「ツインパワータービン ウルトラシリーズ」の発売から15年あまりが経過し、さまざまな改良を加えた待望の新製品「ツインパワータービン Gシリーズ」が、昨年、2025年10月に上市されました。
その「Gシリーズ」を発売と同時に購入され、高く評価していただいたのは、歯科材料や器材に深い知見をお持ちの内田昌德先生でした。その内田先生と「Gシリーズ」の開発に携わったモリタ製作所 則近孝彰氏の対談が実現。「Gシリーズ」の新たな特長や臨床での使用感、開発時の創意工夫などについて、大いに語り合っていただきました。
ツインパワータービンGシリーズを高く評価する先生と
開発に携わった開発者のご紹介
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内田 昌德 先生
山口県山口市
医療法人鶴翔会 内田歯科医院 院長 -
則近 孝彰
株式会社モリタ製作所 副主査
エアタービンに対して抱くイメージ
数ある切削機器の中でエアタービンの活用用途をお聞かせください
生活歯、エナメル歯は、高速回転で切削する方がキレイに切削できると思っていますので、エアタービンを使うことが多いです。昨年秋に発売された「ツインパワータービン Gシリーズ」は、従来より大幅にトルクがアップしたので、補綴装置の除去にも使えるのではないでしょうか。以前のエアタービンでは、#330のカーバイドバーだと弾かれてしまうこともありましたが、それがようやく解消されたことに技術の進化を感じます。
切削の際にパワーが必要なジルコニア製の補綴装置などを除去する場合はどんな器具をお使いでしょうか。またエアタービンに関してお持ちの印象をお聞かせください
エアタービンに関して不満に感じておられるところはどんなところでしょう
いちばんはエアタービン特有の高音です。患者さんが持つ歯科医院のイメージはまさにあの「キーン」という耳障りな高音だと思いますから、あの音が少しでもソフトになれば嬉しいですね。私たちは毎日聞いているので慣れていますが、患者さんはあの音にはネガティブな印象をお持ちだと思います。
「ツインパワータービン Gシリーズ」の開発経緯
このたび「ツインパワータービン Gシリーズ」(図1)を開発された経緯を教えてください
内田先生は常々ご自身のことを「歯科器材マニア」と称しておられますが、気になる製品があると発売と同時に購入されるのでしょうか
はい、必ず購入しますね。特に機械系は好きなので、メーカーを問わず自分の興味があるものは購入して試してみます。ですから、タービンやハンドピースだけでもこれまで400本以上は試してきたと思います。「ツインパワータービン」もシリーズ累計で数十本は持っていました。新製品の「ツインパワータービン Gシリーズ」は2025年10月の発売と同時に1本購入して、その使用感が驚くほど良かったので、追加で何本か買いました。臨床で使用する器材は、新しく発売された製品がいちばん優れたものと考えていますので、私が使用する器材は常にアップデートしています。
「Gシリーズ」の第一印象はいかがだったのでしょう
内田先生のお話を伺って、開発者としてどのようにお感じになりましたか
“粘りがある”ということは、バーが弾かれにくくなっているということだと思いますから、まさに私たちが先生方に対して求めていた反応の一つでした。「Gシリーズ」では、ヘッド内部にあるインペラーの羽の枚数を増やし、エアーを受けるバケットの形状にも変更を加えています。その目的はトルクアップだけではなく、流れてきたエアーを効率良く受けることで、回転変動を抑えることを期待しました。回転変動が起こると、バーが接触した時にエアーを受けていない瞬間ができて、それが数10万回転の間に繰り返されると、結果的にバーに当たって弾かれている感覚になります。5倍速コントラの場合は、基本的には規則正しくギアが噛んでいるので、回転変動は起こりにくいんです。「Gシリーズ」では、インペラーの羽の枚数とバケット形状に改良を加えることで回転が一定し、弾かれにくくて振動も少なくなることを狙っていました(図2)。
たしかに従来だとバーがブレて踊ってしまって、それがあたかも削れているように錯覚していましたが、実際にマイクロスコープなどで切削面を見ると、バーの痕が残っていることがよくありました。「Gシリーズ」は軸ブレが少ないので、たとえばCAD/CAM冠の形成などの場合でも、マージン付近の形成が精密にできるようになったと感じます。
軸ブレについては、インペラーの回転によって外力を加えていますから、ここにいびつな外力が加わると、軸がブレて回転が安定しません。そこで弊社では、ノズルを3本にしてエアーを均等にインペラーに当てることで、滑らかな回転を実現しています。
排気の構造はどうなっているのでしょう。
排気はそのほとんどをチューブ方向に戻しています。
ヘッド上部からはほとんど出ないのですね。
いえ、ヘッド上部からも少しですが排気は行っています。
そのあたりのバランスをどうコントロールしているのかは不思議です。
以前はバーに対して垂直方向にも排気していましたが、これにはさまざまなリスクが想定されるために、「Gシリーズ」ではエアーを横に逃がしていくことによって、切削面にエアーを当てない構造を採用しています。ヘッド上部の排気については、その部分にエアーが流れることで、メンテナンスの際にヘッド内部のベアリングに効率良くオイルが給油でき、耐久性を維持することも期待しています。
そういうことだったんですね。確かに「Gシリーズ」を使ってみると、バーから垂直に上がってくるエアーや注水時に飛散するミストが少ないと感じました。飛散したミストが垂直に上がってくると私たちがそれを吸ってしまって、飛沫感染にもつながります。そのリスクを回避してくれているわけですね。それはとてもありがたいです。
注水については、従来はとにかくバーを冷却することを考え、バーの長短に対応するため広範囲に注水できる霧状を採用していましたが、「Gシリーズ」では、注水口を4つに増やし、かつバーに少し近づけて配置しています。その目的は、バーに対して同軸で注水すれば霧状にする必要がなく、結果的に注水時の飛散を抑えることを狙っています(図3)。
なるほど。それはとても深いですね。
注水方式を大きく変更するにあたり、さまざまな種類のバーと歯牙模型を使って、いろんなパターンを試しています。私たちには手探りの分野なので、多くの先生方にも検証いただきましたが、注水方法に変更を加えるのは開発者として正直チャレンジングな部分ではありました。
良い方向に進化していると思います。使ってみるとその良さがすぐにわかりました。
臨床でお使いになって、「Gシリーズ」に関して他にメリットと感じる部分はありますか
タービンヘッドが少しスリムになっているというか、膨らみが薄くなっているからだと思うのですが、バーの先端部分がとても見やすいですね。通常のタービンヘッドはもう少し張り出しているので、それが死角になって見にくいことがあります。
「Gシリーズ」では、ノズルを3本設けて1本あたりのノズルを小さくしているので、第1インペラーの羽の高さを小さくできます。その結果、ヘッド内部にスペースができ、その空いたスペースを削いでいくことで、ヘッドのスリム化に成功しています。また、先ほどお話ししたように注水口を中央寄りに位置変更したこともスリム化の要因の一つだと思います(図4, 5)。
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[図4] モリタ製作所従来品と比較し、ヘッド部分がスリムになり視認性が向上している。 -
[図5] 3か所のノズルを設けることで、パワー向上とヘッドスペース確保によるスリム化を実現。
あとは、バーのプッシュボタンの部分も薄くなっていますね。あまり口を大きく開けられない患者さんの場合、コンマ1mmでもヘッドが薄くなることはありがたいのですが、バーを着脱するプッシュボタンが硬くて押しにくいのはどうにかならないでしょうか。
私たちも、バーの着脱方法については改善の余地が残っていると感じています。トラブルの際にバーが抜けなくなるのはまだ許容範囲で、絶対あってはならないこととして、治療中にバーが抜けてしまうことだと考えています。特に今回の「Gシリーズ」はハイトルク+ハイパワーが最大のメリットですから、硬い材料を切削する、すなわち相当の負荷がかかった状態で切削することが想定されます。その際に、確実にバーをチャッキングしておくことが前提です。チャックの安全性を取ったために、その代償として、バーの着脱時の硬さを完全に解消するところまで辿り着かなかったというのが正直なところです。今後の課題として検討していきたいと考えています。
以前に比べれば、硬さは改良されていると感じますが、変更された点はあるのでしょうか。
チャックの保持構造自体は変えていないのですが、プッシュボタン部に用いているスプリングや、バーを保持するツメの形状に改良を加えています(図6)。
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[図6] 「Gシリーズ」では、チャックの爪数やプッシュボタン部に用いているスプリングに改良を加えて押しやすくするとともに、安定したバー保持力やプッシュ操作力低減を行っている。
内田先生のクリニックでは海外製のチェアユニットを使用されていますが、「ツインパワータービン」との親和性についてはいかがですか
「ツインパワータービン」を使う際には、専用のダイレクトカップリングを使用しています。純正のモリタ製チェアユニットに接続するより若干パワーは落ちると思いますが、それを差し引いても、現在私が使っているエアタービンのなかではパワフルで軸ブレも少なく、かなり使いやすいと感じています。私の場合、いろんなメーカーのさまざまな器材を試してみたいので、専用のカップリングを用意してくださるのはとてもありがたいですね。
他社用のカップリングを使用される場合、接続部分で流量を調整するなどの微調整を行っているため、ご指摘のように他社製チェアユニットに接続する場合はパワーが少しダウンすることは否めません。他社チェアユニットに使用される際にも、高いパフォーマンスが発揮できるように改良を続けていきたいと考えています。
アメリカなどでは、エアタービンの市場は大きいものがあり、モリタ製のエアタービンの評価も高いですから、引き続き海外製チェアユニットとの親和性も視野に入れて、グローバルに展開していただきたいですね。
今後、「Gシリーズ」のようなハイトルクのエアタービンによるジルコニア切削の需要は広がっていくとお考えでしょうか
現在のところ、当院ではジルコニアを切削する場面に巡り合う機会は少ないです。ヨーロッパなどでは、ジルコニアの補綴装置がかなり普及していると思いますが、日本国内で、かつ保険診療が中心の当院としては、ジルコニアよりチタン製フルメタルクラウンの除去に苦労しています。チタン冠の除去には、「Gシリーズ」のように粘りがある切削器具でないと、火花が散るばかりで削れないことも多い印象です。
硬い材料が切削できることをアピールする意味でジルコニアがその代表として挙げられることが多いようですが、内田先生がお話しされたように、国内においてジルコニアの切削が必要なケースは少ないとなると、少なくとも国内向けのアピールポイントにはなり得ないかもしれませんね。
内田先生はどの程度の切削圧でエアタービンをご使用でしょうか
ほぼフェザータッチです。フェザータッチで切削することで、回転がいちばん安定するところを使って効率よく切削できます。押し当てて切削するとバーの痕が残ってしまって、それを元の状態に復元するのはほぼ不可能に近くなります。従って、美しく形成するためには、私はフェザータッチが基本だと考えています。
高硬度の材料を切削する際、カーバイドバーだと消耗が早く感じますが、内田先生の印象はいかがでしょうか
私の場合、カーバイドバーは一度使ったら捨ててしまいます。ダイヤモンドバーは滅菌して再利用しますが、カーバイドバーは一度使うと刃先が鈍ってしまいます。ですから、一度使ったら新品に変えていくのが内田流です。切れない刃を当てると熱が加わってしまうので、生体に悪影響を及ぼす可能性もあります。注水も大切ですが、何より使用しているバーの精度がいちばん大事ですから、私は常に新しいものを使っています。贅沢と思われるかもしれませんが、クラウン除去の際にカーバイドバーを新品に替えるだけの保険点数がきちんと付いていますから、私は当然のことだと考えています。
「Gシリーズ」で改良して欲しい点があればお聞かせください
実は検討していただきたいことが一つあって、それはヘッドのプッシュボタンのところに、例えばモリタの「M」のレーザーマークなどを入れて欲しいです。その理由は、滅菌が終わって滅菌パックから出した時に、スタッフがどのメーカーの何の製品かがわからなくなってしまうからです。当院ではタービンの本数が多いので、目で見て分かるように、例えば色違いの滅菌テープなどで巻いておくなどの工夫はしていますが、可能であればメーカーの方で一目で分かるようにしていただきたいですね。ボディ部分にロゴや型番などは表示されてはいますが、小さくてわかりにくいので…、私たちは見ればすぐわかりますが、器材の形状などに興味がないスタッフにとってみれば、すべて同じに見えてしまうと思うんです。
社内でもまさに同じ意見がありました。今後あらためて検討していきたいと思います。
お二人からのメッセージ
内田先生が今後モリタに期待することはどんなことでしょう
モリタには、世界の最先端の医療を提供し続けることを期待したいですね。日本国内はもちろん、世界のどこにも負けないくらいになって欲しいです。たとえばアメリカでは、「根管長測定器のモリタ」と言われるほどシェアが高くて、歯科医師なら誰もが知るメーカーです。近年では、歯科用CBCTも海外で見かけるようになり、大学病院などでも採用されるようになっています。次は、「切削用のタービンといえばモリタでしょ」と言われるような、ナンバーワンの製品を作っていただきたいですね。器材は複雑な構造のものほど進化していくと思います。例えば、ノギスの形状は昔から変わらないですよね。それは構造がシンプルで変えようがないからです。今回のエアタービンのような複雑なツールほど、改良の余地が生まれます。「Gシリーズ」であれば、インペラーの羽の枚数や形状に改良を加えることで、製品として確実にレベルアップを図ることに成功しています。私が常に新しい製品を試してみるのも、メーカーのこだわりや注いできた技術をこの目で確かめたいという欲求から生まれていると思います。今後のモリタに大いに期待しています。
最後に則近さんから先生方にメッセージをお願いします
まず一度お使いいただいて、その評価を伺いたいと思います。開発者としては元より高い評価をいただけることを願っていますが、もちろんまだ百点満点とは思っていません。改良すべき点は率直に受け止めて、今後の製品開発に活かして、少しでも良い製品を提供できるように努力していきたいと考えています。