ホワイトニングは輝く笑顔を提供するばかりでなく、歯への関心を高め、ブラッシングなどのセルフケアのモチベーションを高めることにつながります。歯を削ることなく白くできるホワイトニングを日常臨床の選択肢の一つに加えることにより、元気ではつらつと活躍する人々が少しでも増えることを期待します。 <久光 久>
ホワイトニングの勉強をすればするほど、“白”とは難しい色だなぁと頭を悩ます毎日ですが、「マイルドホワイトニング」を謳う「ピレーネ」を使い始めてから、“ホワイトニングとは、ただ歯が真っ白になればいいというものではない”と感じるようになりました。
82歳で27本のご自分の歯を持つおじいさんが、ホワイトニング希望で来院されましたが、「ピレーネ」処置2来院で満足なさり、“これ以上白くなったら、入れ歯に間違われてしまうから”と3来院目をされることなく終了しました。
目指している歯の白さは、人それぞれです。
「ピレーネ」のホワイトニングは、白すぎないつやつやした自然な白い歯です。私感ですが、特に日本人女性に関しては、あまりに白すぎる歯よりナチュラルな光沢感のある歯の方が素敵な気がします。
メイクで言えば隙の無いきっちりしたフルメイクより、素肌感を残しその人本来の良さを生かしたナチュラルメイクとでも言いましょうか…。良く手入れをされた艶やかな髪や、きれいに整えられた爪から、その方の人生に対する豊かな向かい方が感じられるように、にっこり笑顔からつやつやした清潔な白い歯がこぼれたら、自分だけでなく周りの人にも幸せ感が広がると信じているのは私だけではないはずです。
余談ですが、去年の夏、ある有名なメイクアップアーティストのメイクアップレッスンに行く機会がありました。最後に「歯を白く見せるリップの色は?」と質問を投げかけたところ、答えは「濃い色のルージュではなく、どちらかといえばヌードベージュのナチュラルカラー」という答えでした。私も同感です。是非試してみて下さい。
「ピレーネ」によるホワイトニング後の歯の特徴は、お話してきたようにつやつやとした光沢感です。筆者の写真撮影技術の未熟さもあり、なかなか術後写真にそのつや効果を伝え切れていない点をお許し下さい。
<「ピレーネ」の組成>
①液(白いキャップ:透明の液体→6%以下の過酸化水素系)
②液(青いキャップ:白く固まっている→二酸化チタン[光触媒]系)
青いパッケージをあけると、混合プレートの中に2本のバイアルが入っています(図2)。この2本の内容物を約1分間よく振って完全に混和させることが、まず第一番目のコツです(図3)。講習会などに行ってよく質問されるのが、「どちらのリキッドをどちらに入れればいいのでしょうか?」ですが、白く固まっているA液の内容物は@液に動かしようが無いので実は悩む必要はありません。透明の液体の@液を青いキャップのA液に全部流し込んで下さい。両方の液体を混ぜ合わせてキャップをした直後は、バイアルで机などを軽くたたいたりして少し強めの振動を与えて下さい。ただラフに振っただけですとふわふわしたものが残って見える場合がありますので、1分後に完全に混ぜ合わされたことを確認してから、付属のディッシュ部分に混和物を流し込んで下さい。
①液と②液の混和後の過酸化濃度は、オキシフル並みの3.5%になります。pH濃度はエナメル質臨界pH5.5以上のpH6.0です。この高い安全性が「ピレーネ」の最も特筆すべき特徴です。従来の高濃度35%過酸化水素使用のOffice Bleach材でしたら、完璧な歯肉保護が必要不可欠ですが、「ピレーネ」使用の際は、私は歯肉保護を省略して施術します。塗布時に「ピレーネ」が歯面から少々はみだしてしまってもあまり神経質にならなくて良いところが、何より「ピレーネ」の長所です。
★ よく混和させた「ピレーネ」をディッシュに移す際、私はあらかじめ「ピレーネ」の全量をバイアルからスポイトに吸い込み、ざっと三分割したラインを印してその1/3ずつディッシュに流して、一回ごとに使用する目安としています。1来院ごとに、「ピレーネ」の塗布・洗浄を三回繰り返しますが、その一回ずつに使用できるだいたいの量を把握するためです(図4)。
★ 先端に小さな丸いスポンジのついた青い専用アプリケーターで「ピレーネ」を歯面に塗布しますが、このアプリケーターは曲げられるようになっていますので、使い易い角度に曲げて使うとマルチアーチの照射器を使用する際、照射器と口唇との間隔が狭い時などに便利です(図5)。
★ 「ピレーネ」を使用した時だけではなく、ホワイトニングには術前術後の口腔内写真が必須のものですが、写真を撮影したら、すぐに画面上にアップして、即ホワイトニング効果を診療室内で患者さんに見ていただくようにしています(図6)。
1)セイフティなのでビギナーに
とにかく安全性が高いので、ビギナーの術者にもビギナーの患者さんにも、まずホワイトニングを試してみようという両者に、ともに適しています(図7)。
日本で最初の高濃度Office Bleach材が発売されて11年が経過しましたが、想像していたほど国内でホワイトニングが普及していないのが現状だと感じます。何故だろう…?といつも頭をひねり残念な気持ちです。様々なこの国特有の理由はありますが、案外未だに「ホワイトニング」を知らない患者さんが多いのは、ホワイトニングのできる私達の責任だと感じます。私は来院された患者さんのほとんどに「ホワイトニングという歯を白くきれいにする方法がありますが試してみませんか?」と声をかけてみるようにしていますが、まだまだ地道な努力を続ける第一歩の時期が続いているのだろうと反省する毎日です。
(デンタルマガジン128号でも紹介されましたが、日本歯科審美学会では平成19年に歯科衛生士のためのホワイトニングコーディネーター制度を立ち上げ、平成21年6月の第14回沖縄講習会までに、ホワイトニングの正しい知識を持ち患者さんに適切なアドバイスのできる約4,100人のホワイトニングコーディネーターを育成しています。)
2)隣り合った歯がコントラストの強い場合に
側切歯・犬歯など、白い歯に色を合わせたい時。
3)歯列不正のホワイトニングに
ホームホワイトニング用のカスタムトレーが作製できない歯列に(図8-(1)〜(5))。
4)クラックや磨耗があって知覚過敏が心配な歯に
高濃度Office Bleach材使用の場合でしたら、躊躇してホワイトニングを諦めてしまう程の深いクラックや磨耗があっても、「ピレーネ」の場合あまり心配すること無く漂白処置を行うことができます(図9-(1)〜(3))。
5)ホワイトニングの最終仕上げに。
6)タッチアップに(図10-(1)〜(6))。
◆ 「ピレーネ」の良好な漂白特性を引き出すために最も重要なキーポイントは、使用する照射器の波長です。光触媒として入っている二酸化チタンに適した光源は、380〜420nmの安全な可視光線領域です(図11-(1)〜(2))。この波長域を持つ照射器使用でないと「ピレーネ」の効果は出ません。治療室にある照射器の波長を確認してから「ピレーネ」ホワイトニングをお始め下さい。この波長の光が当たっている時のみ「ピレーネ」の漂白効果が発現します。
◆ 光照射中、歯面はいつも「ピレーネ」で濡れていなければなりません。乾燥してしまうと漂白効果は低下し、ひいては照射器の発熱による歯髄への影響の可能性も出てきますので、常に歯面が「ピレーネ」で湿潤していることを確認する必要があります(図12)。別売りの不織布を使う方法もありますが、個人的には防護メガネをかけた眼で歯面の濡れ状態を見て、アプリケーターの先端のスポンジの感触を確かめながら塗布した方が確実に歯面に塗布できている感じがします。
あるホワイトニング講習会での、一人の受講生の先生からのお話です。
「自分は、精神的にハンディキャップのある患者さんの歯科治療をしているのでホワイトニングとは無縁だと考えていましたが、試しにある患者さんに「ピレーネ」を使ってホワイトニングをしたところ、とても喜ばれました。『すこしでも自分の中でいい部分ができたことが嬉しい』と、たびたび鏡を見て明るくなられました」。
この患者さんがどれ程の身体的なハンディキャップがあるのかは聞きそびれましたが、もし不随意運動の伴う患者さんであったとしても、安全な「ピレーネ」だからこそ施術が可能になったのだと思います。
“すべての人に白い歯を〜”……いつも私が心に秘める願いです。「ピレーネ・ホワイトニング」のつやつやした白い歯で、その人らしい生き生きした人生を楽しむお手伝いができるとしたら…、こんなすてきなことはないと思いませんか。