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第30回 (143号)

院長としてリーダーシップを発揮して難局を乗り越えるためのポイントとは?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座143

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

厳しさを増すばかりの歯科医院の経営環境において、院長としてリーダーシップを発揮して難局を乗り越えていきたいと思っています。どういったことをポイントとして取り組めばよいでしょうか。

A

リーダーシップを発揮するということは、さまざまな選択肢の中から最適と思われるものを選び、一定の方向へと推し進めていくことです。どのように人材を配し、どういった設備を計画し、どのように資金を調達するかを、ある一定の方針に基づいて決定していくことに他なりません。
物事を決定する際に根底をなすものが、診療方針であったり、経営方針であったりと呼ばれるもので、院長が目指す経営の在り方に大きく左右されるものです。

1医院の方針を明確に打ち出し、スタッフも方針を理解する

歯科医院の現場は、すべて意思決定の連続です。受付担当者が患者さんと接する際、どのような雰囲気を作っていくかといったことも、医院の方針に基づいて行っていくものです。金銭授受の方法、診療室への患者誘導の仕方、治療器具の準備方法など、すべてを医院の方針に沿って一つひとつ考える必要があります。
患者さんが診療所を後にするまで、不快感を与えることなく、十分に満足してもらうためにどうすればよいか、スタッフ全員が医院の方針を理解した上で接し方を考えるようにしなければなりません。私的な感情がつい表に出てしまうスタッフに対しては、時には厳しく接することも必要であり、スタッフからの批判を受けることも辞さない覚悟が必要です。
中には、強く指示を出すと辞めてしまう、反発されるという意識から、どうしてもスタッフに気を遣いすぎてしまう場面があります。少人数の組織では、一人欠けると診療に大きな影響が出ますし、ましてや次の採用がスムーズに行くとも限りません。したがって、スタッフに辞められてしまっては困るという意識が働くものです。
常に和気あいあいとした中で診療が行えることは理想かもしれませんが、長い時間を過ごす中で厳しく注意をしなければならない場面が出てきたときには、院長として毅然とした態度をとる必要があるのです。
その際、批判を恐れずどれだけ的確に指示を出せるかが、院長としての重要な役割です。どの場面で和やかな雰囲気を保つか、どういった場面では厳しく接するのかといったことも、すべて医院の方針に基づくものでなければならず、スタッフを統率し医院の方針に沿って経営を行っていくために、常々院長が考えておかなければならないことです。

2患者さん優先の考え方を徹底する

医療に限らず企業などでも、やり手と言われる人の行動をつぶさに見ていくと、すべて顧客を中心として自分を柔軟に適応させていることがわかります。歯科医院でも同じことが言えるでしょう。確固たる治療のプロセスがあったとしても、患者さんの理解が深まるように提案をし、患者さんが心から納得できる流れに基づいて説明を行うことが必要です。到達点が同じだとしても、自らの考え方に患者さんを添わせようとするのではなく、あくまでも患者さんの意向に合わせて話を進めていきます。
たとえば、「自費治療は高い」というのは、治療する側の思い込みに過ぎないのかもしれません。確かに、保険診療と比較すれば高額ですが、説明を受けた治療内容に対する費用を、高いと感じるか安いと感じるかは患者さん自身です。多少費用が高くなっても、徹底して高度な治療を望んでいるのかもしれません。それよりも、費用をかけずにとにかく早く終わらせてほしいと望んでいるのかもしれません。患者さんが期待しているのは、治療費に対して得られる結果の満足度です。問診票等を活用して、自費治療に関して説明が聞きたいという意思があれば、臆することなく積極的に説明をすることは、患者さんの意向を優先した対応ともいえるのです。
一言で患者さん優先と言っても、それをどのような形にしていくのかはさまざまです。来院する患者さんの特性に注目し、本当は何を求めているのかを敏感に察知して柔軟に対応していくことは、院長の強いリーダーシップのもとで進められていくことです。

3患者さんの固定化を図り、収入の安定化を目指す

「一度来院した患者さんは徹底して固定化を図る」といった強い気持ちが大切です。新患の場合には、何を見て、あるいは誰から聞いて医院のことを知り、どういったところに共感を得て来院したのかを情報収集しておきたいところです。ホームページを見たのか、外に出している看板を見て来院したのか、あるいは、誰かからの紹介を受けて来院してきたのかは大切な情報です。
初診時の問診票に、来院理由等の質問を含めて情報を得る他にも、診療準備中の歯科助手との会話の中、あるいは会計時の受付担当者との会話の中ででも触れることができます。地道に患者さんからの細かな情報を集めていくと、医院としてどういったことがアピールポイントとして患者さんに映っているのかがわかります。
紹介で来院する患者さんの場合は、治療が丁寧、説明がわかりやすい、スタッフが親切といったことが強みとなっているなど、どのように受け入れられているのかを知ることができます。
患者さんからの直接の情報を得て医院の特性がわかってくると、次にどういった対応をとるかを考えることができますし、医院の強みとして患者さんを引きつける原動力にもなります。そうして、少しずつでも固定化を図ることが大切です。そのためにも、いついかなるときでも十分な対応が取れるよう、スタッフに対して的確な指示を出し、日ごろから準備をしておくことが重要です。
また、患者さんのプライバシーに配慮した上で、可能な患者さんに関しては徹底した家族管理を進めることで、さらに固定化を図ることが可能です。家族丸抱えで口腔内の管理を行うことは、医院にとっては患者さんが固定化され収入が安定すること、一方、患者さんにとっては、家族に何か不安なことが生じた場合には、すぐに相談ができるという、医院、患者さん双方にとって非常にメリットのあることです。

患者さんの価値観に合わせて柔軟に対応していくことや、周辺の競争環境の変化をいち早く察知して対応策を練るためには、院長の的確な決断が重要になってきます。スタッフの意識、患者さんの期待、治療技術や治療機器の情報に気を配り、難局を乗り越えてください。

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