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第69回 (182号)

事業承継について考えておくポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座182

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
歯科医院の事業承継を考えるにあたり、現診療所をどのように承継するかをまだ決めかねておりますが、最終的にどうするかについては、ある程度の方向性を持っておいた方がよいものでしょうか。承継先として子どもに引き継がせる場合や、他者に譲渡する場合があると思いますが、承継について考えておくポイントがあれば教えてください。
Answer
事業承継は、家族や親族も含めた第三者へ事業を永続的に委ねるということです。家族や親族に引き継ぐ場合は、日常的に承継に関する意思確認等が可能になるため、日々の診療を担いながら来るべき承継の時期に向けての準備は進めやすい環境にあります。一方、家族や親族以外の第三者に委ねる場合は、事業譲渡と同時に現在の診療所から離れることになりますから、メリットを十分に考えた承継時期の選定を行うことになります。院長自身が元気なうちは、いつでも対策を施すことができるという余裕があるため、具体的な承継先の選定や譲渡する金額の試算など、なかなか踏み込んだ内容についての論議にならないものですが、現在の医院を継続するのか閉院するのか、あるいは事業承継をいつ頃行おうとするのか、つまり後継に委ねる時期については、早い段階から考えておいてよいと思います。
親族承継の際は権限者を明確にする

親子での事業承継を検討する場合、後継者選びという問題はスムーズに解決できそうですが、承継の時期やタイミングに関しては双方でよく話し合う必要があります。特に、承継前後に一緒に診療を行う場合には、いつまで院長として主導権を保持するかを考えておく必要があります。診療の考え方や、患者さんへの対応方針に関するスタッフへの指示・命令系統については、いずれの指示のもとに統率を図るのかを明らかにしてください。権限移譲の時期を明確にした際には、スタッフに対して指示の仕組みが変わることを伝えて、院内の混乱が生じることを未然に防ぐように働きかけます。
また、診療方針に限らず、歯科医院を運営する上での重要点として、スタッフの採用など人員計画に関する人事の問題があります。歯科医師や歯科衛生士などの各業種の人員構成等の採用計画を、親子間のどちらの考えで立てるのか、実際に面接を行い採用決定するのはどちらの権限で行うのかを明確にすることです。
資金管理についても、収入に関する管理、各種契約の権限や支払いの管理などについて、いつまで現院長が行うかを検討しておきます。銀行預金口座が現院長名義の場合は、自由に管理を引き継ぐことが難しい状況ですので、税務上の対策と併せて事業承継の時期を見据えておきたいところです。

設備投資計画、資金計画を考える

現診療所を親子間で承継する場合は、診療用設備等に関しての投資計画を立てる必要があります。事業承継を意識し始めてから実際に承継するまでには比較的長い期間がかかることがありますが、その間に設備の老朽化が進むため、チェアやレントゲンなどの診療用設備機器に関しては、耐用年数の他、実際のこれまでの使用年数などを確認します。その上で、更新を迎える設備がどの程度あるかを把握し、どの時期にどの程度更新をするかを検討するようにします。
また、現在所有する設備の更新のみならず、新院長の診療方針によってはCTやマイクロスコープ、オペルームなど、新たな診療用設備の導入を必要とする場合があります。
広範囲にわたる設備投資を行う規模になれば、診療の動線や設備機器の配置なども検討し、さらには内装や外装に関しても診療方針に合致したものを選定するなど、大規模なリニューアルを施した新たな歯科医院として出発をすることが可能です。
さらに設備投資計画と併せて資金計画も検討するようにしてください。設備投資を現院長の資金から行うことができるのか、あるいは新院長名義で金融機関等から融資を受けて行うのかということです。融資の検討から実行までは時間を要することがありますので、金融機関等との関係づくりは欠かせないポイントです。

第三者への事業承継について

家族・親族による事業承継が困難と判断される場合は、紹介やM&Aなどにより第三者へ事業を譲渡することを検討します。院長としては、そのままの状態で事業継続が可能になることから、設備や在庫商品の処分費用あるいは、スタッフを解雇する際の補償費等が不要になることがメリットです。
その場で事業が継続されるということは、これまでの診療環境が維持されることになりますから、周辺地域の患者さんや歯科医院を取り囲む関係者にとっても大きなメリットを期待することができます。
第三者への譲渡によって歯科医院売却に対する売却益が得られますから、その後の一定額の生活資金を得られることもメリットです。一方、売却しようとする時期によってはうまく買い手が現れなかったり、想定した金額で売却できなかったりするなど、承継のタイミングや売却時に残っている歯科医院の価値などが事業承継の売買条件に影響することがあります。
院長自身としては、歯科医院の経営から離れることにより肉体的・精神的負担が軽減されると考えると、第三者への譲渡はデメリットの少ない承継形態であるといえます。少しでも競争力のあるうちに譲渡する方が、承継者も現れやすくメリットも大きくなるでしょう。

Advice
事業承継を進める際には院長の意思決定がすべてです。歯科医院を継続するのかあるいは閉院するのかという判断のほか、事業承継をする形態によっては、税務的な面での影響も考慮してその時期をどうするかという判断も必要です。M&A等による第三者への譲渡の場合は、業績が好調な時期に検討を始めたいところですし、事業承継をよい形で進めるためには、院長自身が健康で元気なうちから検討しておくことが大切です。条件やタイミングの良し悪しによっては、承継時期を前倒しすることも視野に入れて準備を進めるようにしてください。

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