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接着材不要のアタッチメント作製専用レジン「SA アタッチメント for アライナー」の特長
キーワード:アタッチメント作製専用フロアブルレジン/ボンディング材不要
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 「SA アタッチメント for アライナー」を用いたアタッチメント作製方法
- ≫ 「SA アタッチメント for アライナー」の特長
- ≫ 自己接着技術
- ≫ 臨床メリット
- ≫ 本品を使用する際の注意点
- ≫ まとめ
はじめに
近年、矯正歯科においては、従来一般的であったワイヤー矯正に加え、比較的装置が目立ちにくいクリアアライナー型矯正装置の使用が選択肢の一つとなりつつある。クリアアライナー型矯正装置を用いた矯正処置は、歯牙の移動を補助する目的で、アタッチメントと呼ばれる突起物をレジンで歯面に作製することがある。アタッチメントは一歯のみならず複数歯に作製されることも多く、また、歯面に接着させるためボンディング材の適用操作を行う必要があり、ステップ数が多く手間と時間を要する。
今回、クラレノリタケデンタル株式会社は、上記課題を解決する材料としてボンディング材不要で歯面に接着するアタッチメント作製専用フロアブルレジン「SA アタッチメント for アライナー」を開発した(図1)。本品は、当社オリジナルのリン酸エステル系モノマー「MDP」および親水性アミド系モノマーを含有する、新しいコンセプトの自己接着型材料である。以下で本品の詳細について紹介したい。
「SA アタッチメント for アライナー」を用いたアタッチメント作製方法
本品を用いたアタッチメント作製方法と、ボンディング材と充填修復用コンポジットレジンを用いた方法を比較する(図2)。アタッチメントを作製する被着面は未切削のエナメル質であるため、十分に清掃後、リン酸エッチング処理を行い粗造化する。その後、一般的な光重合型の1液ボンディング材を使用する場合は、ボンディング材の塗布、エアーブローによる溶媒除去、光照射による重合硬化を行う。アタッチメントは同時に複数歯に作製されるケースも多く、上記の適用操作は手間と時間を要する。また、臼歯部等の防湿が難しい箇所では、ボンディング材適用操作中の被着面の汚染が接着阻害につながり、アタッチメント脱落のリスクを高める。一方、本品を用いると、リン酸エッチング処理後、ボンディング材適用操作が不要であり、非常に簡便な術式でこれらの課題を解決することができる。
図1 「SA アタッチメント for アライナー」-
図2 アタッチメント作製方法
上:ボンディング材+コンポジットレジン、下:SA アタッチメント for アライナー
「SA アタッチメント for アライナー」の特長
本品の特長を以下に示す。
- ・ ボンディング材不要でクイックなワークフロー
- ・ アタッチメントトレーに流し込みやすく、とどまるペースト性状
- ・ 幅広い色調をカバーするUシェード
- ・ 除去時に歯質と識別しやすい適度な蛍光性
- ・ 耐吸水性
自己接着技術
コンポジットレジンに含まれる成分は通常、モノマー、フィラー、重合触媒、顔料である。充填修復用コンポジットレジンでは耐吸水性や強度、硬化性を担保するため、疎水性モノマーが採用されることが多い。しかしながら本品では、ボンディング材を使用せずに直接歯面に接着させるため、歯質と化学的に接着する接着性モノマーと歯質へのなじみを向上させる親水性モノマーを採用する必要があった。
そこで本品は、当社独自の合成・精製技術によって製造された高純度のリン酸エステル系モノマー「MDP」および親水性アミド系モノマーを採用した。本品のエナメル質への自己接着はこれら「MDP」、親水性アミド系モノマーにより以下の3つのポイントで達成される(図3)。
①エッチングによる機械的嵌合
②親水性アミド系モノマーによる優れた歯質へのなじみと重合硬化性の両立③接着性モノマー「MDP」による歯質表面(ハイドロキシアパタイト)への化学的結合
「MDP」および親水性アミド系モノマーは当社1液ボンディング材「クリアフィル ユニバーサルボンド Quick ER」や「クリアフィル ユニバーサルボンド Quick 2」においても採用されており、当該製品における塗布後待ち時間なしで高接着を実現した技術である。
本品はボンディング材が不要であるにもかかわらず、リン酸エッチング後のエナメル質に対しボンディング材を使用した際と同程度の高い接着力を示す。また、本品から「MDP」および親水性アミド系モノマーを除いた試作品では初期接着強さ、接着耐久性ともに有意に低かったことから、これらモノマーの有用性が示されている(図4)。さらに本品は親水性モノマーを含有しているにもかかわらず、充填修復用コンポジットレジンと同等の耐吸水性や耐摩耗性を有する。
図3 「SA アタッチメント for アライナー」の自己接着技術
図4 エナメル質に対するせん断接着強さ
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