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Adverl SH 開発者インタビュー PART.2 “レーザー初心者の先生方でも迷わずに使えるように”手技の簡易化やユーザビリティを大きくアップデート

2011年発売の「Erwin AdvErL EVO」から13年。その後、課題や要望などさまざまなインプットを可能な限り受け止め、次世代の歯科用レーザーとしてふさわしい仕様や機能を備えた「Adverl SH」がついに誕生しました。ここに至るまでの数々の創意工夫や試行錯誤について、製品開発を担当したお二人に伺いました。

Part.2
“レーザー初心者の先生方でも迷わずに使えるように”
手技の簡易化やユーザビリティを大きくアップデート

アドベールSHでは新たにHardとSoftの2つの照射モードを選択できるようになりましたね

濵田:

はい。処置に最適なモードを選択することで手技の簡易化と治療効率の向上、患者さんのストレスの軽減を期待しています。どちらも照射エネルギーは同じですが、光強度のピーク値とパルス幅(1パルスあたりのレーザー照射時間)を変化させています。Hardモードでは光強度のピーク値を高く、逆にパルス幅を短くすることで深い切削/切開が可能になっていて、エナメル質などの硬組織の蒸散などを想定した設定になっています。一方、Softモードはピーク値を低く、逆にパルス幅を長くすることで軟組織や痛みを感じやすい箇所の処置を想定した設定になっています。

勝田:

他の製品でも同じようにモード調整が自由に設定できるものもあります。ただ、使いこなすのが難しい。アドベールSHでは、“レーザー初心者の先生方でも迷わずに使えるように”ということがいちばんのコンセプトですから、Hard/Softの設定をあらかじめプリセットしておいて、どちらかを選択していただくだけの仕様にしています。

“少しでも多くの先生に使っていただきたい”ということですね。
モードについてもう少し詳しく説明いただけますか

濵田:

実は、いざ先生方にご説明すると、照射エネルギー(mJ:ミリジュール)とは無関係に光強度のピークとパルス幅(1パルスあたりの照射時間)が決まっていると誤解されていることがとても多いのです。それは厳密には違っていて、mJを上げていくと、同時に光強度のピークも上がるし、パルス幅も長くなっていきます。Hardモードでは光強度のピークが高くてパルス幅は短い。逆にSoftモードでは光強度のピークは低くてパルス幅が長いのです。要は、光強度のピークとパルス幅のどちらに重きをおいているかがHard/Softの違いになります(図6)

下の図は横スクロールできます
図6 Hardモード/Softモードの照射イメージ図
図6 Hardモード/Softモードの照射イメージ図

次に、アドベールSHのもう一つの特長とされるプリセットモードについて、詳しく解説していただけますか

勝田:

このたびの新製品開発におけるもう一つの課題として、「レーザーが良いのは分かるけど処置に時間がかかり、出力設定やチップ選択などが分かりにくい」といったイメージをお持ちの先生方にメスを入れたいという想いがありました。そこで、先生が「この処置に使いたい」となれば、迷うことなく使用する出力やチップがナビゲートされるプリセットモードを搭載することにしたのです。

濵田:

同じmJ設定でも細いチップだと深くまで届き、逆に広い径のチップだと広く浅く処置できるので、チップごとに適する出力が違ってきます。それを設定することがレーザー初心者の先生方には難しく、導入の大きな壁の一つになっていました。このプリセットモードでは、あらかじめ各症例に合わせたチップ・出力・Hard/Softモードがプリセットされています。そしてお使いになるチップを変更した際も、変更したチップに合わせてプリセットが自動で変更される仕様になっています。特にレーザー初心者の先生や、チップごとの特徴や細かな出力設定を完全に理解できていない方でも、抵抗なくお使いいただけることが大きなメリットです(図7, 8)

プリセットモード使用フロー
図7 最初にレーザー処置を行いたい部位を選び、次に症例を選択するとプリセットされたチップや出力が表示される仕組みになっている。
  1. プリセットモード選択
    プリセットモード選択
  2. 部位選択
    部位選択
  3. 症例選択
    症例選択
  4. 治療スタート
    治療スタート
図8 全18種の症例がプリセットされ選択できる。症例は分かりやすくイラストで表示され、処置内容が視覚的・直感的にイメージできる。
下の図は横スクロールできます
図8 全18種の症例がプリセットされ選択できる。症例は分かりやすくイラストで表示され、処置内容が視覚的・直感的にイメージできる。

プリセットモードの実現にあたって苦労された部分はどんなところでしょう

濵田:

図9 プリセットモードは「レーザー初心者の先生が使う場合どの設定を選択していただくのが良いか」という視点でセッティングされている。もちろん先生によってお好みの設定に変更するなどのカスタマイズも可能。
図9 プリセットモードは「レーザー初心者の先生が使う場合どの設定を選択していただくのが良いか」という視点でセッティングされている。もちろん先生によってお好みの設定に変更するなどのカスタマイズも可能。
いちばん苦労した部分は、各症例にプリセットされる出力条件の検証と症例イラストです。現在プリセットされている出力条件については、繰り返し非臨床評価を実施する中であたりをつけ、臨床家の先生方よる臨床評価の中で検証を進めました。非臨床評価にはかなりの時間を要しましたが、なんとかまとめ上げることができたと感じています。
また症例イラストについては、一目で症例のイメージが沸くことと、簡単なチップの操作方法もイメージできることにこだわって作成しました。イラストについても、何度も作り直しをデザイナーに依頼しながら、時間をかけて作り上げました。その甲斐あって、このプリセットモードについては、レーザーのベテランの先生から初心者の先生まで、ご評価頂いた先生方から高評価をいただき、嬉しく思っています(図9)
図9 プリセットモードは「レーザー初心者の先生が使う場合どの設定を選択していただくのが良いか」という視点でセッティングされている。もちろん先生によってお好みの設定に変更するなどのカスタマイズも可能。
図9 プリセットモードは「レーザー初心者の先生が使う場合どの設定を選択していただくのが良いか」という視点でセッティングされている。もちろん先生によってお好みの設定に変更するなどのカスタマイズも可能。

勝田:

歯周ポケット照射が目的で導入された先生であっても、この症例一覧をご覧いただくことで、「口内炎にも使えるのか。その時の照射条件と推奨チップはこれなんだ」と気づいていただけますし、「こんなに幅広い症例に使えるんだ」ということで、新たな処置にチャレンジしていただける可能性も広がると感じています。

ファイバー部分はアドベール EVOと同じなのでしょうか

勝田:

図10 レーザー光を伝送するファイバーにも細かな改良が加えられている。
図10 レーザー光を伝送するファイバーにも細かな改良が加えられている。
ファイバー自体の構造は同じですが、細かなデザインは変更しています。操作性に関しては従来を踏襲して使いやすくということで、先生方のご意見を伺って柔らかさなどに微妙な改良を加えています(図10)
図10 レーザー光を伝送するファイバーにも細かな改良が加えられている。
図10 レーザー光を伝送するファイバーにも細かな改良が加えられている。

お二人とも「メカ屋」と伺いましたが、その立場からとくにこだわった部分はどんなところでしょう

勝田:

コンパクトに感じるサイズ感といかに重量を軽くするか。さらに、全体的にコンパクトになった分、器内の温度が上がってしまうという現象を回避するために、ファン制御とダクトの位置関係は実験を繰り返して現状のサイズを維持することができています。ここはメカ屋として大きなこだわりがありました。フィルターも清掃しやすいようにカバーが着脱式になっているのは、ちょっとした細部へのこだわりです(図11)。アドベール EVOは横から吸気して背面から排気していましたが、アドベール SHはどこから見てもメカメカしい部分は見られず非常にスタイリッシュで私自身とても気に入っています(図12)

濵田:

背面は意外とチェアサイドの患者さんからも見られることが多いという声もありましたので、アドベール SHでは底部にファンを設けています。

勝田:

水量が確認しやすいように取り付けたライトにもこだわりがあって、照明の光らせ方も何度も試作していちばん見えやすいように工夫しています(図13)。タッチパネルの高さや角度はアドベール EVOに合わせていますが、光の反射をできるだけ抑えるために光沢フィルムはあえて採用せず、マット感を持たせながら、かつデザインとの一体感にも配慮しています。

  • 図11 メンテナンス性に配慮し、吸気用ダクトのフィルター部分に着脱式のカバーを設置。
    図11 メンテナンス性に配慮し、吸気用ダクトのフィルター部分に着脱式のカバーを設置。
  • 図12 左がアドベールSH、右がアドベールEVOの背面。アドベールSHでは排気用ダクトを底面に設けたため、背面がシンプルかつスタイリッシュになっている。
    図12 左がアドベールSH、右がアドベールEVOの背面。アドベールSHでは排気用ダクトを底面に設けたため、背面がシンプルかつスタイリッシュになっている。
  • 図13 給水タンクの格納方法や水量を確認するためのライトの照度や位置にもメカ屋ならではのこだわりが見られる。
    図13 給水タンクの格納方法や水量を確認するためのライトの照度や位置にもメカ屋ならではのこだわりが見られる。

アドベールSHではレーザー装置としては初めてコーポレートデザインを採用されたと伺っています

勝田:

はい。デザインはコーポレートデザインを採用しています。デザイナーさんと私たち開発・設計部隊の間で「こんな形状は不可能なので、もっと大きくしてください」とか「何としてもこのサイズに収めてほしい」という折衝が何度もありました。

濵田:

「臨床ではそんなこだわりはいらない」という部分と「デザインとしてはこれが良い」というところのまさにせめぎ合いでしたね。

アドベールEVOからの細かい部分での改良点として、他にどんなところが挙げられますか

濵田:

例えば、販社であるモリタさんからは、「アドベール EVOではコード部分が出っ張っていて、そこを先生が蹴ってしまって断線してしまうケースがあるので当たらない形状にしてほしい」とか、「ハンドル部分の持ち手が痛くないように」など、さまざまなご意見をいただき、今回アドベールSHの設計に盛り込みました。

勝田:

内部まで美しく見えて清掃しやすいようにこだわっていますし、あとはゴーグルをかけるハンガーも新たに付けました(図14)

濵田:

このハンガーはマグネット式になっていて、壁際に収納される際に、左右どちらの向きでも置けるようになっています。アドベール SHでは奥行きが短くコンパクトになりましたが、その分ゴーグルなど上部に置いていたスペースが狭くなってしまいました。そこでゴーグルを横のハンガーに架けられるようにして、上部にはチップなど処置に必要なものを置くように提案させていただきました。このゴーグル用ハンガーは意外に評判が良いですよ。

勝田:

他には、アドベール EVOは前輪だけが可動式で後輪は固定されていましたが、「4輪とも動くようにしてほしい」という先生方からいただいた要望を受けて、アドベール SHでは後輪も含め4輪が自在に動くようにして、取り回しを向上しています。

図14 移動用のハンドルや左右付け替え可能なゴーグル用のハンガーなど、使い勝手に配慮したアップデートが随所に感じられる。

最後にお二人から先生方にメッセージをお願いします

濵田:

自分の息子が歯科医院を受診した際に、偶然その医院さんにはアドベール EVOがありました。しかし、残念ながら息子の治療には使ってもらえませんでした。その理由を伺うと「処置のためにわざわざ出してくるのが面倒、歯が削れない、もっと勉強すればいいんだけど、mJの設定などがよく分からない」と言われてしまいました。しかし、「これがお使いになる先生方の本当の意見なんだ」と感じて、新たな開発構想が猛烈に湧いてきました。先生方がこれまでお持ちだった「良いのは分かるけど、使うには敷居が高い」という声を受け止め、アドベール SHにそのすべてを盛り込んでいます。これまで躊躇されてきた先生にこそ、ぜひ試していただきたいと思います。

勝田:

レーザー初心者の先生はもちろんですが、これまでアドベール EVOや他のレーザー装置をお使いの先生方にもぜひ使ってみていただきたいですね。レーザーに特化したテクニックは必要なく、ゆっくり動かさないと切開できないということもありません。先生のイメージに近い切削・切開が可能になっていますから、長年レーザーをお使いの先生ほどアドベール SHの良さは分かっていただけると感じています。先生方からのご意見を伺うのを今から楽しみにしています。

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