日本大学歯学部 保存学教室修復学講座
宮崎 真至
教授 小野瀬 英雄



図1 高機能にも関わらず小型、
軽量化であり、診療室でも活用できる。
 特定波長領域の光線を受光することによって、その重合反応を進行させる製品が歯科臨床に導入され、その簡便な操作性などから臨床使用頻度および製品の範囲も急速に拡大してい
る。

 したがって、これら光重合製品の重合、硬化のために必要な可視光線照射器(以後、照射器)の使用頻度も、製品の多様化に伴って増加する傾向にある。

 しかし、臨床医の照射器の使用状況を調査した報告1)からは、歯科医師による照射器の性能チェックを含めたメンテナンスは不十分であることが判明し、光量不足に起因する材料の物性低下などが懸念されている。

 そこで、光強度の低下など照射器が有しているいくつかの問題点を改善し、さらに臨床医が望む新しい機能を有した照射器としてキャンデラックスが開発された。



(表1)キャンデラックスの特徴
1.
照射器が小型で軽量
2. 光線照射時の光強度が安定している
3. ボンディング材あるいはレジンに対応する最適な光強度を選択できる
4. 光強度チェック機構を内臓
5. 簡単なパネル操作で照射モードを選択可能
 表1に新型照射器キャンデラックスの主な性能を示した。すなわち、直径が2.5cmではあるが、強力なランプを採用しているために性能は向上している一方で小型、軽量化したこと(図1)、性能向上の一端として光強度については照射時にフィードバック機構が作動し、常に微調整され安定性が極めて高いこと、さらに照射様式は光強度の高いボンディングモードおよび最適な光強度で照射するノーマルモード、さらにコンポジットレジンの物性を損なうことなく重合収縮を抑制する効果のある2ステップモードを採用していること、などをその特徴としている。

 これらのキャンデラックスに備えられた新機能は、臨床医に対して行われたアンケート結果を詳細に検討し、その中でも要望の高かった項目である照射器の小型、軽量化、光強度安定性あるいは耐久性の向上などを考慮して、試作を重ねて完成した新世代の照射器である。

 その機能を理解していただくにあたって、まず、光硬化型製品の代表的なものとして光重合型レジンの重合特性について解説する。




図2 照射器光線の光強度がレジンの
表面硬さにおよぼす影響。

図3 照射器光線がレジンの
硬化深度におよぼす影響。

図4 照射器光線の光強度がレジンの
ブラシ磨耗率におよぼす影響。

図5 照射器光線の光強度がレジンの
象牙質接着強さにおよぼす影響。

図6 照射器光線の光強度がレジン
の重合収縮におよぼす影響。
 光重合型レジンでは、光増感剤としてカンファーキノンが用いられ、その反応性を高めるために還元剤が添加されている。

 このカンファーキノンを励起させるためには、450〜500nm付近にピークを有する青色の色調領域の可視光線が必要である。

 そこで照射器光線の分光波長分布は、フィルターをその光路に設置することによってこの波長域に設定され、光重合型レジンの重合、硬化に有効利用されている。

 また、光強度(光の強さ)も波長と同様にレジンの重合に重要な因子となる。図2〜5は、光強度がレジンの各種物性におよぼす影響のうち、それぞれ表面硬さ(ヌープ硬さ)、硬化深さ、ブラシ摩耗率および象牙質接着性の成績を示すグラフである。

 図に示したいずれのパラメータをみても明らかなように、いずれの測定値も光強度の上昇に伴って向上し、500〜600mW/cm2付近の光強度で飽和する傾向を示している。

 すなわち、光重合型レジンの物性は光強度依存性であり、それぞれの製造者指示の照射時間で良好な物性を得るためには、ある一定以上の光強度が必要であるが、逆に強すぎる光強度であっても、光重合型レジンの物性は飽和に達しており、向上しないことが示されている。

 逆に、強すぎる光線を用いた場合、後述するように急激な重合反応によって惹起される不快事項、あるいは熱の発生(照射チップ先端で90℃に達することもある)などが問題となる。

 照射光線の光強度を、光重合型レジンの物性のうちで重合収縮という観点から検討を加えると、強すぎる光強度を照射することは、図6に示すように修復物に急激な重合収縮を生じさせ、様々な臨床不快事項を惹起させる可能性を増大させる。

 すなわち、急激に進行する重合反応によって、大きな重合収縮応力が生じ、レジン―歯質間の接着強さが不十分な場合には、接着システムが破壊され、歯質との間にギャップが形成される(図7)。

 生じたギャップは、臨床では辺縁漏洩の原因となり、術後知覚過敏、辺縁着色あるいは二次齲蝕を惹き起こすことが指摘されている。これを避けるためには、重合硬化、重合収縮両面から考えた適切な光強度で照射を行う必要がある。

 キャンデラックスでは、光重合型製品の各種物性ならびに、臨床における照射チップと修復物表面との距離を考慮して、ノーマルモードとしてその光強度を600mW/cm2に設定したレジンペースト重合専用スイッチを採用している。
 一方、光重合型レジン修復において、照射を必要とするステップとしてボンディング操作も挙げられる。

 ボンディング材は、窩洞内面と直接する接着材層であるが、象牙細管を通して歯髄液が浸透する、あるいは口腔環境の湿潤状態の影響を受ける前に、できるだけ早く、確実にこれを硬化させる必要がある。

 そこでキャンデラックスでは、照射チップ先端から窩洞底面までの距離なども考慮して、平均800mW/cm2という強い光強度で照射するボンディングモードを設けている。

図7 充填物と窩洞低部との間にギャップの形成が認められる。
急激な重合反応によって生じた収縮応力が、
レジンと歯質との接着を破壊した結果である。



図8 Feilzerによって提唱された
C-factorの概念図。この数値が
大きくなるのに伴って、
レジンの重合収縮応力の影響が
大きくなる。
 前述したように、重合収縮は修復物の適合性に影響をおよぼす重要な因子となるが、これと窩洞形態には密接な関係があり、C-factorという概念2)で説明されている(図8)


 すなわち、C-factorとは窩洞全体の接着面積と充填物自由表面の面積との比で表され、この値が大きいほど重合収縮応力が接着界面に強く作用して、ギャップを形成しやすくなる。

 そこで、このC-factorが大きい内側性窩洞で、重合収縮力を緩和し、ギャップ形成を阻止する照射方法としてステップ照射が提案された3)。この照射方式は、照射開始から10秒間は、レジンの重合反応を開始させるための最小のパワーで、次いで適切な光強度を用いて照射する方法である。

 その詳細なメカニズムについては現在検討中であるが、2ステップモードを用いることによって、レジンの物性を低下させることなく(図3)重合収縮量を減少させることが可能となることが判明している(図6)。



(1)光強度の安定性


図9 照射光線の光強度安定性を示す。
いずれの照射器も、光強度が照射時間
とともに漸減するが、 キャンデラックス
ではその傾向が極めて少ない。

 光強度の設定は、それぞれの製造者が光重合製品の重合率をどの程度にするかという理論的背景、あるいはランプの能力などを含めた照射器の構造的な規制からなされているものと考えられる。臨床上とくに問題となるのは、照射器が十分に整備されていたとしても、その使用法によって光強度の低下が生じることである。

 すなわち、多数歯にわたって光重合型レジン修復を行う際は、照射を連続して繰り返して行っているのが臨床では普通である。しかし、この照射器の連続使用によって、その光強度が減衰することが知られている。

 そこで、キャンデラックスでは、連続照射によって生じるであろう光強度の低下を、本体に組み込まれたマイクロプロセッサのプログラムによってランプ電圧を調節し、常に一定の光強度が照射される機構を備えている(図9)。

(2)光強度のチェック機能と自動補正

図10 ボンディングモードでは、
光強度を照射器に内蔵された
パワーメーターでチェックを
行うことができる。
 照射器の照射光線が、光重合製品の重合、硬化に十分な光強度を有しているかを知ることは重要な問題である。

 しかし、照射器光線を肉眼で見ただけでは、十分な光強度なのかどうかの判別はつきにくいために、これを簡便にチェック可能な光強度検査器が市販されている。

 最近発売された照射器の多くは、照射器本体にその機能を付属しているが、キャンデラックスもまた、この検査器を内蔵させている(図10)。

 すなわち、ボンディングモードでは現在の照射器が有している光強度をチェックする機能を有しており、ランプの劣化などによって生じる光強度の低下を確認できる。

 また、2ステップモードでは、レジンの重合特性を最も効率的に引き出すことができる光強度である600mW/cm2に、その照射器の光強度を設定する機能を備えている。この光強度自動補正機構は、2ステップモードで光強度をチェックする際に機能するが、このチェックは一週間に1度の程度で十分と考えられる。

 また、この補正機構によっても光強度が回復しない場合には、自動的に照射時間を延長して光量不足を補うようにプログラムされている。

(3) 照射モードの選択
 キャンデラックスでは、照射モードとして、ノーマルモード、ボンディングモードと併せて、とくに光重合型レジンの重合、硬化時に生じる重合収縮の影響を軽減させる必要がある症例では2ステップモードを選択できるようになっている。

 2ステップモードでは、照射開始から10秒間は200mW/cm2の、引き続いて30秒間600mW/cm2の光強度で照射を行うものであり、レジンの重合収縮応力を緩和させたい症例に用いる。

 臨床では、クラスI級の内側性窩洞あるいは深い歯頸部窩洞に用いることが推奨される(図11)。

 光重合型レジン充填を行うにあたって、これをできるだけ速く重合、硬化させることは、チェアータイムの短縮にもつながることから、一般臨床医からの当然の要求であると思われる。しかし、レジン修復後の良好な予後を得るためにも、重合収縮応力緩和作用を有するこの2ステップモードを必要に応じて選択することが推奨される。

図11 臨床には、深い内側性窩洞あるいはくさび状欠損修復には、積極的にステップ照射を使用したい。

(4)照射時間
 光重合製品に対する照射時間については、それぞれの修復材に添付している指示書に従うのが原則と考えられる。一方、光重合型レジンの重合率は照射時間を延長させることによって向上することも判明している。

 すなわち、照射に伴って発生する光エネルギー量は、ぺーストに達する光強度と照射時間の積であるので、照射時間の延長に伴って修復材に対する光エネルギー量が増加し、結果として重合率も向上することとなる。

 したがって、照射器の光強度が低下している状況が予想される場合には、重合不足を生じさせないためにも、照射時間を延長することが有効な臨床対処法となる。しかし、この延長時間としては、修復材の大きさ、深さあるいはチェアータイムなどを勘案すると、製造者指示の2倍程度が限界であろう。

 キャンデラックスが光強度自動設定機能を有していることを考えると、その頻度は少ないと考えられるが、症例によっては照射時間の延長を必要とする場合に備えて連続照射モードも備えている。

(5)その他の照射に関する一般的留意事項
 照射方法としては、ライトガイドを可及的にレジン修復物表面に近接させて照射することが基本である。

 しかし、窩洞の位置や大きさなどから、口腔内の解剖学的制約もあって近接照射が不可能な症例にも遭遇する。このような場合には、照射時間を延長するなどの対処が必要となる。

 また、窩洞によってはライトガイドの口径を越える大型の修復物症例もあるが、このような場合ではレジン表面を区分した分割照射あるいは照射しながらライトガイドを動かす移動照射を行うことも臨床手技のひとつになる。

 以上のような、照射器に関する臨床手技以外にも、使用する照射器のメンテナンスも重要となる。照射器で用いられるハロゲンランプでは、照射光線を効率よく用いるために反射板が付属している。しかし、長時間の使用に伴ってこの面に曇りを生じ、その反射効率が低下する。

 また、一般に照射光線の色は濃いブルーの波長域の光線としているが、これが明るい薄緑になっている場合には、ランプと照射チップとの光路に設定されたフィルターの劣化を疑い、これをチェックする必要がある(図12)。

 照射チップは、ハロゲンランプで発生した光線を、目的の光重合製品の表面まで伝導させる役割を担っている。しかし、取扱い方によってはこれが断裂、あるいは亀裂を生じることがある。また、照射チップは、照射対象に可及的に近接させて使用されるために、チップ先端にボンディング材あるいはレジンなどが付着、硬化していることが多い(図13)。

 照射器チップ先端の汚れは、光強度を低下させる因子となるので、できれば専用器具を用いて清掃することが推奨される。

図12 照射器の基本構造を示す。
得に、ランプの消耗は光強度の低下の
一番の原因となるために、交換する頻度は
他の部品に比べて高いが、キャンデラックス
ではその操作も極めて容易である。

図13  照射チップ先端に付着した
ボンディング材あるいはレジンを示す。



 光重合型レジンをはじめとする光硬化型製品の多様化が進み、その重合、硬化に使用する照射器の重要性は今後さらに増加するものと考えられる。すなわち、照射器から照射される可視光線は、光重合型レジンの物性に大きく影響をおよぼす因子となり、その性能低下は臨床上大きな問題となる。

 キャンデラックスは、これらの臨床背景のもとで開発された新世代照射器であり、臨床応用の拡大が期待される。

 また、本製品の機能を最大限に生かすためにも、照射器を正しく使用することはもちろん、使用する修復材料に関しても同様に適切な取扱いが必要であろう。


参考文献
1) 近藤 貢:可視光線照射器に関する研究−とくに臨床で使用されている照射器の性能について−;日歯保存誌40(3),815-823, 1997.
2) Feilzer AJ, de Gee AJ, Davidson CL: Setting stress in composite resin in relation to configuration of restoration; J Dent Res 66, 1636-1639, 1987.
3) Uno S, Asmussen E: Marginal adaptation of a restorative resin polymerized at reduced rate; Scand J Dent Res 99, 440-444, 1991.