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第73回 (186号)

産前産後休業や育児休業制度を活用する際のポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座185

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
当院でも、出産に合わせて産前産後休業や育児休業の取得を希望するスタッフが増えてきました。スタッフには長く勤めてもらいたいと考えていますし、法律の上でも産休・育休制度の遵守は必要だと理解しているのですが、当院は個人事業の経営形態であり、歯科医院の規模が大きくありませんので十分に対応できるかどうかが不安なところです。当院のような歯科医院において、産前産後休業や育児休業制度を活用するにあたり準備するべきことや、今後気をつけるべきポイントがあれば教えてください。
Answer
小規模歯科医院においては、産前産後休業や育児休業によって一時的にでもスタッフが減少する状況に対応することは、大変切実な問題といえるでしょう。それでも、少子化が進みスタッフの確保が極めて難しい状況の中で、育休を取得したのちに職場に戻ろうとするスタッフは貴重な人材です。育休の取得はもとより、実際に職場に復帰した際の対応やスタッフが望むような勤務体制を整備できるかどうか、つまりこれまでの医院の方針を変えてでもスタッフに残ってもらおうとする考えにシフトできるかどうかが重要なポイントです。急速に進む労働環境の整備に対して、少人数スタッフの職場で育休等へ対応する場合は一人ひとりの理解がより必要です。院長とスタッフ双方が意思疎通を十分に図り、スタッフが長く働くことができる職場づくりを進めてください。
育休取得を進めるために

デンタル・マネジメント・コンサルティングが独自に行う調査に基づくと、産前産後休業および育児休業にすでに対応している歯科医院は約4割との回答でした。収入規模別に見ますと、医院収入3千万円未満および3千万円台の歯科医院では25%、4~5千万円台では22%ですが、6~7千万円台では50%に上がり、8千万円以上になると63%まで比率が上がっています。収入規模が大きくなればスタッフも多くなるため、相互に協力しあって産休・育休への対応が可能になるということですが、規模が大きくない歯科医院においては積極的に制度に対応しようとする歯科医院が、まだ1/4から1/5程度であることがわかります。
制度に対応しようとする場合は、育休後の復職に対する院長の考え方や、育休中の業務を支える同僚スタッフの理解が大きく影響します。育児休業のほか、産前産後休業等に関しても積極的に活用してもよい職場であるということを打ち出せるかどうか、院長のメッセージとともにスタッフに対して改めて周知することがポイントです。子どもの体調不良による急な欠勤や、看護のためにやむを得ず休暇を取得する場合など、子どもを育てながら働くには様々な状況の変化があります。
一緒に働くスタッフが起こりうる変化に対して積極的に協力し合えるよう、医院の文化そのものを見直すよい機会かもしれません。

小規模歯科医院における長期雇用の可能性

厚生労働省でも、こうしたいわゆる中小企業のスタッフが育児休業から復帰する際のプランを公表しています。中小規模の事業所でも育児休業をスムーズに行うためにまとめられているものですが、仕事と育児を両立するための取り組みや、復職して継続的に働こうとするスタッフの意思を尊重して支えていこうとする取り組みです。
育休後の復帰を円滑に行うために、まずは職場と育休取得者双方が現在の状況や育休後の意向を把握することが大切です。同時に院内での取り組みとしては、一つの業務を複数の人が対応できるような業務の流れを作ることや、復帰後の短時間勤務に対応してシフトの見直しをするなど、勤務時間を固定することが難しい状況に対して柔軟に対応できる準備を進めてください。
育休の取得促進については、男性の育児休業取得促進も積極的に制度が整備されており、育休制度とは別に取得可能な「産後パパ育休」なども加わるなど、女性スタッフからだけではなく、勤務する男性スタッフからの育休取得希望も増えてくるものと思います。
ある資料によると、中小企業における、従業員が1~4名の職場では半数以上が、5~19人の職場でも3割以上が10年以上の勤続年数であるというデータがあります。
スタッフの事情に合わせた勤務時間を可能にできることや、生活と仕事の場が近く、スタッフ同士のコミュニケーション量を多く維持できるのは、地域に根ざした歯科医院の利点でもあります。
育休から復帰した際に、子育てをしながら働ける良好な環境整備に力を注ぐことは、雇用を長期に安定して維持するための近道といえるでしょう。

現職スタッフへはきめ細かい配慮を

育休制度を積極的に活用する際に気をつけるべき点として、少人数であっても、それぞれに働く環境が違えば価値観も異なりますから、育児休業の対象ではないスタッフに対する配慮が必要です。急な早退や遅刻あるいは欠勤をフォローするためには、どうしてもある程度の負担を強いることになりますから、それが単なる負担とならないよう、スタッフの感情に対してはきめ細かく対応するようにしてください。
院内においては、早い段階から育児休業の制度についてスタッフ間に周知するようにしてください。育休を取得する対象者だけが恩恵を受けるのではなく、出産後も安心して働くことができる職場として、スタッフの誰もが気兼ねなく活用できること、またそのために皆で協力して業務に携わる歯科医院であることの理解を促します。
また、一人のスタッフに対する業務負担が過度に大きくならないように、業務の分担についてもどのような方法があるかを検討してください。たとえば、歯科衛生士が行う業務の中で他のスタッフが担うことができるものはないか、あるいは受付担当者だけでなく他スタッフも診療アポイントの業務ができるようにシステムの導入を図れないかなど、人手が足りない場合は効率化への設備投資も必要です。

Advice
近年、歯科医院で働こうとする求職者の多くは、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)が完備されている職場を求めており、さらには産休や育休制度も抵抗なく利用できることを望むようになっています。それを実現できる職場として、スタッフの多い医療法人や大規模歯科医院に求職の希望が集中するということだと思いますが、規模がそれほど大きくない歯科医院であっても、スタッフには長く勤めてもらいたいという院長の考えにブレがなく、スタッフ間の理解や協力が得られるのであれば実行できることは多いものです。大所帯の職場よりも、一人ひとりとの関係を大切にした家族的な職場を望む求職者も多く存在することから、少しずつでも整備を進め、法令にも十分に対応できる職場環境を築いてください。

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