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歯科医院経営講座162
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
- Question
- スタッフの数が多くなってきたことから、仕事内容を細分化しそれぞれに役割を持たせる取り組みを行っています。スタッフそれぞれが担当する仕事に責任を持って取り組み、毎月ミーティングという形で報告を行うようにしています。毎月やるべきことが決まるため、スタッフ自身にも責任感が生まれ、モチベーションが高まるものと予想していましたが、半年を経過しても思っていたほどの効果が出ていません。それよりもむしろ、やらされている感が漂い、医院全体の雰囲気があまりよいものではなくなってきました。私としては、責任を持つことでお互いが刺激し合う環境を作りたいと思って始めたことですが、どのように改善を図ればよいでしょうか。
- Answer
- スタッフの人数が増えてきますと、それぞれが思いのまま仕事に取り組むと収拾がつかなくなりますから、組織としての統制を図ることが必須となります。しかし、それまでは阿吽の呼吸で行ってきた業務のやり方から、突然役割を分担し、それぞれに担当を持たせる方法にシフトしようとしても、なかなか一朝一夕に変わるものではありません。急な変化について来られなくなり、戸惑うことが多くなるものです。仕事のやり方を大きく変えるということは、医院の経営方針を転換するともいえる大変大きな取り組みです。業務遂行の変更に関しては、院長自らが強いリーダーシップを発揮し、スタッフが自信を持ってついてくることができるよう慎重に取り組むことが必要です。
役割を持たせるということ
それぞれが役割を持って業務を行うことは、人数が増えて煩雑になる業務を整理することにつながります。また、スタッフごとに目標を定めて仕事を進めることや、それぞれに責任を持つことができるため、医院の規模が大きくなるにつれて必要な取り組みです。
その取り組みによって、お互いが協力し合い、強い組織として機能することを目指すものです。
一方、役割分担に拘るあまり、自分の役割に関係のない業務に関しては無関心になったり、何か問題が起きた時に、責任転嫁が始まったりすることにもつながります。
業務の無駄をなくし、お互いが協力し合うチームとして機能することを目指して始めたはずの取り組みが、いつの間にかお互いを批判し合うことになり、コミュニケーション不足を生じて、思いがけず雰囲気の悪いものになってしまうことがあります。
それぞれに役割を持たせること自体は、自分の仕事に責任を持つという意味からも大変重要なことです。うまく機能すればとても働きやすい職場となります。
役割を持たせる際に注意すべき点としては、一人のスタッフに役割が集中してしまわないようにすることです。また、輪番制にして定期的に担当を変わることや、二人一組で取り組むようにして、お互いが話し合いながら進めていくことができる環境づくりが必要です。
行き詰まった時にフォローできるようにする
「あとは任せたよ」「よろしく頼むね」という言葉は、任せる側もあなたを信頼しているというメッセージとなりますし、任される側も信頼されていると感じられる言葉でもあります。
何も問題が起きない時はそれでうまくいくのですが、トラブルや業務上のミスが生じ、スタッフ同士でも仲たがいが生じるようになると、その場の対応の仕方によってはスタッフのモチベーションを下げることになります。
つまり、問題が生じた時に、スタッフをどれだけフォローできるかということです。
役割を持たせて任せるといっても、問題が生じた時にはすべて担当者の責任となるようでは、スタッフも思い切ったことができません。安心して物事に取り組むことができる土壌が必要です。
行き詰った時には手を差し伸べることを忘れてはなりませんし、今置かれている状況や気持ちの状態を聞いていくことが必要です。
任せたあとは任せきりにして、うまくいかなくなれば叱責する、という流れに陥らないよう、常にスタッフに目を向けておくことが必要です。
方針変更によってよい変化をイメージできるか
医院の取り組みを大きく変えるということは、医院の方針を変えるということでもあります。
常日頃から問題意識を持つ院長にとっては、様々なことを考えた末でようやく決めた取り組みであっても、ある日突然聞かされたスタッフにとっては、大きな驚きとともに、今後どうなっていくのだろうという不安が先に立つものです。
一人で考え、一人で決めようとすると、スタッフはついていけなくなるものですから、早い段階から少しずつ考えを伝えていくことも大切です。
それでも変化についていけず、変化を望まないスタッフが離れていくのは仕方がありません。
しかし、将来を見据えることができないまま、新たな責任が生じるだけでは、モチベーションを維持することが難しいことも確かです。
頑張った先の成果としては、給与を上げることがすべてではありません。業務の効率が上がれば、残業をなくして早く帰ることが可能になるでしょう。経費が削減され利益が生まれれば、賞与等で報いることもできるでしょう。食事会や研修旅行を行って活発なコミュニケーションを図ることもできます。
方針を転換するに至った経緯や、新たな取り組みを行うことがスタッフ自身にどのような影響や変化がおきるのかということを説明し、理解を得られるよう働きかけることが必要です。
- Advice
- 院長とスタッフの間には、問題意識の大きな違いがあることは確かです。院長が思うほどスタッフは将来への危機感を持っているものでもありません。それゆえに、院長の新たな取り組みが独りよがりにならないように進めていくことが必要です。スタッフも、目指す先に明確な将来像を描くことができれば積極的に取り組みを始めるものです。新たな取り組みによって自身の将来がどう変わっていくのかがイメージでき、心の豊かさを目指せるように導いていくことが大切です。
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