会員登録

歯科医院経営講座 一覧を見る

第83回(196号)

スタッフの給与バランスをどう図るか

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

PDFダウンロード

Office

Business
Management

歯科医院経営講座196

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
年々、最低賃金が上がってきていることから、新卒採用の初任給を20,000円上げることにしましたが、2年目以降のスタッフの給与をどうするべきでしょうか。毎年の昇給は特に定めたものはなく、その時の状況に応じて、2,000~8,000円を昇給してきました。今後のことも含めて、注意すべきポイントなどがあればご教示ください。
Answer
まだ、それほど最低賃金が高くない時代においては、初任給の引き上げは周辺歯科医院との相場感や、他業種と比較して採用競争力を維持できる水準を重視して決めることができました。しかし、最低賃金が上がり、なおかつ年6%以上もの増加率で最低賃金が上昇すると、周辺環境とのバランスとは否応なく、法令遵守を最優先に対応せざるを得ない状況となってきています。今後の上昇を見据えて初任給を大幅に上げる事業所はありますが、新たな初任給を得る新卒スタッフと、これまでの初任給ベースの2年目以降のスタッフとの給与バランスをどう図るかは、今後の給与計画を考える上で重要なポイントです。初任給の増額に合わせて既存スタッフの給与を引き上げることは、全体の人件費が大きくなりますがスタッフ間の公平性は保たれます。一方、スタッフ間の多少の差は生じますが、条件に合致する一部スタッフのみ給与を引き上げる仕組みを取れば、人件費を抑えることに繋がります。最低賃金の上昇に対して大切なことは、法令遵守とともに一貫した労務管理の方向性を定めることです。
初任給を上げることの背景や影響

最低賃金は、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度額を定め、事業者はその最低賃金以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。年齢を問わず、たとえ学生のアルバイトであっても、この最低賃金以上の給与を設定する必要があります。2025年度の地域別最低賃金の全国加重平均は1,121円となりました。2015年度では798円でしたので、ほんの10年で最低賃金は1.4倍に上昇したことになります。月給に換算すると10年前は14万円弱が最低賃金水準ですから、周辺歯科医院と比較して少し低く設定していたとしても、月給相場が最低賃金を大きく上回っていたはずです。ところが、2025年には20万円に迫る勢いのため、これまで考えてきた給与相場に最低賃金が急激に追いついてきたことになります。
最低賃金の引き上げ率を見てみると、2016年から2022年まで対前年比3%台で推移していた(2020年は0.11%)ものが、2023年約4.48%、2024年約5.08%、2025年約6.26%と、ここ数年で急速に上がってきていることがわかります。例えば20万円の給与を昇給するとすれば、3% 6,000円前後の昇給だったものが、6%12,000円以上の昇給が必要となることから、最低賃金の引上げ率が昇給のアップ率を大きく上回り、金額で追いついてきたことになります。

全体の給与を引き上げることの是非

冒頭の質問に対する回答として、勤務するスタッフにとって公平性が保たれ、スタッフ間の給与に関する問題を最小限に抑えるためには、2年目以降の既存スタッフに対しても、初任給の増額と同額の20,000円を昇給することです。つまり、医院全体の給与水準を引き上げることです。
この場合、当然ながら社会保険料の負担増も含めた全体の人件費が大きくなります。在籍するスタッフ数が10名とすると、給与分だけで年間240万円の負担増となるほか、厚生年金保険の標準報酬月額が上がりますので、保険料の医院負担分も約9 %増額となることが考えられます。
総収入金額における人件費の比率を、平均的には25 %前後に抑えられるように考えたいところですが、今回の昇給分を加味した上で、人件費率がどこまで上がるかを検証する必要があります。25 %を大きく超えてしまう場合は、人件費以外の経費も含めた全体の経費管理を強化し所得率を維持できるように注力することや、勤務シフト上でスタッフの出勤が重複する時間帯があれば、それを解消する勤務調整を行い、人件費の高騰を抑える取り組みを行う必要があります。
最低賃金の上昇は来年以降も続く可能性が高く、また、スタッフのモチベーションを維持する意味からも、長い目で見た場合には、スタッフ全員の昇給を行うことが望ましい対応です。

一部スタッフを昇給することの影響
新卒とベテランを天秤にかける

初任給のみ20,000円の増額を行った場合、2年目から5年目くらいまでのスタッフの給与を追い越してしまう可能性があります。そこで、条件に見合う一部スタッフのみ昇給をし、その他は据え置くという対応方法もありますが、公平性を損なう点に注意してください。
経営面から考えると人件費の大きな負担増は切実な問題ですから、少しでも人件費を抑えたい気持ちになりますが、昇給を据え置かれたスタッフの不満のみならず、公平感のない経営方針に対する不信感を招くことにもつながりかねません。一部のスタッフのみ昇給することについては、スタッフ全体の納得を得られる規定を作成したり、スタッフを集めて説明を行うなど慎重に対応するようにしてください。
また、歯科医院においては、多くは歯科衛生士と歯科助手・受付の給与水準に差がありますが、最低賃金上昇の影響を受けやすいのは主に歯科助手・受付です。それを理由として、影響の少ない歯科衛生士の給与は据え置くという判断をする場合には、歯科衛生士のモチベーション維持に努めてください。
歯科助手の給与を昇給することは、医院の重要事項としてスタッフには明らかになりますが、給与を据え置かれることになる歯科衛生士に対しては合理的な説明を行います。昇給する金額を抑える、あるいは昇給時期を半年から1年程度遅らせるといった対応が可能ですが、昇給を完全に見送るという対応は公平性を維持する上では注意が必要です。

新卒とベテランを天秤にかける
Advice
スタッフの理解や同意を得るためには、給与格差を極力抑えながら、スタッフ間の公平性を保つことが長期的な視点からは大変重要です。とはいえ、今後も高い増加率で最低賃金が上昇すれば、人件費の極端な高騰が引き起こされ、歯科医院の経営存続が危ぶまれることにつながります。人件費だけでなく歯科医院全体の収支状況を確認し、収入増加を目指す対策のほか、経費については抑えるべき経費の見極めや管理方法などを見直す必要があります。事業年度ごとに経営計画の作成を進め、必要収入を把握するための損益分岐点収入額を確認すると同時に、徹底した業務の効率化を図り、スタッフの生産性を極限まで高める対策を行います。高水準となる給与を維持する一方で、生産効率を上げるにはどうすればよいかを、スタッフ一人ひとりが考えられる体制づくりが重要です。

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。