| デンタルマガジン97号対談(1999年10月20日発行) | ||||||
|
| 近年、我が国では急速に高齢社会を迎えて、歯科医療の多様化が進み、歯科医師の責任も大きくなってきた。 在宅寝たきり老人が増加する一方、各地の歯科医師会を始めとして、歯科訪問診療への取り組みも積極的に行われるようになり、今後ますます新しい歯科医療の概念への意識改革が重要になってくるであろう。 また、日本の歯科医療を大きく変革すると思われる2000年4月の介護保険法の施行にあたり、高齢者の摂食・嚥下・表情・構音・分泌・感覚を十分機能させ、心身の健康維持を支援するためにも、歯科・口腔ケアの役割は極めて大きい。 今回の対談では、明倫短期大学「歯科口腔介護学」講座で教鞭を執られるとともに、医療法人仁友会日之出歯科診療所において、歯科入院診療と歯科訪問診療を実践しておられる新井俊二先生をお迎えし、「介護保険と歯科・口腔ケアの関わり」をテーマに、介護保険制度の問題点と将来の展望について、有益なご意見をお伺いした。 |
![]() ![]() 増原 今日は札幌からわざわざご出席いただきまして、有難うございます。 先生は今、日本で歯科の介護保険に関して最も造詣が深いということで、この対談に出ていただくことになったわけですが、今日は先生のご意見をたっぷり聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 新井 私は、歯科臨床医として札幌医大等の教育機関で臨床を約10年、その後、開業医として30数年やっていますが、その間、時代と共に医療内容が大きく移り変わりました。 私たちが、増原先生方に教わって大学を出た当初は、虫歯が多くて、いかに虫歯を治療するのか、ということが主体でしたが、最近では、予防が主体になってきました。 日本の法律の面では昭和30年、40年代は医療法と健康保険法での歯科治療が花盛りだったと思うのです。 その後、老人保健法が昭和57年に出まして、いわゆる保健ということを日本の社会が重要視することになったのです。 私は、老人保健法が出てきた時に、これは日本の医療の画期的な変革だと思いました。 老人保健法は「40歳以上」という年齢的な制限があるものの、いわゆる予防を保険で行いましょう、という法律だったのです。 ですから、これは医療制度にとって、ある意味では「革命的な」と言っていいほどの変革でした。 そして、平成元年に「ゴールドプラン」が出ましたが、これが正に老人保健の次の課題としての介護の問題に対するプロジェクトプランだったのです。 保険制度における医療とは、一言で言えば病気を治す行為です。保健とは、病気にしないように予防する行為です。 介護は何かというと、老化した人に対する支援なのです。そういうふうにみると、それぞれ対応の仕方が変わってくるわけです。 |
もう10年も前になりましたが、当時は「ゴールドプラン」の花盛りで、それまで医者は老人を健康な人の標準に戻そうと努力をして医療費を使っていた。
あたかも60歳、70歳の老人に100メートルを15秒で走りなさい、走れなきゃ病気です、というような従来の医療の基準でやっていて老人に医療費がすごくかかる。それが間違いだということに気づき始め、医療に代る介護を制度化しようというのが、平成元年の「ゴールドプラン」だったというふうに私は思っています。 この動きに対して、21世紀に対応するためには、歯科介護という学問をつくらなくてはいけないと考えました。 高齢者保健福祉審議会等の中で介護とはなんぞや、と相当議論がされていました。 「ゴールドプラン」以後、一応まとまってきたのが、高齢者には病的な障害と生理的な障害がある。 特に生理的な老化による障害、日常生活の支障は医療の対象ではなく、支援の対象であり、それを支援をすることが正に介護であるという考えです。 支援をするのには医学的な知識と技術、と同時に科学的手法が必要だということが盛んに各界で言われてきたのにもかかわらず、歯科のほうは依然として歯科医療と歯科保健、「8020運動」しかやっていないわけです。 介護関係の審議会の中にも当初は歯科の人が入っていませんでした。医師、看護婦、保健婦、ヘルパーさんの代表、それに森英恵まで一般人の代表として入っているのに、歯科医師、歯科衛生士が入っていないんです。 そこで、私は日本歯科医師会の理事会の先生方に会い、「新ゴールドプラン」の発表の中で、年金と医療と福祉の5対4対1の比率を医療を減らし、福祉を増やして、介護にまわすとある、歯科も介護に参入しないと大変なことになると訴えたわけです。 話は聞いてくれたんですが、結果的には効果的な対処ができなかった。 これではしょうがないというので、私としては地道に、臨床の中で歯科介護というものを取り上げて、実績をつくりながら、体系化、学問化して、それを世の中に示していくというより仕方がないなあと思って、やり始めたわけです。 それを聞きつけて、明倫短期大学から話があり、私の論文と、その他の業績を文部省に申請して、それで明倫短期大学の「歯科口腔介護学」という講座を文部省のお墨付きをもらって、今やっているというのが現状です。 増原 どうもありがとうございました。今おっしゃったように、歯科医療というものの領域がこれから非常に広がってくるわけですね。 今まではそれに対する準備がほとんどなされていないというのが実情だと思うんです。 来年の4月から介護保険が始まるわけですが、それに対応する歯科界の認識があまりにも薄いというか、遅れているという状況ですので、この対談では新しい歯科医療、これからの歯科医療はどう発展すべきか、ということで話を進めていただきたいと思います。 新井 私は歯科医療、歯科保健、歯科口腔介護を「歯科の三本柱」と言っているんです。 どうして「口腔」を入れたかというと、口腔ケアという名称ですでに行われ、効果を上げている実績を尊重したからです。 しかしそれが社会的評価がされていない。 ボランティア的な結果にしかならないということで、これでは長続きもしませんし、発展もしないと考え、歯科口腔介護として学問化し、実績が残るような形で社会的評価を得ないと介護保険法で点数化もされないと考えて、「歯科口腔介護」という名前で文部省にも申請しましたし、その名前で教育もしているわけです。 歯科医療と歯科保健がよく混同されることがあるんですが、歯科医療というのは歯科領域の病気を治す。 歯科保健というのは、この領域の健康を保つというヘルス、予防という基本的な考えです。 そして歯科口腔介護とは何か。 これは歯科領域に障害や老化が起きて、日常生活に支障を来した人に対する支援である、介助である、というふうに解釈します。 介護の場合には評価、アセスメント、選定、ケアプラン作成、実施、再評価という手順を踏みながら、その一つ一つに実績を残し、記録をしていく。 そして、その記録を基に自分のやったことを再評価して、さらに次回にはそれを高めていく。 これを称して「ケアマネジメント手法」というふうにアメリカでは言っていますが、そういうものを歯科の中に確立していく学問が必要だと思います。 増原 今おっしゃったように、介護ということに対する我々歯科医師の認識はまだ非常に浅いのですが、歯科医師の収入と結び付くには、介護ということが制度の中で認められなければいけないと思います。 そういう問題を先生からいろいろ聞かせていただきたいと思います。 新井 まずは介護の内容を学問化、体系化しなければいけないということです。 やったことが効果が上がって、実績として世の中に認められなければいけないということですね。 そのためには医療でやっているように手順、学問が必要です。 私は歯科領域というのは医療・保健・介護を行う場合の歯科医師、歯科衛生士等の担当責任領域だというふうに考えています。 それは、「歯科医師としての責任領域は歯科領域である。 歯科領域とは口腔、顎頸、顔面領域である」と長尾優学長に教わったことです。 今から40年前ですが、「そこの病気は君達が責任を持って診断し、処置し、治さなければいけない。 そういう歯科医になれ」と。 今、歯科口腔介護がちょうど同じようなことだと思うのです。 それで、その領域の基礎的な知識をベースにした学問化を図らなければいけないと考え、生理学で摂食、嚥下、表情、構音、分泌、感覚の機能が歯科領域の6大機能と称するものですから、それらの機能に対する基礎学・生理学的な知識を基にした学問化を図りました。 そこで私は歯科口腔介護を各機能別に大きく分類しているわけです。 それぞれに対する障害、老化、そして、それに基づく生活の支障に対して、どう支援していったらいいか。 治そうとすれば医療になります。 しかし、お年寄りの老化は死に至る変化ですから、治す対象ではない。 とは言っても、困っているんですから、それを支援していかなければならない。 歯科医学の知識と技術はそのために非常に役に立ちます。 そして、そういう人達の生活の質の向上を図り、自立を支援する。そういうことをするのが歯科口腔介護学だと思っています。 増原 今おっしゃったように、新井先生は明倫短期大学で歯科口腔介護学という講座を担当していらっしゃるわけですが、こういう講座は日本の歯科大学にはないわけですね。 新井 はい。 |
![]() 増原 そこで問題が出てくるのは、歯科衛生士、あるいは看護婦との関係ですね。 むしろ看護婦とか、歯科衛生士のほうが介護に関しては非常に実践的な能力と責任があります。 今までの実績もありますが、これからどう分担するのかが問題なんですね。 それに対する先生のお考えはいかがでしょうか。 新井 私は医療でも、歯科医療でも同じではないかと思います。 それはちょうど医師と看護婦、それから歯科医師と歯科衛生士の関係にあるかと思うのですが、医療の場合には看護婦は看護をします。 病人相手の病気に関連した日常生活のいろいろな世話、病気の処置の後の世話というのは看護という形でやられる。 これは歯科衛生士も同じく、ちょっと表現が違いますが、歯科診療の補助という形で大体歯科看護的なことを歯科衛生士が担当しています。 増原 歯科医師の指導の下にやる、ということになっているわけですが、いつか朝日新聞でも報道されましたが、先生の考えとして、歯科口腔介護の役割をもうちょっと明確にしておくべきではないかと。 つまり、これは収入とも関係が出てくるわけですね。 何をどれだけすれば保険の点数になる、というようなことになってくるわけでしょう。 新井 介護というのはソフトの部分が多いんです。 それが社会的に評価され、点数化されるためには、正規のプロトコールによる学問的手順に基づく実施とその記録を必要とします。 それがいわゆるケアマネジメント手法に基づく記録づくりということになると思います。 増原 介護保険が始まると、そこで歯科がどういうふうに関与していくかということは、皆さん、気になさっていることだと思うんです。 最終的に、今、歯科医師会のほうでは訪問歯科医療と訪問歯科衛生指導、この2つに関して歯科医師が関与するようになる、というふうなことを言っておりますが、その点の説明はどうなんでしょうか。 新井 それはその通りなのですが、大変基本的なところで見落としがあります。 それはどういうことかというと、介護保険法で保険給付されるもの、特に居宅を対象にした場合ですが、居宅を対象にした給付内容は12項目ということになっています。 具体的に言うと、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーション、あるいはデイケア、ショートステイ、などの12項目ですが、そのうちの1つに、居宅療養管理指導というのがあるんです。 その中に、これは医師も歯科医師も入るわけですが、歯科の場合には歯科訪問診療と訪問歯科衛生指導が入りますよ、と言っているわけです。 そこまではいいんです。 ところが、さらにもう一歩突っ込むと、それらは当然介護保険法における給付内容ですから、介護保険料の財政から出るわけで、医療保険からは出ないことになります。 医療保険と介護保険は別々に徴収されるわけですから、別々の財政で行われます。 ところが、今度のケアマネジャーの試験にもあったんですが、「歯科のこれらの2つの行為は、例外として医療保険から給付される」とテキストに書いてあるんです。 正にそこが問題なのです。 増原 そこのところが問題ですね。 新井 しかし、唯一救いがあるんです。 何かというと、今回、平成12年の4月に施行される介護保険は、ご承知のように介護保険法に基づくのですが、これには付則事項がありまして、5年間の実績を見て全面的な見直しをするということになっています。 ですから、要はその5年間が勝負だと私は思っています。 増原 そうですね。 その間に歯科は歯科なりにきちんとした、今、先生がおっしゃったように明確な指導指針を出さないといけないんですね。 新井 介護保険だけに目を向ければ、歯科医師の管理、指導の下に実施者は歯科衛生士が最適だというふうに思っています。 今、3年制、4年制の話が出ていますが、もう議論なんてすることないのです。 すぐ3年制、4年制にし、介護の教育を受けた人たちを組織化して、現場にどんどん派遣して、お年寄りのためになる歯科口腔介護の実績をつくることです。 そういうふうになれば、訪問歯科診療に対する要請も当然増えてきますよ。 歯科衛生士が現場に出れば、「先生、これは治してもらわなくちゃ困る」とか、「先生、気の毒な人が放置されていますよ」とかというのが必ず出てきます。 今は野放しです。 看護婦さんは口の中を見ませんから。 私もケアマネジャーの試験に受かりまして、実務研修に行ったのです。 看護婦、医者、保健婦がほとんどですが、その研修の中に、アセスメント票に口腔内の審査をする項目があるんです。 実習ですから、みんなが、1人が1人のお年寄りを自分で探してきて、アセスメントを取ってくる。 驚いたのは、「口腔内に問題あり」と書いたのは、私だけですよ。 ちゃんと見たら、お年寄りですから、もう100%問題があるに違いありません。 増原 そこで問題になるのは、結局、これから高齢者の口腔ケアをやっていくときは、高齢で動けなくなった人とか、外出が不自由な人の場合は在宅治療ができる。 それをやるにはかなりの人も手間もいるし、歯科医師も動員しなくてはいけないですね。 今までの歯科医院は患者が来るのを待っていただけですからね。 それに対応して、今度は逆に歯科医師が出ていって歯科治療をする、そういう時代になっていくのではないかということですね。 新井 先生のおっしゃる通りですね。 もうその時代になっていますし、既に遅いぐらい社会の変化が進んでいると思います。 これからは、来てもらう歯科医療と、出かけていく歯科医療が必要になりますね。 増原 それで施設としては、いわゆる介護保険、口腔ケアをやる専門の診療所。 これは逆に患者のほうがセンターへ来るわけですね。 もう一つは、歯科医師が出ていって訪問治療するというのと、2つに分かれてくるのではないでしょうか。 その場合に、センターを置くとしたら、大きな地域に各1ヵ所とか、2ヵ所ぐらい、誰かが経営するかということになるんですね。 大変な費用がかかるかとは思いますが。 新井 確かに費用はかかると思います。 けれども、日本の国の医療とか、保険全体のことを考えれば、予算をそちらにシフトしたほうが、全体の予算は減って、みんなが楽しい老後を送れると思うんです。 増原 それで、来年か再来年のうちに保険給付制度を抜本的に改めると言っていますね。 そのときにはもちろん在宅診療とかがちゃんと入ってこなくてはいけないですね。 新井 これが不思議なことに、歯科医療の抜本改正だけは介護保険制度の間に壁があるんです。 国はこの介護保険制度は社会構造改革である、と言っています。 それはどういうことかというと、厚生省の中で、今までの年金、医療、福祉の制度に壁があったのが、介護保険ができたおかげで壁に穴が空いたのです。 介護保険制度では、それらを連携させるようにしたのです。 それが医療の抜本改正です。 ですから、そこらあたりをちゃんと踏まえて、介護保険制度の中にも、医療保険制度の中にも歯科の知識と技術を生かす、そういう我々の手持ちの知識と技術で社会貢献する行為、そういうものを持ち込むこと。 それには歯科医療だけの単品ではダメなんです。 幾つかのものを持って、福祉のほうでは歯科口腔介護というものがあって、これは役に立ちますよ、それから保健のほうでは歯科保健という我々の知識と技術が役に立ちますよ、医療の中では歯科医療が役に立ちますよ、と。 医療制度、保健制度、福祉制度があるわけです。 ですから、そこで役立つものをちゃんと商品化、多様化し、そして、これはいい商品だね、となれば、じゃ、買いましょう、となるんですね。 増原 確かに多様化するということはこれから非常に必要なんですが、今の歯科医師の人はほとんど単品の立場にいるわけですからね。 それで、参考に伺いたいんですが、先生が札幌で経営なさっている日之出歯科というのは、早くから介護医療も含めた口腔ケアのモデル診療所だという評判ですが、その内容を説明していただけますか。 新井 医療法人日之出歯科診療所及び真駒内診療所では、歯科入院診療と歯科訪問診療を行っていますが、それと連携した訪問歯科衛生指導の中で在宅の歯科口腔介護を実施しています。 これを担当している歯科衛生士の多くは、介護支援専門員の資格を取得しました。 その介護保険制度の知識を活かし、歯科口腔介護を高齢者の自立支援と生活の向上に役立てています。 今後はさらに他職種との連携を深めながら、その内容と手法を充実発展させることを考えています。 また、明倫短期大学の歯科衛生士学科では、1年目の学生には歯科口腔介護学の講義を行い、2年目の学生には施設実習を実施しています。 この施設実習は、介護保険三施設(老人福祉施設、老人保健施設、療養型医療施設)を選び、歯科口腔介護の内容を体系化し、ケアマネジメントの手法により行っています。 実習の学生は1カ月半の間、同一施設で週4日間を9時から17時まで連続して担当した入所者の歯科口腔介護を行っていますが、その効果には目を見張るものがあります。 学生は、実習を重ねるにつれ、高齢者に対する理解と歯科口腔介護の重要性への認識を深め、さらに、歯科衛生士としての自覚と責任感を強めていきます。 施設の他職種の職員は、歯科口腔介護の実施に好意的、協力的で、現われた効果に高い評価を与えるようになっています。 増原 訪問診療の場合には、例えば短時間で印象を採ってデンチャーをつくるとか、修復充填をするとかということになりますが、先生方にはそういうことに対するニーズがいろいろあると思うんです。 例えば、そういう新しい歯科材料について、DE129号で「介護・訪問歯科医療と歯科材料・器材」という特集をしているんですが、これを見ても、歯科材料自体も変わっていかなければいけないのではないかという気がいたします。 新井 それは先生のおっしゃる通りで、こういう新しい分野を開拓しようと思う場合、それを能率的に、効果的に、そして、患者さんの負担を少なくするためにも、新知識と新技術と同率の関係で新しい器械・器具材料は絶対必要だと思っています。 増原 そうですね。 例えばお年寄りの食事の問題にしても、スプーン1つから変えなければいけないし、身障者の問題も含めて、これからいろいろ新しい器械材料が必要になってまいりますからね。 新井 そうですね。 これは先程の私たちの入院の施設で経験したことの1つなんですが、歯科の入院患者さんというのはいろいろな全身的な状態でやってくるわけです。 左の半身不随の人もいますし、右の半身不随の人もいる。 そうすると、私たちが身障者用のトイレを1つ作って、左に棒があればいいだろう、何か支えがあればいいだろう、という程度の考えで、設計上、左に支えの棒を作った。 そうしたら、入院してきた患者さんが、「私、これじゃ全然困ります。 左にあったって意味がないんです」。 その他、高さがどうだとか、洗面台の下に脚が入るのがどのぐらいの高さで入らなくてはいけないとか。 それで全部やり替えたんです。 ちょっとした材料的なこと、それから、それを使った用品・用具ですね。 これは生活の質の向上を図るという介護保険には絶対欠かせないと思います。 増原 そうですね。 私も先日NHKのテレビを観て、なるほど、と思ったんですが、褥瘡の非常に重症の患者の八十幾つの人が入院して摂食が良くなったら、同時に褥瘡も治ったというんです。 これは口腔介護の驚くべき効果であって、人間が生活力を出すためには歯科の役割や効果が非常に大きいなあ、ということを痛感したわけです。 新井 私も正にそういうことは経験しています。 それは物を食べるから栄養が摂れるというだけではなく、歯科口腔介護の大きなポイントである、よく噛む、よく味わう、話す、笑うなどの介護による効果にも関係します。 摂食時にちゃんとした口腔介護をやるときには、必ず姿勢の転換をやるわけです。 褥瘡というのは何かというと、孤独にして寝かしっぱなしにしておくからなる。 姿勢は3時間おきに変えないといけないんだそうですね。 ところが、経管栄養とかでやりますと、看護婦さんは「お食事ですよ」と上からヒューッとやって、ハイ、終わり、ハイ、次、次、と。 患者さんは孤独で寝たきりですよ。 褥瘡はどんどん進みます。 歯科衛生士が口腔清掃や摂食の介護をするときには、必ず起こしてやりなさい、と私は指導しています。 内科の先生に相談しても、起こしていけない患者さんというのはほとんどいないそうです。 CCUとか、ICUの中に入っている患者さん以外は、ベッドの上で起こしたり、ちょっと方向転換したりするようなことはかえっていいことなんです。 ですから、さっき言いましたように歯科衛生士が実施者としてやれば、当然起こす、方向転換する。 それで食べさせる。 栄養状態が良くなる上に、体の転換が行われるということになれば、これは結果は最初からわかっています。 実際にするか、しないかの問題だ思います。 食べさせるということがいかに重要か、これはおっしゃる通りだと思います。 増原 今日はいろいろと貴重なご意見をいただきまして、大変有益でした。 介護保険制度は日本の医療・歯科医療を大きく変革しますので、私共も意識改革を急ぐ必要があります。 先生の新しい教科書が一刻も早く出ることを期待しています。 |