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歯科医院経営講座194
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
- Question
- 来院患者を今後も維持するための取り組みを考えています。患者さんから支持され信頼される歯科医院として、今後どのような考え方が必要になるでしょうか。周りには住宅や店舗が多く、地域住民の生活環境の中にある歯科医院として、意識するべき、心掛けるべきポイントを教えてください。
- Answer
- 企業においては、顧客がどういうものを求め、それに対してどれぐらい応えることができたかを分析し、次の顧客獲得へとつなげる目的のために、VOC(Voice of Customer)という取り組みがあります。歯科医院においても同様に、患者さんの意向を確認し、自医院がそれに沿った展開をできているか、また、患者さんの声をもとに今後どのように方向性を定めていくかという取り組みは、大変重要なことであると考えます。歯科医院周辺の患者さんに対して、医院の何を知ってもらい、医院がどのように対応していくことができるか、また、そのために組織をどう創り上げるかということは、安定して歯科医院を維持するために力を入れて取り組みたいことの一つです。
オンラインサービスとの付き合い方
インスタグラムなどのオンラインコミュニケーションが存在感を増す時代ですが、厚生労働省が行う受療行動調査による「ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先」を見ると、「家族・友人・知人の口コミ(68.4%)」がもっとも多く、次いで「医療機関が発信するインターネットの情報(28.8%)」、「医療機関・行政機関以外が発信するインターネットの情報(SNS・電子掲示板・ブログの情報を含む)(18.1%)」と続きます。
10年前のデータでも、もっとも多い受療行動は「家族・友人・知人の口コミ(70.6%)」となっていますから、時代が変わり、年数が経過したとしても、患者さんとなる人が医療機関を選ぶ際に、信頼する情報源にあまり大きな変化がないことがわかります。
患者さんに訴求する媒体が、駅や電柱の看板だったものが、インターネットによるホームページへと変わり、今はSNSなどオンラインによる画像や映像を使った情報発信という流れですが、患者さんが歯科医院に何を求めているのかに合わせて、歯科医院の理念や方針を整備することが重要であることに変わりはありません。
患者さんからどのような治療内容や運営を期待されているかをつぶさに把握し、そこで得た内容に合わせる形でSNSなどを効果的に利用して、まずは患者さんに医院の存在や特徴を知ってもらうことが重要です。
歯科治療が労働集約的な業種であるがゆえ患者さん自身との直接の関わりが強く、家族・友人・知人などの意見はより大きな影響があります。SNSなどで交わされるコミュニケーションと、歯科医院の方針がしっかりとリンクすることを大切にしてください。
変わる患者さんにどう対応するか
歯科医院も年数が経過すると、患者さん自身が高齢化し、次第に通院が困難になる時期がやってきます。住宅地など、主な生活拠点に立地する歯科医院の場合、安定的な経営を図るためには若い世代の患者さんに来院してもらうことは重要ですが、高齢になり通院が困難になる患者さんの対応も併せて考えておく必要があります。
足が悪くなり、少しの段差を上ることが困難な患者さんに対して、バリアフリー化するなどの対策や、車いすで通れることを想定したスロープの設置、あるいは入り口で靴からスリッパに履き替えるために腰掛を用意して一旦座れるようにすること、さらには、スリッパをやめて靴のまま診療を受けられるように診療スタイルを変化することなど、医院がどう対応できるかを検討する必要があるでしょう。環境の変化に合わせて対策をすることが医院の新たな強みとなり、患者さんからの支持につながります。
来院する患者さんの推移から、各年代における来院患者数の増減傾向や、すべての来院患者数に占める割合などを分析し、どういった属性の患者さんに支持されているかを把握することが不可欠です。
住民基本台帳に基づく人口データを見ても、0歳から15歳未満の年少人口はますます減少し、65歳以上の老年人口は増加する一方の状況の中で、歯科医院が立地する環境において、今後どのような分野に力を入れていくかということも、患者さんを維持する上での重要なポイントになるでしょう。
患者さんを受け入れる風土、組織づくり

来院患者の分析をし、医院の特性に則した施策を行ったとしても、歯科医院そのものの風土や組織が、新たな患者さんを受け入れる体制でなければ患者さんが定着することに繋がりません。
院長とスタッフがともに患者さんに対する温かい働きかけを行うために、スタッフ全員が歯科医院の理念や方針を理解することが大切であり、それには院長の取り組み方が大きな影響力を持ちます。
スタッフが満足して働けることが積極的な組織や風土づくりにつながりますが、まず法令遵守による働く環境を整備することに力を注ぎます。就業規則を基にした院内のルールづくりを進めることや、有給休暇取得や社会保険など労働基準法に則した取り組みを行います。
次に、スタッフが意見を言いやすい雰囲気づくりを目指します。不満や愚痴を吐き出すための意見出しではなく、大切な職場、大事にしたい職場となるための積極的な意見を募ります。
最初はなかなか意見が出ないものですが、ミーティングを通じて院長の考え方や目指す方向を根気強く伝えます。スタッフが職場に対して前向きになり積極的な意見が出るようになれば、来院する患者さんの期待に応えるために、医院として何ができるかを考えるようにします。それらをもとに話し合いを続け、一人ひとりが活き活きと患者さんに向き合えることに力を注いでください。

- Advice
- 人の価値観が多様化すると同時に、患者さんが求める内容もとても幅広く多岐にわたります。一方で、一軒の歯科医院で患者さんすべての要望を満たすことは困難なことです。そのため、周辺歯科医院と比較した場合の自医院の位置づけや強み、特色などを積極的に患者さんに対して働きかけることが大切です。立地の優位性や医療設備の充実度が高いこと、あるいはスタッフ教育に力を入れていることなどがあれば、それら医院の強みとなる経営資源を存分に活用し、地域の特性や変化、期待に即した取り組みを意識してください。
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