■ 静岡市開業 清水 弘一


継続的口腔衛生指導が保険に導入され(このシステムには賛否両論あるようだが)乳幼児期からの予防に重点を置いた口腔管理が一般に認められるようになってきた。どうせ抜けかわる歯だから放っといてもいいとか、大きい穴のあいた虫歯だけ治してくれればいい、というような親は随分と減ってきている。子供を通して家庭全体への継続的な指導・処置が必要と認識されてきたのであろう。

Er:YAGレーザーを購入した理由は、小児の口腔内において“やさしい”治療ができれば、長期にわたるかもしれない管理が適切に行えるだろう、レーザーは強い味方になってくれるだろう、と考えたからだ。




健全な乳歯列の存続は、その後の永久歯列の形態、咀嚼・発音等の機能あるいは顎関節の形態に大いに関与している。ゆえに、齲蝕治療では、先ずは齲蝕を原因とする早期喪失を防がなくてはならない。私がアーウィンに期待したのは、実はこの点である。Er:YAGレーザーは窩洞形成時の振動・発熱が少ないことから痛みをおこしにくく、まして乳歯ではまず疼痛はないであろう、そして医原性の歯髄炎を起こすこともないだろう、と。

さらに、レーザーの滅菌効果を期待してある程度の歯髄炎に対しては歯髄を保存できるのではないか、しかも浸麻なしで。おまけに、タービンのような不快音の発生がないことから子供に怖がられずにスムーズに治療できるだろう。

ついでに、レジン修復に際し、レーザーエッチングされるので接着性が増しレジンの脱落が減るのでは、とおめでた尽くしに考えていたのだが、実際確かに効果はあった。

C1〜C2程度の齲蝕では、レーザーのチップの形態上照射しづらい部位もあるのだが、歯頸部齲蝕では出血させずに的確に齲蝕を除去できるし、裂溝齲蝕においてはいたずらに健全エナメル質を除去することなく感染象牙質を除去することができる。




乳歯の根管治療はその時期が早ければ早いほど予後は悪いとされており、今までの臨床で歯根の早期吸収やabcessをたびたび引き起こす乳臼歯に幾度となく出くわし、どう保存していくか悩まされてきた。

当院では、乳歯の抜髄は行っていない(乳臼歯で2根歯髄壊死していて、1根生活歯髄の場合などは抜髄するが)ので、歯内療法といっても、根尖病巣や根分岐部病巣の場合に限られる。

fistelがある場合やabcessの波動が触れるときは歯冠部を切削解放後、アーウィンで歯肉を切開し排膿させる。根管内もレーザー照射しできるだけ排膿させる。レーザーの滅菌・殺菌効果と、空気と水による嫌気性菌の死滅を期待して以上の処置を行っている。余程大きなabcessでない限り抗生剤は処方していないが治りは確かに早いようだ。切開排膿時に痛がるときは照射条件を下げたり、斜めにディフォーカス照射している。

当院ではレーザーを使用して2年半なので、abcessの再発、骨吸収のスピード等の統計的な有意差はまだ出ていない。




Er:YAGレーザーは水への吸収性が高いので非接触照射した場合、周囲組織の熱変性が表層の極くわずかな部分に限られ、照射後の創傷の腫脹などの炎症症状や壊死が認められないことから、早期に良好な創傷治癒が期待できるが、水分の蒸散面の組織の熱変性層が薄いので血管の豊富な部位では止血する効果は小さいとされている。

ゆえに、マイナー サージャリーに向いているということで、当院では、第一大臼歯・上顎前歯の萌出不全時の歯肉切除、舌・上唇小帯切除、矯正治療中にブラケットの周囲に発症した難治性の歯肉炎切除に無麻酔下でレーザーを使用している。

歯肉切除の場合は照射条件を30〜40mj/10ppsに設定しているので歯肉下の歯面を傷つける心配はないし、有鉤ピンセットで歯肉を引っぱりながら行えば時間はかからない。また、この条件だと、小帯切除の場合、上唇小帯の骨に付着している線維を、骨穿孔させずに切断できる。いずれの場合も2〜3日で創傷は治癒している。

また、口内炎、口角炎、ブラケットによる擦過傷には無注水で痂皮をつくるようにレーザー照射すると、痛みが和らぎ、治りも早い。