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スタッフ全員が参加する医院経営〜その4〜信頼感と安心感を与える
株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子
前回は患者さんとのコミュニケーションにおいてのタブレット端末活用についてお話しました。タブレット端末等の説明ツールは、上手に使えば患者さんに商品・治療方法を説明する際には大変便利に活用できますね。今回は、よりコミュニケーションを効果的にするための要素についてお話します。
患者さんの緊張感をほぐしてリラックスできる空間、位置・距離感も大切な要素です。そのために待合室の家具、壁の色などに配慮している医院は多くなってきていますね。
また治療時にしっかりと説明をする場合には、患者さんが寝ている状態で上から話すと、どうしても患者さんは受身となり、聞きたいことがあってもなかなか質問しにくい状況になります。
チェアを起こし、座っていただいた状態にしたうえで、説明する側も座り、できるだけ目線の高さが合うような位置関係で話を進めると患者さんも話がしやすい状態になります。特に自費治療についての説明や方針を話す場合には、個室を用意したり、パーティションで、声が別の患者さんに聞こえにくくするなどの、プライバシーへの配慮をすることも必要でしょう。
これらのハードを配慮した上で、さらにより良いコミュニケーションを通じて患者さんに信頼感を持っていただくことが重要です。大きく分けて3つの要素があります。
- 言葉そのものによるコミュニケーション
- 皆さんは歯科の専門家として、症状の説明、治療の手法や進め方など専門知識をもとにした情報提供をする側ですが、その話を受ける側である患者さんは専門家ではありません。ですから、その方の理解にあわせたわかりやすい言葉を使って説明することが必要です。
日頃使い慣れた専門用語をつい使っていないか気をつけたいですね。患者さんがイメージしやすい例えや図を示すなどして伝える工夫をするとよいでしょう。
- 伝えるためのコミュニケーションスキル
- 説明は、伝えたから良しというわけではありません。相手が理解して初めて伝わったといえます。その説明がいくらわかりやすい言葉であっても伝える際の声が小さかったり、ぼそぼそとした不明瞭な発音であったり、早口だったりしても伝わりませんね。また、話す口調が冷たかったり、高圧的である話し方も相手の心を閉ざしてしまう原因になります。
相手のうなずきや表情をよく観察しながら、声の大きさ、スピード、口調などを意識しながら話すことが大切です。
時には、理解できていなくとも一方的に話されることにより、とりあえずうなづき、“わかりました”と言ってしまう患者さんもいらっしゃいますので、次の内容に話を移す際には、間を空けて「ここまで何かわからないことや質問はないですか?」「ここまではいかがですか?」というように、一方的にならないように工夫し、患者さんの頭の中を整理してあげるとよいでしょう。
- 言葉以外のコミュニケーション
- 言葉以外のコミュニケーションとは、話すときの態度、身振り、対面の角度、表情、視線などのことです。
私が接客業の仕事を始めた際に「笑顔は相手を受け入れるサインである」「相手の表情は自分を映す鏡である。相手を笑顔にしたければ、まず自分が笑顔を投げかけていくこと」と教わりました。
まさにそのとおりで柔らかい表情で話しかけることは、患者さんの緊張感をほぐすためには何よりも効果的です。ですからマスクは治療時には必要ですが、患者さんをチェアに誘導する際や挨拶の時、説明の際には極力はずしておくように心がけましょう。
同時に、待合室から座っている患者さんを招き入れたり挨拶するときには相手と視線の高さが合うように腰をかがめ、真正面からではなく、斜め45度あたりから話しかけるようにすると安心感を与えることができます。
また資料や写真、口腔内を見ながら説明をする場合でも、ひとつ説明した後に相手の表情に視線を戻して相手の反応を見て、理解をしているか確認することも忘れないでください。
このように良いコミュニケーションをとるために必要な要素は沢山ありますが、一番影響力があるのは最後の“言葉以外のコミュニケーション”なのです。患者さんに専門家としての情報を与えるために知識を多く持っていることは当然ですが、患者さんに安心感・信頼感を持って治療に臨んでいただくためには、“何を伝えるか”よりもそれを“どのように伝えていくか”ということが最も大切なのです。
患者さんと接するさまざま場面において、患者さんと説明者(ドクターや衛生士、助手、受付など)との関係は単に説明をする側と聞く側だけではありません。サービスを提供する側とそれに対して対価を払うお客様という関係もあります。そして、重要なことは、人格のある個人同士の関係だということです。
どんなにそのサービスや商品の説明が良いなと思っても、説明する人物の印象が悪ければ、信頼感や安心感を与えることは難しく、ほかの医院を選ぶこともあるかもしれないですね。医院の方針はさまざまだと思いますが、今回お伝えしたことは、共通して必要なことです。
医院で働くスタッフ一人ひとりが患者さんとのコミュニケーションの、それぞれの要素のバランスが取れているかを点検し、より安心感・信頼感を与えられる医院を目指してください。
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