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第76回 (189号)

新規スタッフ採用の際に取り組むべきポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座189

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
新卒や歯科医院での勤務経験者、未経験者を問わず、新たにスタッフの採用活動を行うにあたり、募集内容を考える上でのポイントや意識して取り組む点などはありますか? スタッフ一人を採用するために、さまざまな媒体を通じて求人を行いますが、我々が採用したいと考える人柄と、応募してくる人材とが早期に合致することを望んでいます。ご教示ください。
Answer
スタッフの募集を行う職種や時期により、応募数や面接まで進む求職者の人数などが大きく変わりますが、求職者はこれから働こうとする地域などから求人情報を絞り、職種や事業所の選定を行い応募へと進みます。歯科医院からすると、求人は新たなスタッフを探し選ぶ作業ではありますが、同時に求職者から選ばれる作業でもあることを念頭に入れておく必要があります。求職者が求めるものに合致した情報の提供を行い、その中で医院の魅力や働く条件などを的確に伝えているかなど、求職者の立場で作られた内容であることを意識して、数多ある求人情報の中から選ばれることを目指したいものです。
医院での仕事内容を的確に伝える

人材採用の支援を行う企業である(株)ONEが調査した資料によると、求職者がもっとも知りたいと思う情報の一番は「仕事内容」ということであり、回答者の59.1%がそれを求めています。
以下、企業情報37.0%、福利厚生32.8%、募集要項と具体的な働き方が22.2%(複数選択)と続いていますが、仕事の内容と具体的な働き方という実際の業務に関するものとしてみると、実に8割以上が、入職するとどのような仕事をするのか、どのように働くのかということを知りたいと思っていることがわかります。
求人を出してもなかなか応募がない、あるいは応募があったとしても医院に合致する求職者が現れないと感じているとすれば、求職者が求めているものを的確に提示できていない可能性があります。
歯科医院には、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯科助手、受付と様々な職種が存在していますが、歯科医師や歯科衛生士など有資格者の仕事一つをとってみても、歯科医院によって診療内容や働き方は異なるはずです。歯科助手や受付については、他にはない医院独自の業務を担う機会があるのではないでしょうか。
それぞれの歯科医院のノウハウに関わるものを提示するのは控えたとしても、入職するとどのような仕事に携わり、一日をどのように過ごすのかということをイメージできるように表現することが大切です。

人と人とのかかわりがより重要になる

AIによって生活のさまざまな局面が変わろうとする現在、AIに取って代わられるとされる職種、AIでは対応ができないとされる職種などさまざまな職種が存在する中ではありますが、「歯科医療」の治療そのものについてはAIでは対応できない分野ではないでしょうか。つまり、これからも変わることなく患者さんは歯科医院を訪れ、歯科医師によって治療が施される環境が維持される可能性が高いということです。また一方で、さらなる技術革新が進み、日常の生活様式が変わり、働き方の概念も大きく変わると、人々の働き方がこれまでとは想像もつかない形へと変わる可能性も否定できません。その状況では、変わらないことがむしろリスクになる可能性もあるということです。
働く場所の制約を受けず、パソコンやタブレットあるいはスマホひとつでどこでも仕事ができる環境が当たり前になり、正社員とパートタイムやアルバイトの区別もなくなりつつある労働環境の変化の中で、これから先、歯科医院で勤務することの魅力をどう伝えるかが重要になると考えます。
AIが進歩すればするほど、人と人との直接のかかわり方が大きく問われることになるでしょう。人に対してはより温かな対応が求められ、より丁寧なかかわりを必要とされるとき、歯科医院で働くスタッフは、より患者さんの力になりたいという高い意識を求められることになります。これまで以上に人と直接かかわる仕事の魅力、患者さんのために力を注ぐことの意味が問われることになるでしょう。

医院の魅力はなにか

求職者が求めるものに合わせて情報を発信するために、自医院の魅力を改めて認識することが必要ですが、現在勤務するスタッフから、医院の何に魅力を感じて働いているのか、どういった点がよいと思って働き続けているのかを聞くとよいでしょう。実際に働くスタッフが魅力を感じている内容ですから説得力があります。ミーティングにおいて、スタッフに唐突に医院の魅力は?と尋ねてもすぐには出てこないでしょうから、中心となる数名のスタッフがいくつか魅力を出していくようにすると、他のスタッフも追随して意見を出せるようになります。そうして出てきた医院の魅力をそれぞれ整理すると、医院独自の魅力的な姿が浮かび上がってくるでしょう。
職場の魅力を考えるとき、仕事の内容や医院の雰囲気、院内での働き方など、コストをかけずに院長やスタッフの積極的な取り組みによって創り出すことができる内容のものから、給与や福利厚生などの処遇に関することや院内規約など制度設計を必要とするものもあります。事業規模がそれほど大きくない歯科医院において、コストをかけて整備することが難しい場合は、厚生労働省や経済産業省などが行う助成金・補助金事業を活用することも一案です。院内の規約や規定を整備する資金を得ながらでも、働きやすい職場、働きがいのある職場づくりを目指すことの一つひとつが、医院の魅力として培われることにつながります。

Advice
採用情報サイトへの掲載や面接にかかる時間コストなどを考えると、スタッフ一人を採用するための費用は予想以上に大きくなります。それゆえ効率的に進めようとするあまり、医院や院長の思いが強くなり過ぎてしまい、提示する情報が漠然とした医院本位の内容になる場合があります。勤務するスタッフを巻き込み、それぞれの意見などを参考にすることや、厚生労働省などでも職場改善に向けた自己診断ツールなどが用意されていますので、それらを活用しながらできる内容から順次始めるとよいでしょう。求職者が必要とするものは何かという視点に立ち、より具体的に、より正確に医院の情報、魅力を整理して伝えることに力を注いでください。

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