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歯科医院経営講座170
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
- Question
- 最近の当院への来院患者さんの動向をみてみると、新患数が少し減少傾向にあるようです。当院に対する患者さんのアンケート行うと、以前と比較すると少し厳しい意見も目立つようになってきました。人手不足の影響もあり、スタッフを十分に確保できないことや、適切に教育ができないことなど、原因はいろいろとありそうですが、医院を存続させていくために、患者さんへの対応をしっかりしなければならないと思っています。特に新患の確保に向けて取り組みを強化していきたいと思いますが、ポイントとなる点をご教示ください。
- Answer
- 近年の人材不足に伴う人員の配置不足や、スタッフを確保できたとしても十分に教育を受けられないことによる対応力の低下などをはじめとして、歯科医院の経営維持が人員の確保如何に左右されることが多い状況になっています。それに加えて、患者さんはこれまできめ細かいところまで対応してもらうことに慣れてきたため、人材不足などにより対応に綻びが出てくると、非常に目立つマイナスポイントとして患者さんには映ってしまう現状でもあるのでしょう。そうした中で新患の減少は大変な危機感が伴いますが、今一度新患の来院状況を明らかにし、対応を考えていくことが必要です。
紹介患者さんの割合に着目する
新患の内容をみると、誰かからの紹介により遠くからでも来院する患者さんと、近隣だからという理由などで特に紹介もなく来院する患者さんが混在します。紹介の有無の判断は患者さんの自己申告によるものですから、紹介なしとはいえ知人に評判を聞いて来院している場合もありますが、いずれにせよ、紹介を受けて来院する患者さんが増えるに越したことはありません。
安定的に患者さんを確保していくためには、新患の中での紹介のある患者さんの割合を、全体の4 割程度は確保し続けることができる体制を作りたいところです。
紹介患者さんの動向は、患者さんへの院長の関わり方が強く影響しますが、同時にスタッフが院長の考え方や意向を十分理解しているかどうかも影響します。つまり、医院全体が院長の考えに基づき、自立的に業務を行えているかどうかがポイントです。
そのためには、院長はスタッフの動きを細かく確認し、患者さんを第一に考える行動が不十分なスタッフには、繰り返し指導を行うなどの対応が必要です。
院長の意向や方針を無視したスタッフの言動に、患者さんが支持をすることは考えにくいものですから、常に院長がどういった考えで患者さんと接しようとしているのかを伝えていくことです。そして、院長を理解したスタッフが、患者さんに丁寧に接したときに感動が生まれ、次の患者さんへの紹介につながるものです。
よい内容を説明する
新患で患者さんが来院する場合は、概ね主訴をもって来院します。歯が痛い、歯が欠けた、歯が抜けたなど、何か問題を抱えて来院すると同時に、心に大きな不安を抱いています。大丈夫なのだろうか、元通りに治るのだろうか、と、今まで通りの普通の生活に戻ることができるかどうかが一番大きな不安ではないでしょうか。
その時に、患者さんがもっとも安心できるのは、よい内容を聞かせてもらえるときです。今は悪い状態ですが治療によりよくなりますよ、ということよりも、よい状態ですから治療も複雑にはなりません、と言われる方が、患者さんはよかったと安心できるのです。
当然、歯科医師として伝えなければならないこと、歯科医療行為を行う上で話さなければならないことは最重要項目ですが、患者さんにとってもっともよいことは何かを考えた場合、何よりも深刻な状態にならず安心できる状況であると説明してもらうことです。
そして、実際深刻な状況ではない場合、歯科医師も取り立てて説明するほどではないという判断からか、患者さんに対してはあまり詳しく説明せずに終わることが多いようです。しかし、患者さんにとって、一番聞きたいと思う安心の言葉を聞けないまま帰るのですから、そこに不完全燃焼な気持ちが残ることにもなります。問題のないよい状態のときほど、そのことを聞きたいと強く願っているものです。
意識して雰囲気を作る
歯科医院の雰囲気を決定するのは、まぎれもなく院長の力です。どれほど優秀なスタッフがいたとしても、どれだけ信頼できる勤務医がいたとしても、最終的には、院長が医院の方向性を決定することになります。また、そうでなければ院長として医院を維持していくことはできません。
それほど、院長の影響力は大きく、スタッフの士気にも直接関わるため、意識して医院の雰囲気を作ることを心がけておきたいものです。院長が自信に満ちた姿で患者さんに接していれば、スタッフにもその意識が広がり、スタッフはてきぱきとして明るい雰囲気が作られるものです。
一方、院長の意識があまり高くない場合は、スタッフの士気も高まりを見せず、普段の業務に対しても右往左往することになります。複数のスタッフを預かる院長であっても、時には体調がよくなかったり、気持が上がりきらなかったりすることがありますが、そこは気持ちを奮い立たせてスタッフの先頭に立ち続ける必要があります。
また、スタッフ同士で仕事の流れに慣れてしまい、全体的になれ合いのような雰囲気が生じることがありますが、そうなると、スタッフ自ら軌道修正することが難しくなります。時には院長が率先してスタッフに関与するようにし、時間の厳守や仕事の正確さなどを改めて指導することが必要です。
- Advice
- 歯科医院の安定的な継続において新患の来院は不可欠です。主訴を伴う一般的な治療のみならず、予防を目的とするメインテナンスにおいても、常に新患を獲得しながら継続的な関与を行っていくものですから、日々患者さんの動向には意識をしておくことが必要です。これから先は人口が減少し、安定的に新患を確保することはなかなか難しい状況ですが、まずは患者さんにとってよいことは何かを医院全体で検討し、具体的な取り組みへとつなげていきたいところです。常に明るい雰囲気があり、院内の環境もきれいに整った中で、院長から安心できる言葉をかけられれば、患者さんにとっては他に転院する理由はありません。新患を確保する取り組みは、院長とスタッフが一丸となって主体的に行うよう全力を注いでください。
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