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第74回 (187号)

新規開業の際に参考にしたい歯科のトレンド

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座187

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
現在、医療法人で勤務しています。いずれは開業したいと考えていますが、開業後、どのような歯科医院を目指すべきかは、自分の中でまだ明確になっていません。勤務する歯科医院は、私の他に勤務医が1名と歯科衛生士、歯科助手、受付を合わせて、全体のスタッフ数は10名強です。開業後に自分がイメージする歯科医院がどのようなものになるか、今の歯科医院の環境や、また、どういう姿勢で開業を目指すことがよいのかを教えてください。
Answer
人口が減少し、少子高齢化が急速に進む環境においては、今後開業する歯科医院の経営環境にも大きな変化が訪れるかもしれません。現在は全体の歯科医院総数は少しずつ減少していますが、別の資料をみると個人、法人ともに1歯科医院あたりの収入は増加している状況です。全体の傾向として、収入が増加し規模が大きくなりつつあることを考えると、経営の仕組みを整え、組織としての取り組みが欠かせない状況であるといえるでしょう。複数のスタッフを雇用できる環境づくりのほか、設備投資を積極的に行うことができる資金計画などを見据えた上で、開業の方針を検討することが重要です。
歯科医院の組織変更が進んでいる

医療施設調査に基づく歯科医院数の推移をみると、平成28年の68,940軒をピークに減少に転じており、令和5年4月の最新のものでは67,310軒となっています。歯科医院が過剰であると言われた時期がありましたが、現在歯科医院総数は減少している状況です。
経営形態から歯科医院数をみると、個人事業の歯科医院数は平成16年の57,610軒から下がり続け、最新分では50,205軒まで減少している一方、医療法人の歯科医院は最新分で16,489軒まで増加し続けている状況です。
医療法人の歯科医院全体に占める比率は10年前の平成25年には17.3%だったものが、現在では24.5%まで上昇しています。この比率は近年24%強で横ばいに近づいていますが、M&Aによる合併や譲渡が進んでいくと、その数はもう少し増えてくる可能性があります。
つまり現状においては、院長の高齢等により個人歯科医院が閉院する、あるいは個人事業から医療法人への組織変更が進んできていることから、個人歯科医院が減少していると考えられます。
一方、医療法人の増加については、組織変更に加えてM&A等による事業譲渡や合併などが影響していると考えられますが、総じて収入規模が大きくなると法人化を検討し始めることが多いことも、個人と法人の比率が変わってきている要因と考えられます。
今後は、院長のマネジメント力がますます求められることになるでしょう。

増員増設による規模の拡大を見据えた計画を

歯科医院の収入規模がわかる資料に、2年に1度行われている医療経済実態調査があります。歯科医院数が最も多かった平成28年に近い、平成29年実施分の調査資料においては、個人診療所の歯科医院1軒あたりの平均収入は4,039万円でした。最新の資料は令和3年に実施されたものになりますが、個人診療所1軒当たりの収入は4,575万円となっています。医療法人でみると、平成29年実施分の収入は9,185万円でしたが令和3年実施分になると10,433万円へと推移しています。個人法人ともに約13%強の伸びです。
一方、経費の中で大きく占めるのが人件費ですが、本調査資料では給与費として集計されており、個人では29.2%、法人では51.6%を占めるに至っています。いずれも前回調査から増加していることから、収入が増加するにつれて人件費の比率も高くなっていくことが傾向として捉えることができます。収入に伴う増員に加えて、全国的な最低賃金の上昇に伴う給与単価の見直しや、社会保険の加入要件に応じた取り組みなども影響していると考えられます。
収入の増加は、設備投資の状況にも表れています。設置するチェア台数の平均が、医療法人においては4台から5台に増えていますが、患者さんの増加に伴い診療設備機器の増設の必要性があることを表しています。開業計画段階から、チェアの増設や新たな診療設備の増設を見据えた計画を検討してください。

人員計画、設備計画に重点を

診療内容の変化も、スタッフが増加する背景の一つとして影響していると考えられます。厚生労働省が毎年6月分のレセプトをもとに行う社会医療診療行為別統計調査において、歯科疾患管理料、歯科衛生実地指導料および診療情報提供料を含む「医学管理等」が、平成24年6月診査分10.9%から、最新の令和4年6月診査分では14.5%と10年で約3割増加しています。同じく10年前には「その他行為」の一行為に過ぎなかった在宅医療が独立した項目となり、全体の3.2%を占めるまでになっています。
こうした流れから、歯科医師や歯科衛生士を確保し医学管理等を充実させると同時に、高齢化に伴う通院困難な患者さんに対して行う訪問診療も重要な項目となっていることがわかります。歯科医師の臨床研修施設における研修項目でも訪問診療の位置づけが重要となっている点からも、訪問診療のための専属歯科医師、歯科衛生士の配置を検討することは、これからの患者さんの要望に応えるための大切な取り組みの一つとなるでしょう。
医学管理や訪問診療に対応することにより、歯科医師、歯科衛生士の人員の確保が不可欠になることと同時に、診療を行うためのチェアや設備等が必要となり、それが減価償却費やリース等に表れてくることになります。人材難が深刻な状況にある昨今ですが、人員計画および設備計画、それに伴う資金計画に重点を置いて検討を進めてください。

Advice
過去数年間に亘る推移をみても、歯科医院の経営環境は大きく変わってきていることがわかります。今後は、厚生労働省が強力に推し進めている医療DXの取り組みなどによって、さらにデジタル技術が進み、組織変革などが否応なく押し寄せてくるかもしれません。デジタル技術の進化が歯科医院に及ぼす影響は未知数ですが、個人事業や医療法人といった経営形態に関わらず、長期的な視点で柔軟に対応できる体制を目指してください。

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