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第85回(198号)

歯科医院経営における長期的な計画策定の重要性

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座198

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
当院では、経営に関する明確な数字目標を立てることもなく、それでも日々を忙しく過ごしておりますが、少し収入が伸び悩んでいることや、スタッフが定着して増えつつあることから、計画的な取り組みを始めたいと考えるようになりました。あらためて計画を作成するにあたり、どのような観点から進めていけばよいかについてご教示ください。
Answer
計画に基づいた経営は、長期にわたり安定的に歯科医療を提供する上で、非常に大切な要素となります。さらに将来、医療法人化なども視野に入れるとすれば、医療法人の設立認可時において求められる、「永続的に診療所を維持、運営すること」や、「家計と経営を分離し、組織としての経営を進めることにより、診療所の安定を図ること」という観点からも、収入目標のみならず、経費目標にも目を向けた総合的な計画は、歯科医院経営を進める上での重要な指針となるでしょう。計画を作成した後は、月次、四半期、半期ごとに実績との差異分析を行い、1年~3年など、比較的長期にわたる計画を意識して、計画内容を存分に活かすことができる取り組みを進めてください。
現状および今後の方針に則した人員計画

計画を策定する上では、第一に歯科医院の収入に直接かかわる歯科医師、歯科衛生士についての実績を把握し、現状を正しく把握することが大切です。
歯科医師の現状を把握するとすれば、1日あたり、もしくは1か月あたりの収入状況や比率(保険診療、自費診療)、レセプト枚数、1レセプトあたりの単価などを把握します。
歯科衛生士であれば、歯科衛生士領域における保険診療、自費診療分の実績を集計することや、歯科衛生士ごとのアポイントの余裕度合いやチェアユニットの稼働率などについても把握し、計画に反映させる要素とします。
実際に計画に反映させる段階においては、歯科医師として次年度から3年後にどのような実績を目指すか、そのための方向性を決めるようにします。
保険診療と自費診療の比率をはじめとして、自費診療を伸ばそうと考える場合は、具体的な内容とそれに応じた研修の必要性などを考慮するようにします。
歯科衛生士の計画においては、予防のためのメインテナンス枠を拡大する余力があるかどうか、またどのようにメインテナンスの比率を高めていくかを考える際は、歯科医師との連携が必要です。さらに、歯科衛生士のスキル向上を図る上では、歯科医師と同様に目指す方向性に合致した研修などを考慮します。
歯科助手や受付担当者に関しては、歯科医師の人数や処置内容により左右されるため、診療方針に基づき必要人数を検討します。
医療DX化の推進により人員が削減傾向にはありますが、患者さんとのきめ細かい対応のほか、DX機器の管理等を行う人員なども含めて必要な人数を検討します。

収入規模や診療計画に基づく設備導入

次に設備に関する内容の検討ですが、チェアユニットの台数により収入計画に大きく影響を及ぼすことになります。たとえば、現在の収入規模を保有するチェアユニット台数で割り、チェアユニット1台あたりの月額収入を計算します。私どもデンタル・マネジメント・コンサルティングにおいて平均的な集計をした金額では1,599,114円となっています。
また、厚生労働省が2年ごとに行う「医療経済実態調査」(最新は2025年11月26日発表)においては、平均チェアユニット台数が個人診療所では3台、医療法人では5台と記載されており、それぞれの平均収入から計算すると、個人診療所1,449,444円、医療法人1,955,850円となっています。
こうした資料を基に医院の実績からチェアユニット1台あたりの収入を算出し、チェアユニット台数は何台を目安として考えるかを計画します。月額診療収入がいくらまでなら現状のチェアユニット1台で対応できるのか、収入規模がどの時点になればチェアユニットの増設を行うかを計画します。
また、収入規模だけでなくチェアユニットの使い方によっても必要台数は影響しますが、歯科医師と歯科衛生士がともに利用し合うのか、もしくは、歯科医師の治療専用チェアユニットと、歯科衛生士のメインテナンス専用チェアユニットを分けるのかということも検討するようにしてください。
その他、マイクロスコープや歯科用CTなどの高額設備機器を導入するか否か、導入する場合は、金融機関からの融資で行うのかリースを活用するのかということや、導入時期はチェアユニットの増設と同時に行うのか、あるいは時期をずらして自己資金を活用し、一時的な資金的負担の軽減を図りながら行うかなどを考えます。

収支と返済計画を考える
目標を共有し共に高みを目指して・・・

人員計画や設備計画に基づき、全体的な経費計画を行います。計画に応じた必要人員を把握した後に、昇給分、賞与分、および社会保険料等の法定福利費を含めた人件費率を確認します。人件費は、歯科医院におけるもっとも大きな固定費となりますが、25%前後を目安として、収入規模が大きくなれば30%くらいまでを上限として検討します。
材料薬品費や外注技工料などは原価率として考慮しますが、保険診療と自費診療の目標比率が大きく変わる場合は、今後の金額や比率の変動については注視しておいてください。
材料薬品費と外注技工料を合わせて15~17%を目安としたいところですが、物資の不足に伴い単価が上昇傾向にあるため、20%近くになっても許容できる計画を目指したいところです。
設備投資の計画によって減価償却費、リース料が増えることになりますが、適切な投資によって収入は増加し、事業収支が良好に保たれます。減価償却費と借入返済額とのバランスについては注意する必要がありますので、収支とともに返済予定も含めた資金計画を考えておく必要があります。
その他、研究図書費や研究開発費については、歯科医師、および歯科衛生士が今後取り組む診療内容やスキル獲得のために必要となる学会や研修会、講習会への参加費用を見積もります。実習を伴う研修会では参加費用が高額になることや、医院負担分の割合によっては経費負担が増加することを考慮しておきます。さらに、新患を獲得するための広告宣伝費となる、FacebookやInstagramなどSNSアプリを活用する場合の各広告料の水準や、Webの対策を行う場合の費用などを計上します。

目標を共有し共に高みを目指して・・・
Advice
長期的な計画策定においては、今後の将来的な構想をスタッフとも共有するようにしてください。診療所の形として新たに目指すものを共有し、医院全体で計画を推し進めていくことが一体感を生み、スタッフのモチベーション向上にもつながります。数年後には達成しなければならないという義務感ではなく、計画と目標を明確化することによって、意欲的に取り組むことができる雰囲気づくりを大切にしてください。最初から完璧な計画を立てようとするとスタッフも疲弊しますので、現状の把握から取り組みを進め、実績の推移との比較などから少しずつ精度を上げることを目指してください。

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