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転院してしまう患者さんに
何か対応をしていますか
株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子
最近、私の知人2人から、歯科医院を転院するという話を聞きました。
一人は、奥歯の具合が悪くて、以前に通っていた近くの歯科医院を訪ねたところ、奥歯を2本抜いて入れ歯にした方が良いと言われたそうです。歯を抜いて入れ歯にすることは、彼女にとって初めてのことなので悩んでいたところ、知り合いから紹介された歯科医院で説明を受け、インプラントにすることを決めたそうです。
場所は少し遠いそうですが、今そちらに通っているとのことでした。彼女は定期的に歯科医院には通っていなかったようで、かなり悪くなってようやく通院したそうです。定期的なメインテナンスに通っていれば、歯を失うことも防げたのではないかと気の毒に思いました。
もう一人の知人とはこんな話をしました。「少し前にやっと歯の治療が終わったんだけど、そのあとは何もしなくても良いのかと思って…。最近歯周病も怖いって聞くし、それって何もなくても自分から行くものなの?」というのです。
というのも、彼女のお孫さんは18歳で、まだ一本も虫歯になったことがないそうです。なんでも母親の歯のケアが徹底していて、定期的に歯科医院に連れていくなど、とても厳しかったそうです。「小さいころから歯の健康に対する意識を徹底すると一本も虫歯のない健康な大人にすることができるものなんだと感心したのよ。昔とはずいぶん違うわよね」と話してくれました。
そんな話から、私は彼女に知っている知識の範囲で予防歯科の話をし、「普通は治療が終わっても3~6ヵ月に一回くらいは歯石を取ったり歯のお掃除と歯周病のチェックに行ったほうが良いみたいよ。ちなみに、私が行っている歯科医院は定期健診の時期が来るとメールでお知らせが来るんだけど、あなたの行っている歯科医院からお知らせはないの?」と聞くと、何も来ないとのことなので、私の知っている歯科医院を紹介しました。
そして、彼女は今までずっと行っていた近くの歯科医院から転院することを選びました。元の歯科医院は、知らないうちに既存の患者さんを一人失ったことになります。
子どもの虫歯は1970年代では9割の子どもにあったのに、現在は5割を切っていると言われています。その要因は学校での給食後の歯磨きの実施と定期健診の効果だそうです。定期健診で虫歯が発見されるとすぐに保護者にお知らせが行くので、ひどくならないうちに歯科医院に行くことができるのだそうです。ただ学校の健診結果で何も異常がなくてもメインテナンスのために歯科医院へ定期的に通うという意識は一般的にはまだまだ低いそうです。
歯科医院から予防についての定期的なメインテナンスについて説明や案内がないことが多いのも事実です。おそらく、その歯科医院自体が“歯が痛くなったり、悪くなった時に患者は来る”という考えなのかもしれません。もしくは完治後一回くらいはクリーニングと健診を勧めたかもしれないのですが、そのあとは患者さんの意識に任せていたのかもしれません。しかし多くの患者さんにとって、歯科医院は喜んでいきたい場所ではないはずです。案内や説明がなければ、治療が終わると同時に通わなくなるでしょう。
患者さんの意識を教育する以前に、歯科医院側の意識や接し方も変えなくてはいけないのではないかと思います。
「完治したあと一回は来ても、そのあと来なくなるから…。キャンセルが多いから…。それ以上無理強いはしていない」という声も聴くことはありますが、それでは患者さんは減っていくかもしれません。
いつも来ていた患者さんが、いつの間にか来なくなったということはありませんか。
私の知人のように、いつも通っている歯科医院にインプラント治療の選択肢がなくて、他の歯科医院に行ったとしても、定期的に通うメインテナンスは、近い地元の歯科医院のほうが続けて通いやすいはずです。
予防目的で患者さんが定期的に通ってきてくれている歯科医院はそれなりの工夫、努力をしています。例えば、しばらく来ていない患者さんにメインテナンスのお知らせやお誘いのハガキを出し、再来院を促す、また通院時にメールアドレスを登録していただき、時期が近づいたら、メールで知らせる、前日確認の電話を入れる、歯の予防に対する知識や情報をメールでお伝えするなど、積極的な働きかけをしています。
そして歯科衛生士はクリーニングと歯周病チェックを粛々とルーティン通りにするのではなく、セルフケアにもモチベーションが持てるようにしっかりと患者さんとコミュニケーションを図り、毎回工夫しています。
インプラント治療や審美治療などで受診したいとなれば、たとえ遠くても行こうと思う患者さんは数多くいますが、やはり定期的に通うとなると、近くのなじみのある歯科医院が良いと思う患者さんは多いはずです。いったん途切れてもまた気軽に通える、定期的に通院することが当たり前と思えるような働きかけをすることが必要なのではないでしょうか。
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