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歯科医院経営講座188
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
- Question
- 採用面接の時間をより良いものするために、どういったことを心掛けるとよいでしょうか。求職者がどのような考えを持ち、歯科医院を希望してくるのか、求職者をどのような点で判断すればよいか、あるいは医院として考えておかなければならないことなどをご教示ください。
- Answer
- 面接を通じて採用したい人材と出会うためには、どういった人材を採用したいかという、医院が求めている人材を明確にする必要があります。院長が推し進める医院の方針をあらためて振り返り、どのような力を必要としているかによって、採用する人材は変わってくるはずです。面接時に医院の考え方を伝え、求職者と多くの言葉を交わすことによって、院長の考えや医院の方針に共感してくれる雰囲気かどうかを判断する材料を得られます。採用面接においては、求職者の経験や知識、あるいは性格特性を理解することを重視し、医院の情報提供にも力を入れて、求職者が安心して話ができる場を提供するように心がけてください。
転職経験がスキル向上に繋がるものではない
中長期的な人材開発政策の検討および、次代を担う若者が活躍できる環境整備に向けて、厚生労働省が設置する「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」の報告によれば、現在、若者世代は有効求人倍率が高く、職場を変えること、働く環境を変えることが容易に行われる一方で、転職する職業に対する情報収集や、自分がどのようなキャリアを築いていくかというキャリアプランを持たない者が多いということです。
つまり、転職を繰り返してはいるが、職業能力の向上につながっていない現状がある、と見ています。
「令和5年若年者雇用実態調査(厚生労働省)」によると、若年正社員の転職希望理由として、「賃金の条件が良い会社にかわりたい(59.9%)」「労働時間・休日・休暇の条件が良い会社にかわりたい(50.0%)」といった労働条件に関するものが高くなっており、「自分の技能・能力が活かせる会社にかわりたい(33.8%)」「責任のある仕事を任されたいから変わりたい(3.9%)」といった、自分のスキルやキャリア向上を目指す項目を大きく上回っています。
歯科医師、歯科衛生士においては、「歯科医療」という領域の中でより専門的な処置や治療、あるいは訪問診療等に携わり、自らの職種の幅や厚みを増したいと希望する求職者は多くみられます。しかし、歯科助手あるいは受付など専門資格を必須としない職種では、歯科への転職の理由を尋ねると、「飲食や販売はもうやり尽くしたから、これまでとまったく違う仕事がしたくて歯科業界を希望した」と答える求職者もいることからも、自らのキャリアアップよりは、より良い労働条件の職場を探して求職活動を行っている現状が伺えます。
過去に経験した事柄について尋ねる
若年者の意識がより良い労働条件を求めるものであったとしても、医院の考えにマッチした人材を見つけるために行う採用面接の時間は、もっとも大切にしたいところです。どういった考えで資格や免許を取得してきたのか、志望動機は自らの考えを反映したものかどうかなど、履歴書に書かれていることから何を読み解くかを準備しておく必要があります。
また、下に一例を記載する質問内容などから、求職者が過ごしてきた環境の中で経験してきたことに触れながら、人柄や人間性を推し量ります。
●「前職などで業務を遂行する際に、何か問題が生じたことがありますか?その問題に対してはどういう対応をしましたか?」➡課題解決のためにどのような対応をするか(してきたか)、的確な判断のもとに課題に向き合うことができるかを見ます。
●「新たな業務を担う際に、大切にしている習慣や行動はありますか?また、それをどう活かしてきましたか?」➡メモを取る、わからないことはその都度先輩スタッフに尋ねる、といった答えから、新しいことに意欲的に取り組もうとする姿勢があるかどうかを見ます。
●「スタッフ間でミーティングや話し合いを行う際、どのような発言を行いますか?」➡スタッフ間において積極的に発言をしようとするのかどうか、また、自分の意見を伝えようと努力してきたかどうかを見ます。
チームの一員として考え行動することができるか

医院の方針に合致する人材を求めるために採用活動を行うわけですが、最終的には、組織の一員としての行動ができるかどうか、つまり“組織をチームと考えることができるか”がポイントになります。自主的に考え行動できる人材であっても、単独行動や独りよがりの判断をする考え方では、組織の中でうまく機能しない可能性が高いといえるでしょう。飲食業や物販業などの他業種を経験してきたとしても、組織の一定のルールの中でどうコミュニケーションをとってきたか、他のスタッフとどのように業務連携してきたかということは、初めて歯科業界に携わろうとする際であっても共通する大切な要素です。
労働条件や処遇など自分の希望が先に立つばかりではなく、職場の雰囲気や考え方などにも意識が向けられる人材を探したいものです。チームの一員として行動できるかどうか、そのための協調性を持ち合わせているかどうかを注視してください。
組織の一員としてルールに則った行動を求めるには、事業所もスタッフが納得して働ける条件を備えた場所でなければなりません。採用面接は求職者について評価するだけのものではなく、事業所も組織として信頼できるかという評価を受ける場でもあります。求職者にとっては、当然ながら処遇面や待遇面の心配や不安がありますから、その点についての医院の仕組みや実態については丁寧に時間をかけて説明し、正しく情報を提供する必要があります。事業所として求職者の心配な点を解消しつつ、一方で、周囲への気配りや目配りができる人材かどうかをつぶさに見ていくようにします。

- Advice
- 採用面接は、求職者と事業所双方の情報提供の場でもあります。求職者の中には、考え方が優れ協調性もあることから、すぐにでも一員として働いてほしい人材がいますが、そのような人は、他のいくつかの採用面接においても同じような評価を得ます。他の歯科医院あるいは他業界の事業所などと採用が重なった際に職場条件として見劣りすることがないように、採用活動を行う際の前提として、労働環境の整備に力を入れ、働きやすい職場を準備することは必要なことです。先の「若年者雇用実態調査」においても、若年正社員の定着のために実施している対策として、「採用前の詳細な説明・情報提供」に力を入れる割合が、平成25年調査51.2%、平成30年調査52.0%、令和5年調査58.4%へと上昇し、高い比率となっています。より良い人材を選ぶと同時に、選ばれる視点からの採用面接の時間であることも大切にしてください。
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