193号 SUMMER 目次を見る
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- ≫ 症例1 正中離開症例
- ≫ 症例2 空隙歯列症例
- ≫ 症例3 翼状捻転症例
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大阪府高槻市
かすや歯科クリニック
院長 加須屋 真
もともと口腔外科を得意としていた私が矯正治療に興味を持つようになったのには、理由がありました。勤務医時代に患者さんから「むし歯や歯周病だけでなく、歯並びも治して欲しい」「1つのクリニックで歯と歯並びの両方を治療して欲しい」「歯並びを治したいけど費用が高くて踏み出せない」といった声を頻繁に耳にしたのです。
そのため、私が開業したら、患者さんのそうした要望や期待に何とかして応えたいと思っていました。矯正治療に関する専門的な知識やスキルを持たない一般開業医でも始められる矯正治療はないのか。あるいは、一般開業医だからこそ始められる矯正治療とはどんな方法なのか。それを考える中で、「非抜歯」「アライナー」という2つのキーワードが思い浮かびました。私は勤務医時代の経験から「矯正治療に関心はあるけど抜歯はしたくない」という多くのニーズを掴んでいました。そして、それを可能にする矯正治療を探していたところ、「インビザラインGo」に出会ったのです。
「インビザライン Go」を導入することで、口腔外科やインプラント治療に「矯正治療」という新たなオプションが加わり、治療の幅が大きく広がりました。
私の場合は、特別なトレーニングは行っていません。独学で勉強し、とにかく実践あるのみと思い、治療を開始しました。「インビザライン Go」を継続して行っていく上で重要なポイントは、いかに多くの症例数を経験するかに尽きると思います。う蝕や歯周病の治療法は誰しもが学びますが、「インビザライン Go」の場合、すべてがトライアンドエラーの繰り返しです。果たしてこのケースが「インビザラインGo」の適応症か否かの判断は、これまでどれだけ多くの症例をこなしてきたかという経験値がモノを言います。私の場合、「これは適応症じゃないな」と思える症例でも、患者さんから「どうしても抜歯したくないので『インビザライン Go』でお願いします」という要望があれば、何とか工夫して対応しようと試みています。多少チャレンジングではありますが、そうした取り組みがスキルアップにも繋がっていくと考えています。
最初に取り組む症例としては、今回取り上げた「正中離開」「空隙歯列」「翼状捻転」の3つがいいでしょう。経験を積んでいくことで、上記のような症例だけでなく、前歯部インプラント治療のスペースメイキングや、前歯部補綴前矯正などにも対応できるようになっていくと思います。
当院における「インビザライン Go」のワークフローを簡単にご説明しましょう。初診時は基本的にコンサルテーションのみを行います。次回来院時にクリーニングを行い、口腔内写真やシリコン印象による咬合採得を行います。それから2週間ほどすると、インビザライン・ジャパン社からクリンチェックと呼ばれる3Dシミュレーションによる治療計画が送られてきます。3回目の来院時に、そのクリンチェックをもとにカウンセリングを行い、患者さんとともに治療計画を立てていきます。ここでは、アライナーの数や歯の移動量、アタッチメントの位置、IPRや削合量、咬合関係などを確認。予測実現性の高いゴールを再現することができます。この提案に患者さんが納得されたら、アライナーを発注します。その後はおよそ1か月に1回の間隔でモニタリングや保定、アライナーの適合を確認し、必要であればIPRを行い調整します。また、様々な原因から計画通りに進行しない場合、追加アライナーを発注することもあります。こうして約半年ほどで治療を終了します。
今後、アライナー矯正治療のニーズはますます高まることが予想されます。そうした患者さんの要望や期待に応えられるよう、研鑽を積んでいきたいと考えています。
症例1 正中離開症例
症例1-1 2023年4月12日:10代後半女性。初診時。前歯に隙間があるので、口を開けて笑えないという主訴で来院。矯正歯科に相談したところ、抜歯矯正を勧められ、当院を受診。
症例1-2 2023年8月16日:治療開始から2か月が経過。正中のスペースが徐々に狭くなっていくことに満足されていた。
症例1-3 2023年9月29日
症例1-4 2024年1月9日
症例2 空隙歯列症例
症例2-1 2022年2月2日:29歳女性。上顎の歯間部の隙間が気になるという主訴で来院。
症例2-2 2022年6月1日:いくつかのアライナーを装着することで短期間で改善傾向が見られる。
症例2-3 2022年6月20日:この患者さんはアタッチメントを装着したが、アタッチメントが脱離した場合に、すぐに来院できない遠方の患者さんなどでは装着しないケースもある。
症例2-4 2022年8月2日:最初の症例としては、正中離開より空隙歯列の方が取り組みやすいかもしれない。ただ、症例数は正中離開ほど多くはない。
症例3 翼状捻転症例
症例3-1 2022年3月14日:20歳女性。前歯を削らずに歯並びを治して欲しいという主訴で来院。
症例3-2 2022年3月14日:治療前の口蓋側の状態
症例3-3 2022年8月31日:治療開始から5か月経過後の口蓋側の状態
症例3-4 2022年10月31日:治療開始から7か月経過後の状態
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