始める。治療が終わった時点で、術者のほうから、患者さんに、「今日はお疲れさまでしたね」と言って、「次のお約束をいたしましょう。来週の何時ごろ、ご都合はよろしいですか」、と聞かれて不機嫌になる患者さんはいません。 そんなことが数カ月続きますと、当然、治療は終わります。終わりましても、例えば歯周病でまだ経過を見る必要があるという患者さんには、「3カ月、6カ月後にもう一度お電話をください」。約束表に、「何月ごろ」というふうに書いてお渡しするわけです。そうすると、患者さんからお電話をいただけます。 これが重なっていきますと、ご本人だけではなく、家族も診て下さいというふうにつながっていきます。 増原 そうですね。基本に立ち返って、患者さんの立場に立って親切に診療しておれば、自然と患者さんは増えていくということですね。 山田 医療職は、基本はサービス業であるということを根本的に認識するということです。そして、先生方が一生懸命毎日勉強されて、より新しい歯科治療技術と、新しい材料で診療にお励みくだされば、患者さんは自然に増えてくると思います。 増原 まったくおっしゃる通りで、今までの日本の歯科医療はドクターサイドの考え方で患者さんを診ていたのですが、これからは対等な立場で、むしろサービスするという気持ちがなければいけないですね。そのモデルを先生に示していただきたいわけです。 山田 例えば虎の門病院では、患者さんに対する院内のアナウンスもすべて「何々様」と「様付け」です。だから、病院長先生はじめ、病院のスタッフ全員、事務の方にまで患者さんはお客さまである、そして常に大切にしなければいけない。病院にせっかく来ていただいたのに不愉快になって、もう二度と来たくないというような感覚をもたれるようではだめですね。 増原 確かにそういう意識で対応しなければいけないですね。 山田 欧米の歯科大学の付属病院を見てみますと、診療の主体は先生方ではなく学生で、先生方の診療は日も限られていますし、学外で自分で診療所をつくられて、そこで診療されています。特殊な診療、例えばインプラントなどの特殊な補綴は病院でやられていますが、ごく一般的な診療の主体は学生診療です。 そして、学生診療のインストラクターは大学の先生ではなく、その歯科大学を出たOBたちが、週に何日か来て、給料をもらって教えています。つまり、開業医さんが後輩の手をとってきちんと教えているわけです。そうすると、いわゆる開業医さんの応対の仕方とか、受付にしても、次の予約をとるにしても、それが直接伝わってくるわけです。 ところが、日本の歯科大学では、大学の先生が教えていますから、少し官僚的になる傾向があります。講義などでも、医療がサービス業であるということを教えてくれるような学科はありません。 増原 大学の教育から変えなければいけないわけですね。それから、日本の歯科医療は、保険で制約されていますから、自由診療についての意識も非常に低かったわけです。ところが、虎の門病院では自由診療も増えているということですね。 |
山田 当然のことながら、保険医療機関ですから、診断から始まって、初期治療までは、すべて保険診療です。ただ、今までの虎の門病院歯科では、患者さんに何も相談しないで保険で診療していくというのが方針でしたが、今では、治療が始まるときに、「こういう色々な治療ができますが、いかがですか」と。印刷した料金表をお見せして、「このくらいかかります」というふうに事前にご相談申し上げます。増原 そうすれば、患者さんも納得できるわけですね。 山田 現在の日本の経済状態は悪い悪いと言いながらも、自分のためであれば、「少しおカネは出してもいい」という感覚はあるわけです。 それから、テレビやビデオが普及し、様々な情報が得られる時代になった今、口の中も金属が見える治療ではなく、天然の歯冠の色をしたものを入れてほしいという要望は増えています。 増原 そうですね。さらに自由診療を増やす努力はされていますか。 山田 歯の漂白法やインプラント、スポーツ用のマウスピースなど、「こういう治療ができます」、という印刷物をつくりまして、受付の横に掲示しています。 予約診療といっても、患者さんは数分は待たれるわけです。そういうときに、貼ってあるものをご覧になり、情報を得られる。そうすれば、「ああいう治療もしていただけるんですか」と、お尋ねになります。 増原 やはり情報を提供するということが非常に重要な時代ですね。今まで情報の提供が少なすぎたんですよ。だから、患者さんのほうも、むしろテレビなどから知識が入っていますから、ある面では非常に偏った歯科常識がついているわけですね。 ところで、先生はしばしば欧米に行っておられますが、あちらの最近の歯科事情はどうなんでしょうか。 山田 私ごとで恐縮ですけれども、日本には私立学校共済組合振興事業団という団体がありまして、そこの外国歯科診療の審査員をここ数年しています。日本人の先生方が留学をされ、外国で歯の治療をした時、日本に戻ってから、共済組合に診療録と請求書を出されますと、治療費が還付されます。 また、日本で教えておられる外国人の先生方が夏休みなどに里帰りをされて、向こうで治療をされます。やはりそれも還付されます。そんなことから、手をとるように世界中の歯科事情が見えてくるわけです。 増原 それは興味深いですね。最近の傾向はどうなんですか。 山田 日本のいわゆる保険点数の料金よりは、随分高い料金で診療されています。例えばアメリカですが、3〜4年前まで、単純なレジン充填が平均85ドルだったんですが、それがこの2〜3年、経済状態の好況に支えられて115ドルになっています。メタルボンドにしても、診療代が450ドル、技工代が250ドル、合わせて700ドル。それが今は1,000ドルを超えています。日本は先進国でありながら、保険制度で非常に低すぎるところで抑えられています。 増原 ある意味では、日本の国民は安い診療代で、新しい材料を使ったいい治療が受けられるわけで、非常に結構なことですね。 山田 しかし、歯科医の立場からみますと、米国などの先進国に比べて、多くの患者さんを診ないと、同じような収入は得られないシステムになっています。米国ですと、1日10人診るか診ないかですが、日本では20人、30人と診る必要があります。 それから診療所の設備自体も随分近代的で、コンピュータなどはほとんどの診療所に導入されています。 増原 ところで先生は、近々、虎の門病院がサテライト病院をつくり、院内LANを取り入れることによって、新しいスタイルのクリニックを展開するとのお話しですが、もし差し支えなければ、具体的に教えていただきたいのですが。 山田 2,000年の4月から、埼玉・大宮合同庁舎の中に「埼玉・大宮広域合同庁舎虎の門診療所」というのが開設されます。共済組合病院は日本中に29あるのですが、その中でも、医療水準と経済の面でうまくいっている病院は多くないわけです。ところが、虎の門病院はその両方ともうまくいっておりますので、総理府からやってくださいということで依頼が来ました。実は公務員にアンケートをとったところ、何の希望が多かったかといいますと、内科、人間ドック、三番目に歯科でした。公務員の人たちは歯科医院へ行くにも、なかなか時間がとれない。どうしてもお昼休みとか、あるいは勤務時間内に近くで短時間で終わる診療を受けたいんですね。ですから、歯科だけは待合室も受付も、内科、人間ドックとは別ものを大きくつくりまして、診療室にはユニット3台のほか、パントモもデンタルも入れます。 そしてこれを機に色々な意味で、事務の手続きも簡略化したいと考えました。そこで、現在、モリタさんが考えていらっしゃる院内LANを構築したいと思っています。 院内LANをうまく利用すれば、一度得た情報は、公務員が異動したとしても、本院でも見られる、埼玉・大宮広域合同庁舎でも見られる、川崎の分院でも見られるということになります。だから、どこでレントゲンをとろうと、あるいは検査をしようと、そのデータが一目瞭然で瞬間にその三つの診療所で共用できるわけです。もう一歩進めますと、カルテも電子化して、電子カルテの形態にしておけば、過去にさかのぼって、診療内容までこの三つの診療所内で比較・検討することができます。 実は先日、モリタさんで、院内LANの一部を見せていただいたんですが、患者さんの前に液晶ディスプレイが付いていまして、ユニットに座ったまま、オルソ・パントモのレントゲン、診療内容まで分かります。 増原 チェアの前面に置いてあるのならば、患者さんにも一目瞭然なわけですね。 山田 患者さんに説明するうえで非常に有効な手段だなということを確認いたしました。 増原 そうですね。例えばカリエスなどでも、患者さんの目の前で、「ここにありますよ」ということを見せて、それから治療するというような形にしないと、黙って、どんどん歯の治療されたのでは、患者のほうは非常に疑心暗鬼になってきます。院内LANはこれからの日本の歯科医院の近代化に不可欠なものになるでしょうね。 山田 それと、過去にさかのぼった資料が瞬時に見られるというのは、院内LANしかないわけです。例えば、あの歯医者さんへ行けば、私の子供のときからの情報が全部保管されていて、患者さんにとっては、自分の博物館へ行ってるようなことになる。非常に楽しい診療になりますね。 増原 患者さんが逃げないわけですね。21世紀に向けて生き残っていくには、やはり家族の全員がそこへ行くようになる歯科医院にしなければいけないですね。 山田 院内LANは21世紀を見据えたものだと思いますね。 増原 それからもう一つ、衛生士さんをもっと活用するという問題ですが、日本では、まだまだ衛生士さんを本当の意味で活用しきれていないのではないでしょうか。 山田 そう思います。衛生士学校でも臨床実習はしますが、通りいっぺんの歯科治療は覚えられても、人の応対がうまくできません。開業医では患者さんとの信頼関係がまず一番です。患者さんへの応対の仕方など、いわゆるマネジメントの勉強をしてもらう必要があると思います。 増原 そうですね。患者さんが減ったのは、サービスが足りなかったからだ、という反省も必要ではないかと思います。 山田 私は患者さんが減るということが、実感できないのです。なぜかといいますと、1人の新患がいらっしゃったとします。義歯もクラウンもレジン充填も古い、アマルガムはまっ黒け、そして、根管充填もやり直す必要がある。もう少し開業医の先生方が綿密に審査をされ、患者さんとよくお話し合いになれば、治療すべきことはいくらでもあります。それを、先生のほうから患者さんに近づいて話をしないために、逃がしてしまっている。これは非常に残念なことだと思いますね。 増原 とにかく歯科医側からもっと親切にしてあげなければいけないということですね。 山田 そうです。そのためには待合室などもきちんと整えて、患者さんが待っている間にも、歯科医の側からの新しい術式やシステムの情報が自ずと伝わっていくように努力をしなければいけないということです。 増原 欧米の歯科診療所は、非常に清潔で快適にするということを常に心掛けていますからね。 山田 スペースの値段が違いますから、欧米の真似を即日本がすることはできませんが、先進国の歯科診療室は大概独立した部屋です。1ユニットを置き、その部屋には患者さんと相談する立派な机まで置いてあります。1部屋に1人の患者さんが入って、先生、衛生士さんと3〜4人でチームを組んで、その患者さんを治してあげる。おカネはかかりますけれども、ベースの時点で、きちんとした資本投下は必要になりますね。 増原 そういうことについても意識改革をしないと、患者が集まってこないということですね。 ところで、子供の頃からの予防や早期治療、初期診療に対するいわゆる口腔衛生、オーラル・ケアの問題意識が、もう少し一般の開業医の経営にも浸透しなければいけないのではないかと思うのですが。 山田 日本にも立派な制度がありまして、担当の歯科医が決まっていて、その歯科医の先生がそれをしなければいけない、ということはタテマエ上はなっています。 増原 学校歯科医のお話ですね。 山田 ええ。ただ、学校歯科医も年に1回検診するだけで終わってしまっているわけです。お母さん方は、少子化の影響があって、子供を大事にしようという意識があります。実はドクターのほうがそれに乗りきれていないのです。現在の日本の歯科というのは、歯科医の側でそこまで降りていかない。どうしても成人の歯科診療が中心になってしまう。 子供の頃からきちんとしなければ、大人になっても歯を磨く習慣も出てきません。欧米などですと、口元の汚い人は、まずエグゼクティブになれません。当然のことながら、子供の頃から口元はきれいに、口臭のないようにします。また、子供などが矯正の装置を入れている頻度は非常に高いですね。ただ、現在では、アメリカの歯科矯正を受けている患者さんの半分以上は40代以上であるという統計も出ておりますので、大人が矯正へ行く頻度が非常に高くなっています。日本はまだまだですが、最近は、虎の門病院の歯科にいらっしゃる患者さんたちで、40代、50代の方が、「私の歯並び、治せませんか」とお尋ねになることが非常に多くなりました。そういう意味でも歯科が働かなければいけない分野はたくさん残っています。 増原 仕事としてはまだまだたくさんありますね。歯科医のほうが患者さんを増やす努力をしていないんです。それがいちばん大きな原因です。 先日、クリアフィル発売20周年記念の講演会があって、東京と大阪の大会に出ましたが、参加者は若い人が多く、アンケートの質問が非常にハイレベルのものが多いんですよ。若い先生方は非常にやる気があるんですね。今までは、ぬるま湯に浸かった形で競争意識がなくてもやれたのですが。患者が来ないから、というだけで終わっているわけですが、これからはもっと前向きにアクティブにやらないと、患者さんもこなくなります。いい歯科医のところは患者が増えているんですからね。 山田 最近の若い先生は、まず大学に残られる。そして自分のやりたいことを勉強しようという意識をもたれます。歯科医が増えて、開業しにくいというのも原因の一つではあるでしょうが、若い先生が大学の通りいっぺんの講義だけでは、21世紀に対処できないということを肌身で感じているみたいですね。 増原 講演会のアンケートを見ても目からウロコが落ちたという人がかなり多く、エステニアとかパナビアフルオロセメントの話を聞いて、初めて気がついたという人が多いですね。ということは、大学での教育が足りないということだろうと思うんですが。 山田 例えばクラレさんのライナーボンドIIΣを私が国際学会で発表したのが、今から5〜6年前のシンガポールであったIADRです。そのとき、ほとんど反響がなかったんです。 ところが、この3月にバンクーバーのIADRに出て大変驚いたのは、いまレジン充填の先端は、クラレさんが始めたセルフエッチングプライマー、あるいは米国流ではツー・ステップ・シンプリファイド・レジン・ボンディング・システムというものです。そして、接着性レジンシステムがセルフエッチングプライマーとか、あるいはワンボトルがごく当然のように世界の大学や開業医さんの間から学会発表が行われるようになりました。たった5〜6年で世界中に広まってしまったのです。これは非常に進歩です。 増原 接着材にしても、レジンにしても、日本の歯医者さんが臨床で使っている材料が、世界の最先端の材料であるということなんですね。ようやく日本の材料に対する認識が世界レベルで深まったということですね。そのお膝元の日本の歯科医の人たちが、これをうまく利用して、優れた治療を行えば、それこそ国民の福祉向上、健康増進にはこのうえもないことなのですね。 それから、最近、先生のところでもインプラントを始めたとお聞きしましたが、インプラントは、もう本腰を入れて取り組まなければならないな時期に来ていると思うのです。しかし、未だに大学でインプラントをきちっと教えているところは、日本ではほとんどないんですよ。 山田 インプラント先進国のスウェーデンの症例を見てみますと、国民の総数が日本よりはるかに少ない国にもかかわらず、1年間に新しいインプラントを装着する人が5,000症例を超えるんです。やはり自分の歯に近いもので、年を取ってもモノを噛んで、おいしく食べたいというのが人間の大きな願いでしょう。今後は、インプラントはすべての歯科医が、当然、歯科大学で教わって、臨床がある程度できるというところまでいかないと駄目だと思います。 増原 私自身、残念ながら、いま上顎はデンチャーになったんですが、食事しても味がないし、うまくしゃべれない。人々が少なくともブリッジで終わるようにしたいというのが私の実感ですね。歯科医療の行くべき目標はそこにあると思うのです。 山田 私どもの病院では、受付の横に、「インプラントのご希望の方は、お申し出ください」と一文出しているだけです。それでも患者さんの希望は数多くあります。インプラントは保険適用ではありませんから、「このぐらいかかりますよ」と申し上げますと、「やってください」という方が10人に1人ぐらいはいらっしゃいます。ですから、歯科医のほうでも、そういう患者さんを受け入れる姿勢ができていれば、インプラントはもっと普及すると思います。 昨年の秋から導入したモリタさんのエルビウムYAGレーザー「アーウィン」も、「レーザー治療ができます。ご希望の方はお申し出ください」というポスターを貼ってあるだけなんですが、それでも、毎日のように患者さんから、「レーザーの治療してください」と要望があります。「痛くないなら」とか「子供に使ってほしい」とおっしゃるわけです。 実際使ってみますと、深い窩洞でも痛くないし、音や振動がない。非常に喜ばれます。安い装置ではありませんが、患者さんが待合室で待っていらっしゃる間に、「この間、私、レーザーでやってもらったんですよ」なんて隣の患者さんとお話をされている。そうすると、またその患者さんも、「私もレーザーで治療できませんか」ということで、また患者さんが増えてしまう。 増原 歯科医自身の方で、もっと新しいものを導入して、勉強する努力が必要ですね。それと同時に、患者さんに色々な説明をもっと歯科医側からしていかなければいけないですね。 山田 欧米などでは、待合室でビデオテープを流しています。治療の始まりから終わりまで、患者さんがニコニコ笑っている。そういうものを見ることで、自ずと情報が入っていくわけです。それは非常に有効な手段です。患者さんに対する啓蒙活動にもなりますし、その啓蒙活動が最終的には患者増につながりますから、そういうことは能動的におやりになったほうがいいでしょうね。 増原 ありがとうございました。今日の先生のお話を聞いて、皆さん、きっとやってみようかなという気になられると思います。これからは、歯科医側から積極的に患者さんに色々なサービスをする、ということを心がけてほしいですね。 今日は、大変面白い有益なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。 |