新型IPスキャナー「ベラビュー iP」はIPスキャナーとして初めてモリタ製作所で自社開発された製品です。
これまで課題となっていた画質および解像度の改善に加え、臨床現場で頻発していた「IP詰まり」を解消するため、オリジナル設計の搬送機構を採用しています。その開発の裏側には、振動への対応という大きな課題がありました。ここでは、『デンタルマガジン』で紹介された内容に加え、特に課題とされた振動対策への対応に焦点を当ててお話を伺いました。
Veraview iPの開発を担う3名の開発者たち
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新井 嘉則 先生
日本大学歯学部 歯科放射線科
研究特命教授 -
杉原 義人
株式会社モリタ製作所 主査 -
藤井 優輔
株式会社モリタ製作所 係長
目に見えない「振動」への飽くなき挑戦
「ベラビューiP」の製品化に向けていちばんの課題は何だったのでしょう
「ベラビュー iP」のいちばんの難所は振動による画像ノイズ(アーチファクト)でした。藤井がいなかったら、今頃まだ暗中模索の状態で製品化の見通しも立っていなかったかもしれません。
実際はとても大変だったのではないでしょうか。
私はもともと大学で振動について研究した経験がありました。「ベラビュー iP」の設計、開発においても様々なパターンで検証していくことで「ここはこうなってるのか」「だったらあの部分はどうなっているんだろう」という自問自答の繰り返しでした。ですから「どうしてできないんだ」と悩むようなことはなく、できない原因を追求することが楽しくて、ずっと試行錯誤を続けてきました。
実際に振動の原因を突き止め、解決に至った経緯をお聞かせください
まずはIPの受光部品に手を加えないことを前提に、その周辺要素を改善していくことで解決を図るために様々な検証を行いました。例えば、振動に強くするためには装置自体は少し重い方がいいだろうとか、振動が伝わる経路を減らしていくためにはどうすればいいか、さらにその経路に緩衝材やゴムなどを入れると、少しでも振動が改善されるのではないか、などといった試行錯誤を繰り返しました。振動の問題解決は重要な企業秘密のため、詳細はお話しすることができませんが、振動解析と試作品のトライアル アンド エラーにより、ようやく解決に至りました。
本当にトライアル アンド エラーの繰り返しですよね。私の勝手なイメージですが、1mmずつカンナで削っては、どの程度振動を受けているかを確かめていく、おそらくそういう世界なのだと思います。
振動経路を特定する際には、「ここじゃないだろうか」という目星をつけ、いろんな試作品を作って、最終的には装置全体を組み上げて検証するようなことを、繰り返し試していましたね。
確かにそうでしたね。検証には予想以上に時間がかかりました。
振動は目に見えないものですからね。電気的ノイズだと再現性があるので、発生源が特定できますが、振動の場合は難しかったと思います。
安定して観測できるものだと比較的原因は追求しやすいのですが、振動の場合は環境要因を大いに受けるので、そういうわけにもいかず本当に大変でしたね。
IPスキャナーのセンサーがそれほどデリケートで、画像にも影響する可能性があるとは知りませんでした
普段の臨床で、スキャン中に装置の横に何か物をポンと置かれたりすると、その振動で画像に微細な線が入ることもあると思いますが、お気づきにならないレベルかもしれません。ただ私たち開発者としては、日常的な歯科環境において、できる限りそうした不具合が起きないことを目指していて、「ベラビューiP」ではそのような高いレベルでの品質担保が達成できたと自負しています。
普通に考えれば、このままで商品化できるレベルに十分達していると思えるのですが、敢えて非常に悪い環境下でも、100%に近い性能が出せるところまで追求されたのではないかと思います。実は、イメージングプレート(IP)を読み取るセンサーはとてもデリケートで、まさにミクロの世界です。さらに振動というものは非常にやっかいで、同じ条件でも発生したりしなかったりするわけです。ですから機械が好調な時のチャンピオンデータをお見せすれば、それで通ってしまうかもしれませんが、X線の被ばくを伴う医療機器として、2度と同じ撮影ができないということを重視して開発されたのではないでしょうか。私はその企業姿勢に大いに感銘を受けました。
再撮影は患者さんにとってデメリットでしかありませんから、やはりX線撮影は一度きりできちんと完結できるような装置を作ることが最重要課題でしたし、私たちの使命でもあると考えていました。
万が一私たちが妥協して製品化にGOサインを出していたとしても、弊社の企業理念がそれを許さないことは、私たちも十分理解しています。さらに振動に関して言えば、今日は計測できなかったとしても、明日になったら、あるいはほんの少し条件を変えただけで計測されるかもしれません。私たちはそれをあきらめず地道に追求していくわけです。
振動は再現性が低いので、本当に難しいですよね。
千回に1回とか、1万回に1回くらいのレベルだと、どこで振動が発生するかわからないんですよ。それがようやく発生して、デンタルX線写真に表れた線について「臨床上留意すべきレベルでしょうか」と新井先生にお聞きしました。
実際に指摘されないとほぼわからないレベルなのですが、それでもそれを追求しないと、「アドバンスドエンドモード」が生まれることはなかったと思います。大きな山を1つ越え、新たなフェーズに向かうきっかけになったのではないでしょうか。
「アドバンスドエンドモード」誕生の意外な経緯
「アドバンスドエンドモード」は振動を検証する過程で、ヒントを発見したと伺いました
IPスキャナーが設置されている環境で発生する振動には、バキュームやハンドピース操作時の振動、もしくはシリコン印象の際に使用されるタイマー音や振動があり、その耐性は不連続な値を取ります。その振動の周波数に対して、できるだけその値から離して理論的かつ実験的にスキャンモードをつくっていくことに時間を費やしていました。振動を正しく解析して、できるだけ振動を受けない速度や動きを追求していく過程で、「スタンダード」をはじめとした「エンド」、「ペリオ」、「DEJ」という4つのモード以外にも、もっと微細にスキャンできる部分があることに気付いたんです。その画像を新井先生にご覧いただき、新たに作り上げたモードが「アドバンスドエンドモード」です。根管治療では、より精密に根尖領域を診断するために解像度に特化したモードが必要では、という観点から生まれたモードになります。
「アドバンスドエンドモード」は、空間分解能とノイズのバランスを空間分解能に大きく振ったことで、いわば偶然生まれたモードです。これまで誰もチャレンジしてこなかった領域ですので、臨床の先生方にあらためて評価いただきたいと思っています。
最後に先生方へのメッセージをお願いします
可能な限り、歯科医院の環境に依存しない製品に仕上がっています。ただ、推奨する環境はあって、電車や新幹線の線路に接近していて、電車が通るたびに建物自体が揺れるような環境だと、どこまで対応できるかは正直わかりません。しかし、それは特殊な環境であり、ほとんどの歯科医院や病院の場合、しっかりと固定された台の上に設置していただければ安定した高画質のデンタルX線画像をご提供できるはずです。ぜひモリタが心血を注いで注力してきた画質の高さをご体感いただければ幸いです。
デンタルX線装置のスキャン精度は非常に繊細です。機械設計の担当者としては、どうやって組み立てれば、その精度が担保できる誤差が少ない設計となるかに可能な限り注力した製品です。日常臨床でお役立ていただければ嬉しく思います。
設計・開発担当者の叡智とチャレンジ精神が結集し、完成したデンタルX線装置です。新たに設けたモードを使って臨床の幅を広げていただければと思います。さらに長きにわたってご使用いただきたいというのが、私の願いです。