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193号 SUMMER 目次を見る

Clinical Report

SPIインプラントとBonarc®を用いた臼歯部における抜歯後即時インプラント埋入

医療法人社団 奥田歯科医院 理事長 奥田 浩規/歯科技工士 久我 裕紀

キーワード:臼歯部における抜歯後即時インプラント埋入/理想的なエマージェンスプロファイル設計

目 次

はじめに

SPIイニセルインプラントにおいて、特に臨床的に有用性を感じている点は、ハイブリッドデザインである。
カラー部である機械研磨面はティッシュレベルの機能性を有しており、バクテリアからのバリアとなっていることは周知のことである。さらにはインプラント体とアバットメントは、インターナルヘックスとエクスターナル補強リングが付与されたダブルロックコネクションとなっているためマイクロムーブメントが抑制され側方応力に強く、優れた辺縁封鎖性と応力耐性をもつ。このEVERGUARD®Connectionが細菌侵入を最小限に抑制している。
また、特徴的なカラー部(TISSUEGUARD® Collar)のラインナップは0.5mmから2.5mmまでのサイズがあり、歯肉の厚みによって使い分けることができる。
筆者らは、基本的には1.0mmのカラー部を使用することが多い。その理由は補綴物を作製する上で優位なためである。理想的なエマージェンスプロファイルを考えると、プラットフォームから約1mmはストレートに立ち上げ、軟組織の厚みによってマージン付近まで移行的にすることが望ましいとされている1, 2)
このカラー部の1mmが理想的なエマージェンスプロファイル作製に必要なプラットフォームからストレートに立ち上がる1mmに相当し、上記で述べた生物学的・機能的特性をも兼ね備えるため有用性を感じている。
そして、アクセスホールの直径が小さく、臼歯部の咬合接触を考える上では理想的に補綴物を作製しやすい。

臼歯部における抜歯後即時インプラント埋入に対する考え

2000年に、KanがIIP(immediate implant placement)の考えを提唱3)してから、20年以上の月日が経ち、あらゆる研究と臨床データが発表され、1歯における抜歯後即時インプラント埋入においては前歯・臼歯を問わず、信頼のおける治療になってきている。
Ragucciらのシステマティックレビューからも、臼歯部における抜歯後即時インプラント埋入後のマージナルボーンロスが1.29mm±0.24mmであり、Success Rateが93.3%と十分な結果が立証されている4)
また、臼歯部におけるインプラント荷重においては1歯から複数歯によって考えは異なり、骨の状態・インプラント体とのトルクの関係によっても左右される。
筆者らは、少数歯における大臼歯の抜歯後即時埋入においては、基本的には待時荷重を行うことが多い5)

治療概要

患者は76歳の男性。 の再治療を繰り返しており、インプラント治療の希望で来院された。 のクラウン・コアを除去したところ、髄床底には大きなパーフォレーションがあり、根尖病変も認められた(図1, 2)。
予知性が低いことから保存不可能と診断し、インプラント治療を行うこととなった。
髄床底には6mmのポケットを認めたものの、周囲組織は健全であり、髄床底下には十分な骨が存在しており、隣在歯のアタッチメントロスもなく抜歯後即時インプラント埋入の適応であると診断した。

  • [写真] 初診時とクラウン除去時の咬合面観
    図1  初診時とクラウン除去時の咬合面観
  • [写真] 初診時のデンタルX線写真とCBCT
    図2  初診時のデンタルX線写真とCBCT。髄床底には大きなパーフォレーションが認められ、近心根には根尖病変が認められる。(モリタ製作所 Veraviewepocs 3Dfにて撮影)

実際の治療

まずインプラントポジションの設計を事前に行う(図3)。デジタルデザインにて理想的なクラウン形態を作製し、補綴主導にて定位置にインプラントポジションを設計する。深度は機械研磨のカラー部を含めて最終補綴装置のマージンから約4mm下方に、インプラント-天然歯間距離も約1.5mm以上離して設計した。理想的なエマージェンスプロファイルを作製するために、インプラントポジション設計時からエマージェンスアングルも考慮して計画した。
実際の外科治療に入る。抜歯を行う前にドリリングを行い、起始点をつける(図4, 5)。その後、ドリリングを進め、抜歯を行いインプラント体の埋入を行う。インプラント体のポジションが定位置に埋入されているかの確認を行う(図68)。
インプラント体と周囲骨とのギャップにはBonarcを填入し、非吸収性メンブレンを用いてナイロン縫合糸にてHidden X sutureを行った(図911)。
埋入4か月の治癒を待った後にインテグレーションを確認後、IOSにてスキャンを行いプロビジョナルレストレーションを作製した(図13, 14)。
大臼歯に相応するインプラントサイズと定位置にインプラント体が埋入されたため、適正なエマージェンスプロファイル形態を作製することが可能となった(図15)。
プロビジョナルレストレーションを装着し、清掃性・機能性に問題ないことを確認後、最終補綴装置の製作を行った(図16, 17)。

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