(症例はすべて2歳10ヶ月から6歳3ヶ月までの小児)

1)第一大臼歯のフィッシャーシーラントあるいはレジン1級窩洞

注水下50mj,10ppsで裂溝を洗浄するようにレーザー照射する。

それでも裂溝中の齲蝕が除去できないときは200mjで照射する。

FTB-P60コンタクトチップを用いれば、幼若永久歯は有機成分の割合が多く歯質が柔らかいので、ディフォーカスで照射方向を斜めにすることにより容易に齲蝕を除去できる(図1)

シーラントやレジン窩洞全般にいえることだが、窩洞辺縁にプラークやペリクルが付着していれば、シーラントやレジン脱落の原因になる。レーザーは齲蝕のみを除去することができるが、口腔内清掃性の悪い子供にはレーザーで辺縁をエッチングするかペーストで研磨している。

チップを裂溝に差し込みすぎるとチップの破折を招くので注意が必要。


図1 症例1)
裂溝照射直後。

2)C2程度の齲蝕

図2 症例2)-1
齲蝕検知液で染め出す

図3 症例2)-2
照射直後。下顎右側Eは裂溝を照射。

図4 症例2)-3
チップの先が届きにくい死角(染め出された部分)

図5 症例2)-4
隣接面齲蝕

図6 症例2)-5
タービン切除後、エキスカで齲蝕を除去。

図7 症例2)-6
照射後、レジン充填。

図8 症例2)-7
上顎左側BCの齲蝕

図9 症例2)-8
照射直後。

図10 症例2)-9
術後。

図11 症例2)-10
上顎左側ABC歯頸部齲蝕。

図12 症例2)-11
照射直後。
 
レーザーでは鋳造修復窩洞を形成することはできないが、レジンやアイオノマー充填のための窩洞は比較的短時間で形成できる。 チップはP60、80を使っている。照射はいずれの場合も注水下200mj/10pps、ディフォーカス、斜め照射である。この条件であれば、可及的に歯質が切削でき、照射による熱の影響はほとんどないと言われている。

視診で明らかな齲蝕がある場合は、先ずスプーンエキスカで軟化象牙質を除去し、硬い歯質がでてきてから齲蝕検知液で染めだし、そこを目がけてレーザー照射する(図2・3)。ただ、チップの先が届かず照射できない“死角”ができることがある(図4)。私はエキスカで除去している。

乳臼歯の隣接面ではデンタルフロスの引っかかりやX線診断で発見される齲蝕にたびたび出くわす。辺縁隆線は極力残したいのだが切削しなければならないときは隆線部のエナメル質をタービンでおとしている(タービンの使用は数秒程度ですむ)。齲蝕の除去は上記と同じである(図5〜7)

乳臼歯では髄角が張っているので、隣接面齲蝕ではレーザーを一箇所に集中して照射していると露髄してしまうことがある。レーザーによるので熱の影響などによる歯髄炎の恐れは低いと思われるが注意は必要である。

歯頸部齲蝕は視野が明瞭で、レーザーの操作が非常に簡易である。齲蝕が縁下に及んでいても確実に除去でき、出血も起こらない(図8〜12)



3)C3齲蝕
X線写真によりC3歯髄炎と診断しても無麻酔で治療を進めている。

エキスカで軟化象牙質を除去した後、齲蝕検知液で染めだし、200mj/10ppsで徹底的に感染象牙質を除去する。露髄した部位からの出血がすぐ止まれば、ADgel1分30秒処置後レジン修復する。

露髄部が大きかったり、止血がなかなかできない場合はレーザーの照射条件を注水下30mj/10ppsにし、露髄部を蒸散する。

止血が確認できたら無注水で露髄部を照射し、K-etchant、ADgel1分30秒処置後、アパタイトライナータイプIIで直接覆髄する。

三種混合薬剤を混入することもあるが、耐性菌などの問題もあるし、乳歯に抗生物質を使うことに抵抗があるので極力使用しないようにはしている。

レーザーの滅菌効果と乳歯の歯髄の回復力に頼る方法だが、止血できれば良好な結果が得られている(図13〜17)


図13 症例3)-1
下顎左側DE C3齲蝕。

図14 症例3)-2
照射後。

図15 症例3)-3
止血後、ADゲルを塗布。

図16 症例3)-4
アパタイトライナータイプIIで直接覆髄。

図17 症例3)-5
術後。
 

4)
感染根管でabcessがあるときは、根管開放処置後、sbcessをレーザーで(注水下30〜40mj/10pps)切開排膿する(図18・19)

穴を開けて排膿させるだけよりabcessにチップを挿入し内面全体を照射する方が治りが早いようである。

乳歯は根長が短いのでFTB-P60チップのみで充分根管治療が(注水下30〜40mj/10pps)できると思われる。

根管充填のときは、根管内の水分蒸散と滅菌効果を期待して充填直前に無注水で照射する(30mj/10pps)。

照射時間は根の吸収程度による。


図18 症例4)-1
上顎右側D部のabcess。

図19 症例4)-2
φ5mm程の切開。

5)口内炎・口角炎
痛みを伴うアフタ性口内炎・口角炎にはレーザーを照射している。無注水で30〜40mj/10pps、非接触で痂皮をつくるように照射する。

レーザーによるのかはわからないが、治癒は早くなり、痛みも軽減しているようだ(図20、21)


図20 症例5)-1
口角炎。

図21 症例5)-2
照射後。

6)歯肉炎
ブラケットが付くとプラークを除去しきれず歯肉炎にしてしまう子供がいる。

ブラケットが付いている限り歯肉炎は改善されず、かえって悪化する方が多い。

当院ではこの程度(図22・23<この症例は12歳 F>)で歯肉切除し、あらためてブラッシング指導している(注水下、30〜50mj/10pps)。


図22 症例6)-1
歯肉炎。

図23 症例6)-2
上顎右側32間の歯肉の切除。

7)

Ectopic Eruptionが認められたので、第一大臼歯を萌出誘導した例であるが(図24・25)、咬合面にボタンを付けるためレーザーで歯肉を開窓した。

無麻酔でも短時間で行える(注水下40〜60mj/10pps)。

この程度であれば直に止血する。


図24 症例7)-1
開窓。

図25 症例7)-2
直後にボタンを付け、装置をセット。

8)

レーザーには麻酔効果もあるということだったので、無注水30mj/10ppsで照射後抜歯してみた。

痛みはなかったようだ(図26・27)


図26 症例8)-1
下顎左側Aの歯頸部歯肉を一周照射。

図27 症例8)-2
直ちに抜歯。

9)

レーザーから子供の安全を守るためにプラスチック製のメガネやゴーグルを掛けさせることがある。

レーザーチップからの水が顔にかかるのをとても嫌がる場合にも重宝する(図28)


図28
小児用ゴーグル。




歯周病や歯内療法などでEr:YAGレーザーの有効性が発揮されている。

ここに紹介させていただいたアーウィンの使用法は当院での小児歯科医療に限らせてもらった。それでも、アーウィンの特性である滅菌・殺菌効果や切削時における痛みの軽減により、小児に対しての浸麻や薬剤の使用が減少したし、母親や子供たちにとって歯医者のイメージといえば麻酔の注射とタービンのキーンという機械音だったが、これを払拭していると思っている。

小児歯科治療では、子供に負担をかけずにどれだけの治療ができるかが課題とされているが、アーウィンはハード・ソフト両面で役立ってくれている。