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第33回(140号)

ホスピタリティの表現

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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ホスピタリティの表現

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

皆さんは、普段医院の掃除をどのようにしていますか。
先日、ある皮膚科に行ったときのことです。洗面所のコーナーを広く取っているのですが、そのエリアに入って驚きました。洗面台の周りは水が飛び跳ね、ゴミ箱もティッシュやコットンがあふれていました。
最近の皮膚科は美容関係の施術も行っているようで、治療の前後に洗面台で化粧をしたり、落としたりする患者さんも多くいます。その日は、アトピーやにきび、皮膚に関する患者さんらしき方々に混じって、美容関係の患者さんも多く、混雑していたからでしょうか。
あまりにも、洗面台の周り、トイレ周りが汚れていて一瞬ひるみました。よくみると、洗面台の上だけでなく、そこに置かれている椅子もしみが目立っていました。
この医院のスタッフは、この状態をどのように考えているのでしょうか。医療を行う場とはとても考えられない状況でした。
そういえば、同じような場面を目にしたことがあります。
スーパーやショッピングセンターのトイレです。いつ掃除をしているのか、と疑いたくなるぐらい汚れているトイレに遭遇し、2度と入りたくないと思ったことがあります。
よくサービス業のマニュアル本などを読みますと、サービスの基本として“まずトイレを徹底的にきれいにすること”と書かれています。
チェーン店など、お客さんの出入りが多い店などで、マニュアルがある店にはトイレの壁に、トイレ掃除をした時間を記入したり、チェックをする表が貼られていることがあります。しかし、チェックが入っているにもかかわらず、なんだか汚れていてゴミも散乱していて、本当に掃除をしているのだろうかと疑いたくなることがあります。
昔読んだ本ですが、ホテルオークラの元専務取締役だった橋本保雄氏の著書に書かれていたことを思い出しました。「施設をきれいに保つ一つの秘訣は、いつもぴかぴかに磨き上げておくこと。きれいにしてある場所というのは心理的に汚しにくいもの。逆も真なりで、ゴミが落ちていたり汚れていると、次の人も汚すことに躊躇せず、さらに汚れていくという」だそうです。確かにそうかもしれません。
ふつうゴミ一つ落ちていない場所に、ゴミを落とすことは気が引けます。しかし、もともと汚れていたり、ゴミが散らかっていると次の人は少々汚れても、ゴミを落としても気にも留めなくなってしまうということです。
橋本氏は駆け出しのころ、当時勤めていたホテルのあまりきれいではなかったトイレを徹底的に磨いたそうです。すると不思議なことにトイレの汚れはだんだん少なくなっていったとのことです。きれいな場所ほど汚されにくいということを身をもって体験されたのです。
私が見た皮膚科、ショッピングセンター、スーパーの洗面所も、もともとオープンした当初はきれいな施設だったと思います。ただ毎日多くの人が使い、汚れたあと、どう掃除していたかが問題です。ただ、決められているから…ということで、四角いテーブルを丸く拭くように適当に雑巾をかけ、ゴミも適当にかき集めただけで、“掃除終了”とチェックしていたのではないでしょうか。

掃除も工夫して行うことが大事です。汚れているところは念入りに磨く、汚れが取れなければ別の洗剤や掃除道具を試してみる…など、考えて掃除をすることが必要です。
また、決められた時間でなくとも、お客さんの出入りが多い日には、チェックの回数を増やし、常にきれいな状態を保てるように意識することが大切だと思います。
毎日過ごしている場所は、汚れていても意外に気づかなくなってしまうものです。壁や椅子のしみも模様のように感じて気にならなくなるかもしれません。マニュアルで決められているから掃除するのではなく、お客さんや患者さんを気持ちよく迎えるために掃除する、いつでも気持ち良く使っていただけるように気を配ってほしいものです。
トイレがきれいな店は他の場所もきれいで、サービスも良いといわれます。逆に、トイレが汚れていると、他の場所もいい加減なのだと思います。これが医療の場所だとなおさらです。トイレ周りの清掃に気が配られていないということは、治療の場もいい加減なのではないだろうか…と想像してしまいます。
常にお客さん、患者さんの視線で、厳しくチェックしていく意識を持つことが大切です。
満足度の高いサービス業が掃除を徹底的にするというのは、このような“顧客目線”を育てることを目的としているのです。
言葉遣いや身だしなみを整えることももちろん大切ですが、その前にお客さんや患者さんをお迎えする場をきれいに保っていく心がけを持ち、その気持ち=ホスピタリティを掃除という作業を通して育てていただきたいと思います。
皆さんの日々の掃除は考えて取り組んでいますか?いつのまにか、汚れていて気づかなくなっている部分がないか、目線を変えて見回してみましょう。

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