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第79回(192号)

歯科医院を維持していく上で大切なポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座188

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
勤務医の時は院長の考えや指示についていくことで精一杯でしたが、開業してからはすべて自分が決められる状況とはいえ、考えなければならないことが多く、目まぐるしい変化に戸惑うことも多い状態です。事業計画と大きな相違がない状態で患者さんは来院してくれており、収支状況も返済が適切に行える状態を維持できていますが、これからを考えた場合、歯科医院を維持していく上でどのような姿勢が大切になるか、ポイントとなることがあればご教示ください。
Answer
開業時をスタートとして、歯科医院周辺の競争環境や勤務するスタッフの意識、あるいは患者さんも変わっていく中で、自医院に求められるものは変わります。組織が大きくなればなるほど、自らが積極的に働きかけて変化を探っていくことをしなければ、いつの間にか環境の変化に適合できていない状態になってしまうかもしれません。患者さんの期待、治療技術、設備投資、人との関わりなど、多岐に亘る範囲で変化を敏感に感じ取りながら、その時々の経営環境の変化に医院の方針が対応できているかどうかを確認することが必要です。
立地周辺における競争環境の変化

歯科医院の総数は、厚生労働省による平成28年度医療施設調査における68,940施設をピークに減少に転じていますが、歯科医師総数についても令和4年度医師・歯科医師・薬剤師統計において、前回令和2年度調査と比較して2,176名減少しました。男女の内訳をみると男性は2,676名減少の一方、女性は500名増加しています。医療施設の従事者別に見た場合に、増加したのは診療所の勤務者568名です。全体として女性歯科医師が増えつつありますが、多くは診療所に勤務する形で活躍していることがうかがえます。
今後の歯科医院周辺の環境として、引き続き新規開業歯科医院は開設されますが、その一方で高齢などを理由に閉院する歯科医院も多くみられることが考えられます。日本の人口が減少し、歯科医院数も歯科医師数も減少する中で、今後はより歯科医院の特長を打ち出した展開が必要になるのではないでしょうか。
一軒の歯科医院に複数の歯科医師が勤務することにより、それぞれの専門性を活かした取り組みが可能になります。一人の歯科医師ではすべてを網羅できなかったことが、異なる専門分野を持つ歯科医師が集まることにより、患者さんのより幅広い要望に応えることができます。
患者さんは、歯科医師の診療技術を拠り所として受診先を考えますから、さまざまな情報取得手段により、専門性の比較や専門分野の位置づけなどの詳細に亘る情報を得て判断することになるでしょう。今後は、数の競争から専門性や特長が注目される競争環境が進むと考えます。

労働環境に対するスタッフの変化

働き方改革など政府による労働環境の整備が進むにつれて、労働者の働く環境への関心も高くなり、それがスタッフの意思の変化として表れます。労働基準法の浸透に比例して、所定労働時間だけでなく、休日出勤や残業の取り扱いなどの労働時間は適切に管理されているか、健康保険や厚生年金保険など社会保険が整備されているかどうか、労働基準法どおりに有給休暇や産休、育休の取得が可能かといったこともスタッフは意識をしているため、その対応には重視して取り組む必要があります。労働環境の整備如何が、スタッフの採用活動にも大きく左右することから、就業規則により労務に関する医院の方針や考え方を明示することが必要ですし、スタッフの意識の変化に合わせて柔軟に対応できる準備も必要です。
医院の採用活動にも時おり関与する中での実感として、面接に訪れる応募者の多くは控えめな印象を受けます。それゆえ、入職したのちに実際勤務を開始してみても、自ら積極的に働きかけることが少ないまま退職を選択する、つまり短期間で職場を去ってしまう人材が多く感じられます。歯科医院の規模が大きくなり、スタッフも多数になると価値観の広がりも大きく、短期で退職をするスタッフも増加しますが、比較的規模が小さい歯科医院においては、現有スタッフには長く勤めてもらうことに力を注ぐことが必要でしょう。時代の流れに合わせて労務環境の見直しを図るなど、労働者の意識の変化に対応する体制づくりが大切です。

変化に合わせて院内環境を整備する

今後の日本の人口推移を見ますと、2040年に団塊ジュニアの世代が65歳を迎えることになり、労働力の中心を担う生産年齢人口(15~64歳人口)から外れることになります。そのときは65歳以上の人口が全人口の約35%になると予測されています。こうした現状に対応するために、国では70歳までの定年の引き上げや定年制の廃止、あるいは70歳まで継続して雇用を行うための再雇用制度や勤務延長制度の導入を努力義務とするなどを定めています。さらに2025年4月には、雇用している従業員が希望する場合には、65歳までの雇用機会を確保することが義務となることなどから、働ける人口を増やし経済成長を維持しようとする動きが顕著になっている現状です。
しかしその一方、若い世代の人口は減少の一途を辿っていますから、歯科医院のスタッフ採用活動の状況が好転する要素があまりないのが実際のところです。スタッフの確保が難しい状況になってから久しく、歯科助手や歯科受付については一般採用のほか人材紹介、派遣事業者など様々な媒体を通じて求人を出しても、そもそもこの業種で働こうとする人材が少ないのが現状です。そのため、スタッフ不足を補うための設備として、電子予約システムに始まり自動精算機や自動釣銭機なども導入が進んでいます。労務管理を容易にするために、タブレットによる勤怠入力や煩雑な残業、欠勤の集計を排除するシステムや、最近では材料や消耗品の在庫・発注管理をタブレットで行い、将来的には自動で発注できることを目指すシステムなども出てきています。
歯科医院に関与する様々な関係先などから、設備投資のための助成金などの情報を適切に得ながら、人材確保に代わる設備投資を検討することも重要な経営判断となります。

Advice
歯科医院の規模が大きくなると院内で共有するルールにより秩序が保たれ、労務環境や福利厚生なども充実し、組織として成熟することになりますが、大きな組織ゆえ、その時々の対応の遅れを招くことがないように情報収集を進めることが大切です。患者さんの意識の変化にも注意を払い、医院全体で柔軟に対応できるよう、院内のコミュニケーションやスタッフ間の連携なども良好な状態を維持し、歯科医院を取り巻く環境がどのように変化しても常に適合できることを心がけてください。

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