193号 SUMMER 目次を見る
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京都府向日市
株式会社カロス京都
代表取締役 広嶋 肇
近年、審美性や生体親和性に優れたオールセラミックレストレーションが臨床で普及するようになりました。CAD/CAMシステムや光学印象の進化により、ジルコニアをはじめとした高強度のセラミックス材料が開発されたこともオールセラミックレストレーションの広がりに拍車をかけています。ジルコニアは誕生からわずか約20年の間に急激な進化を遂げ、より透光性の高い素材が誕生することで、前歯部にもモノリシッククラウンやブリッジとして使用できるまでになってきました。弊社でもジルコニアを使ったオールセラミックスの需要は年々増える傾向にあります。
その一方で、二ケイ酸リチウムガラスを主成分としたガラスセラミックは、強度こそジルコニアには劣りますが、機能性と審美性を兼ね備えた歯科材料です。高い色調再現性を要求される前歯部などにおいては、患者満足度をより高める観点からも、常に一定の需要が存在します。本稿では「セラフュージョンPRESS」を使った製作ステップや操作上の留意点などを解説しながら、プレスセラミックスを成功に導くポイントについて、私なりの見解を述べてみたいと思います。
「セラフュージョンPRESS」は、ポーセレンファーネスとプレス機能を兼ね備えた加熱加圧成形器です。「セラフュージョンPRESS」を導入した理由として、まずコストパフォーマンスが抜群に良いこと。さらに、国内製造のため、タッチパネルの操作手順は日本語で表記されますし、万が一のトラブルにも迅速な対応が期待できるでしょう。シンプルで飽きのこないデザインにも惹かれて、試しに使ってみようと思ったことが導入のきっかけです。
導入して最初のうちは、初期設定として内蔵されているプログラムに従ってプレスしてみたところ、うまくいかないことが何度かありました。そのため、自分なりに設定値を変えてみるなどして、適した設定を探す必要がありました。幸い調整を行った後は問題なく意図したプレスを行えるようになりました。そこで、「これは使える」と判断して、今度は焼成専用の「セラフュージョンNX」を追加導入することにしました。本来、「セラフュージョンPRESS」だけで事足りるはずでしたが、弊社内でファーネスとしての使用頻度が増加したことから、1台では心もとなくなり、現在は2台使いで運用しているという状況です。
症例1 前歯部症例
症例1-1 まず最終形態をワックスアップし、フレームの厚みが最低でも0.8mmになるようにカットバックする。今ではロストワックス法でもCADデザインで行い、3Dプリンターで焼却できるレジンで造形を行っている。
症例1-2 スプルー線は直径3.2mmのレディキャスティングワックスを使用し、5mm程度の長さにする。できるだけマージン部の方向に一直線に向けるようにし、ワックスパターンの肉厚部に植立する。複数本を植立する場合はワックスパターンの高さが揃うように調整する。
症例1-3 リン酸塩系埋没材を使用し、気泡が入らないように埋没していく。弊社では先の細くなったシリコンを使用している。バイブレーターを当てすぎると粒子が沈殿し下層と上層で組成が変わり、クラックの原因になることがあるため、素早く操作する。
症例1-4 リングファーネス加熱時、ワックスが流れやすいように穴の開いている方を下に向けて置き、ガス抜きのために約30分経過後に穴の方を上向きに置いて加熱する。
症例1-5 プレススケジュールの設定により結果が左右される。弊社の設定は写真右の図の通りであるが、機種により多少の前後は見られるので、最適なスケジュールを探る必要がある。
症例1-6 予備のプランジャーを使用してマーキングする。ディスクでラインに沿ってカットし、サンドブラストで慎重に掘り出す。初めはプレス体が見えるところまでを4気圧で除去し、最後は2気圧以下に下げて除去を行う。
症例1-7 支台歯に適合させ、フレームの調整を行う。クラックが入る危険性があるため、ウェットティッシュなど用意して発熱を抑えながら慎重に行う。
症例1-8 プレステクニックでのレイヤリング法は非常に有用で色調再現性が高い。「セラフュージョンPRESS」を使用することにより、セラミック焼成において重要な温度管理が非常に精密で、均一な焼成が可能。
症例1-9 セット後の状態
使用感としては、タッチ式カラーディスプレイがとても分かりやすく、設定や操作が直感的に行えます。初心者の方でも簡便に扱えますし、ベテランの方にとっても満足いく仕上がりを提供してくれると思います。
基本的にはマニュアル通りの操作手順で問題ないと思いますが、細かい部分で言うと、多数歯ケースの場合には、埋没の際にワックスパターンの高さが揃うようにすること。また、スプルー線の直径は3~3.5mm、長さは5~6mm程度にすること。さらに、埋没材を加熱した際に生成されるガスを抜く工程が必要です。鋳型内にガスが残っていると、ガス鋳巣やへこみなどの鋳造欠陥が発生する恐れがあります。最初はワックスが流れやすいように穴が開いている方を下に向けますが、30分ほど経ったら、それを上向けにして係留するとガスが抜けやすくなります。操作上の大きな留意点としては、そんなところでしょうか。最も重要なポイントはファーネスの設定だと思います。この設定さえクリアすれば、あとはファーネスに入れてプレスを行うだけで、きれいに仕上がります。
詳しい製作工程と留意点は、本文下に写真とともにステップで掲載していますので、そちらを参照いただければと思います。高機能と高いコストパフォーマンスの両立を実現した「セラフュージョンPRESS」と、弊社が誇る色調再現技術を融合させ、今後とも高品質な技工製品を提供できるよう努めていきたいと考えています。
症例2 前歯部ベニア症例
症例2-1 ベニアの場合も同様、今ではデジタルワックスアップで最終形態を作製している。
症例2-2 プレスを行い、調整後ステイン法にて仕上げた状態
症例2-3 セット後の状態
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