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目 次
はじめに
近年、歯科医療におけるデジタル化は画期的な進化を遂げ、そのワークフローを根本から変えつつあります。モリタでは、2018年度から最重要課題として“デジタルデンティストリー”を打ち出し、取り組みを一層強化してきました。その取り組みを具現化する試みとして、今春『モリタデジタルソリューションセンター』(MDSC)を開設いたしました。今回のDMRでは、臨床家の立場から常に歯科界をリードして来られた山﨑長郎先生に、モリタのデジタルデンティストリーに対する取り組みやソリューションセンターに期待することなどについて、弊社社長 森田晴夫が伺いました。
デジタル時代のソリューションプロバイダーを目指して、
今春「モリタデジタルソリューションセンター」を設立
森田歯科診療現場におけるデジタル化が急速に進む中、デジタル分野においては、新しい技術や製品が次々と上市されています。私たちモリタでは歯科医院で使用されるコンピュータやデジタル機器の開発にも早くから取り組んできましたが、「モリタだからできる切り口、モリタにしかできない情報提供の方法があるはず」と以前から考え続けてきました。さまざまなメーカーから日々進化する技術を反映した製品が紹介される中で、弊社もより良い製品をユーザーにお届けする商社の使命として、それらの商品についてより多くのラインアップをとりそろえることに注力してまいりました。いわば良い音質を追求するオーディオマニアのために高品質な製品を品ぞろえする“昔のオーディオ専門店”のような状態でした。
山﨑これまで歯科におけるデジタル化の取り組みは残念ながらすべて「点」でしかありませんでした。せっかく良い製品であっても1つひとつが点では臨床で使いこなすことはできません。
森田今後、デジタルの普及がさらに進むにしたがって、製品間の互換性を含めた最適なマッチングを含め、先生が臨床現場でストレスなく使えるようになるためにはどうすれば良いのか、あるいはデジタルを正しく普及させるためにどうすれば良いのか、そこに着目して、例えばそれを実現させる“プラットホーム”のようなものを作る役割が私たちにはあるのではないかと考えるようになりました。これまでさまざまなデジタル技術を歯科に応用していくなかで、例えば歯科用CTであればスキャナーとしての機能だけでなく、その中には膨大な診断データが蓄積されています。こうしたデータをどのように活用すれば先生方の問題解決に繋がるのか、さらに解決のために具体的にどの機器を選べば良いのか、私たちは全体を俯瞰しながら、新しいことを試せるような場所を作っていきたいとの思いから、本社のある大阪府吹田市に今春「モリタデジタルソリューションセンター」(Morita DigitalSolution Center:MDSC)を設立します。
モリタでは、診断に必要なあらゆる機器をデジタルで繋ぐ取組みを、業界に先駆けて行ってきました。
「モリタデジタルソリューションセンター」の全容を示すイメージパース。デジタル技術に関する研究所やトレーニング施設、アドバンスなお問い合わせにお応えする場としての役割を担います。
山﨑素晴らしい取り組みですね。とくに日本国内のビジネスにおいてトータルソリューションという概念そのものが欠けていると私は常々感じていました。「モリタデジタルソリューションセンター」は、これまでともすれば停滞ぎみだった歯科界に風穴を開けてくれるものと期待しています。そのセンターでは具体的にどんなことができるのでしょうか。
森田まず1つは、デジタルデンティストリーの方向性を見極め、モリタではどういう商品を開発すべきなのか、どういった組み合わせが良いのか、またどう改良すべきか、について研究・開発し、新たな製品へとつなげる研究所にしたいと考えています。2つめは、市場の情報を収集し、いち早く先生方に情報発信を行える場、セミナーの開催や研修、製品体験や情報交換のスペースなど、先生方が集い、学びを深めるためのサロン的なものもつくりたい。3つめは顧客の皆さまからのデジタルに関する問い合わせに対応するサポートセンターとしての役割を持たせたいと考えています。
山﨑とかく臨床家は部分的には分かっていても全体像が掴めていない場合が多くて、いざ臨床に応用しようとしてもうまくいかないことが往々にしてあります。私自身も何年も試行錯誤を重ねた結果、ようやくさまざまな展望が見えて来たというのが正直な感想です。そういう意味からも、「モリタデジタルソリューションセンター」に行けばデジタルに関するいろんな情報や製品が集積されていて、臨床家にとっての“教育の場”としても機能してもらえれば私たちにとっても非常にありがたいですね。
森田そうですね。あと、製品間のバランスも重要だと考えています。例えばCTがいくら高精細になっても、一方で口腔内スキャナーの精度が伴っていなければ意味がありません。取り巻くすべての環境がバランス良くレベルアップして初めてデジタルデンティストリー全体の精度向上につながりますから、関連するメーカーの協力も仰ぎながら診療現場にベストな組み合わせをご提案していきたいと考えています。
従来のデジタルデンティストリーの枠に収まらない、
もう一歩先を見据えて
山﨑海外においてデジタル化の勢いは目を見張るものがありますが、日本ではなぜかそうした世界の動きに目を向けておられる先生がまだまだ少ないように感じます。そのためデジタルの分野では海外に大きく後れをとってしまっているのが現状です。ですから、ぜひモリタにはイニシアティブをとってもらって、デジタルデンティストリーを強力に推進する旗振り役になっていただきたい。デジタルに注力するメーカーもたくさんありますが、まだ部分的なものでどうしても全体がうまく繋がっていきません。これからは審美やインプラントをはじめ、歯科用CTが中心になって、それに互換性をもった周辺機器がリンクしていく流れがベースになりますから、CTを自社で開発している企業は強みを発揮すると感じています。
森田ありがとうございます。ただ、一方で注意が必要なのはメーカーの主張です。メーカーは基本的に自社にとって有利なことしかアピールしませんから、先生方はそれをそのまま鵜呑みにはされないよう、判断する目が必要になります。翻って、私たちメーカーは自分たちの強みだけでなく弱点もしっかり認識して、改善していく姿勢を持つことも大切だと考えています。
デジタルラボイメージ。
さまざまなデジタルデンティストリーに関する検証および研究を行います。
セミナールームからの体験コーナーイメージ。
ハンズオンセミナーやCAD/CAMに関するエデュケーションなどを行うことが可能になります。
山﨑デジタルの分野はまだまだ過渡期ですから、製品によってはデメリットの部分がどうしても出てきてしまいます。「モリタデジタルソリューションセンター」ではそうした負の部分を検証し、いち早く修正していく場所でもあって欲しいと思います。例えば、今まで国内になかった革新的な製品をピックアップし、この製品をどうやって院内のシステムに組み込んでいけばいいか議論を重ねていく。私はこのセンターで、スキャンからはじまって加工機でのミリング、最終的なデリバリーまでカバーするすべての流れを見せて欲しいですね。こういう取り組みは基礎的な技術の積み重ねがモノを言いますから、モリタ製作所という開発・製造機関を持っていることも大きな強みだと思います。
森田私もそのことはモリタにとって大きな強みだと感じています。
山﨑今回、「モリタデジタルソリューションセンター」設立の計画を聞いて私も考えてみましたが、周囲を見渡しても意外とこうした施設って今までないんですよ。そういう発想自体が国内にはまだないのかもしれませんが・・・。こうした施設をつくるためにはある種の条件がないとできないと思います。トップである社長のビジョンはもちろんですが、なにより人材やスペースも必要です。場所は本社がある大阪にできると伺いましたが、軌道に乗ったらぜひ東京にも作ってください。
ミリングルームイメージ。
モリタが取り扱うミリングマシンが揃い、比較対照を行うことができます。
ラウンジとミリングルームイメージ。
「モリタデジタルソリューションセンター」にお越しいただければ、常に新しいデジタル機器を実際に見て触れることができるので、導入前に使い勝手などを試すことも可能になります。
森田それもできるだけ早く実現したいと考えています。
山﨑デジタルデンティストリーですからモリタ本社のショールームのようなスタイリッシュで洗練されたイメージの施設を期待しています。
森田このセンターには、デジタルが得意な先生方はもちろん、これからデジタルについて勉強したいという先生方にもお越しいただいて、情報交換の場としてもご活用いただきたいと考えています。
山﨑私たちの学会の会員の先生方にもこのセンターを活用してもらって、デジタルに関する知識を深めてもらいたい。臨床家は実際に試してみて、どこまで使えるものなのかを見極めることが必要です。それを見極めることなくデジタルを盲目的に賞賛するのは危険ですから・・・。
森田もちろん実際の製品に触れていただくこともできますから、新しいマッチングを模索したり、ご自分のデータをお持ちいただいて試していただくこともできます。ただ、すべてのシステムを自分たちだけの製品で供給することはできません。新たなパートナーも視野に入れ、より良いマッチングを追求するためそうしたフレキシブルな姿勢も求められていると感じています。
デジタル化がもたらす
新たな歯科医療の可能性とは
山﨑現在、急速に高齢化が進んでいますが、日本の場合、歯牙の欠損がある高齢者が少なくなっています。今後5年間でこの傾向はさらに加速していくでしょう。私たちはその流れを読んでビジネスプランを立てるべきです。これまで「新三種の神器」と呼ばれてCTやマイクロスコープ、CAD/CAM装置などが珍重されましたが、現在、私が考える最先端のビジネスモデルは少し違っていて、1つは「矯正」だと思います。高速で全顎を一度に撮影できるようなIOSが開発されるなど、時代はそうした方向に流れていくと思います。あとはメインテナンスのプロトコルを具現化すること。現在、私のクリニックの来院患者のほとんどがメインテナンスです。今日も矯正患者さんだけで10数人、何を望まれているかというとアプライアンスのケアです。これからはIOSと診断をリンクさせるシステムが重要になりますし、メインテナンスとそれに関わる歯科衛生士の存在が欠かせないと思います。
森田集積したデータの活用方法を模索していくことが、新たなデジタル化への第一歩ということですね。
山﨑今後、予防歯科に関する社会のニーズもますます上がっていきますから、そこにデジタルをうまく関連づけることができれば、歯科はまだまだ大きく飛躍する可能性が見えてくるのではないかと感じています。
森田モリタでも昨年から“予防歯科をすべての人に”というキャッチフレーズのもと「Cresmile<クレスマイル>」という予防歯科プログラムを展開していますが、新たなご提案をいただきました。今後ぜひ検討していきたいと思います。
デジタルデンティストリーの一大拠点として
今後の取り組みに期待
山﨑私は「モリタデジタルソリューションセンター」に希望していることが1つあって、デジタルが不得手の先生でも、“ここに来ればデジタルに関するすべてが理解できる”図書館のようなイメージにして欲しいんです。デジタルデンティストリーのプロモーションや認知を業界全体にアピールするために・・・。モリタならできると思うんです。
森田ありがとうございます。おっしゃるように、多くの先生からいただいたデータを検証しライブラリー化して、そこから見えてきたことを先生方にフィードバックできるようにと考えています。
山﨑このセンターを通して先生方の生の声を拾うことができ、それを開発に活かすことができる。臨床家にとっても非常に有益なことだと感じています。これまでのメーカー押しつけのビジネスではなく、本当の意味でのインタラクティブな関係を構築できる、とても良い企画だと思います。おそらく関西におけるデジタルデンティストリーの一大拠点として、先生方の憩いの場になるのではないでしょうか。
森田私たちもそうなることを願っています。私たちモリタは歯科の発展に貢献する義務があると考えています。その意味からも、この「モリタデジタルソリューションセンター」を歯科に関わるすべての方々に広く開放していく所存です。ぜひモリタの今後の取り組みにご期待ください。
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