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ニュー・ノーマルにおけるホスピタリティ
株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が世界規模で広がりを見せ、私たちは常にその動向に翻弄されてきました。すでに皆さんの歯科医院では感染対策は定着しているかと思います。その一方で患者さんとの会話が少なくなり、無言の時間が長くなることで患者満足度が下がってはいないでしょうか。“ニュー・ノーマル(新しい日常)”が求められているなかで、患者さんとのコミュニケーションはどのように行っていけばよいのかについて考えてみました。
歯科医院という現場は感染症予防や滅菌対策は新型コロナ以前からも当然のようにしていたことですから、今回どんな感染対策をしているのか告知をすれば、患者さんに大きな不安を与えないはずです。しかし新型コロナの感染が広がって以降初めて来院する患者さんにとっては少なからず見えない恐怖に対しての不安に加え、治療に対する不安や緊張があるはずです。ですからドクター、スタッフの皆さんは以前に増して安心感を与える努力や意識が必要ではないでしょうか。
先日カウンセリングを受けるために歯科医院に行きました。医院に着くとすぐに検温があり、問診票では体調についてのヒアリングもありました。その後チェアに通され、X線とCT撮影です。その間、スタッフとの会話はほとんどなく、「次は〇〇をします」という必要最低限の説明だけでした。会話を極力しないようにとの意識からなのでしょうか、お互いマスクをつけていて笑顔も伝わらないので、緊張感と殺伐とした空気を感じました。カウンセリングにおいても内容は理解できたものの一方的なペースで手短に終わりました。
新型コロナ以前であれば、たいていの受付のスタッフはマスクをしていなかったので、笑顔で応対してくれるとホッとし、また歯科助手や歯科衛生士の方が日常会話や声掛けをしてくれることで、治療に入るころには緊張感がほぐれました。
ではどうすれば、皆さんのホスピタリティ(思いやり、優しさ)を以前のように伝えることができるのか考えてみましょう。マスクをすると口元が見えないので、たとえ口が笑っていても伝わりにくくなります。目元に表情があれば気持ちや感情はかろうじて伝わるかもしれませんが、それだけでは不充分です。皆さんのホスピタリティを伝えるためには、相手の目を見て話すこと、目の表情を意識すること、さらにその気持ちをプラスαの言葉で伝えることが大切です。いきなり「検温します」と言って無表情で額に検温計を当てるのではなく、ソーシャルディスタンスを心がけた上で「こんにちは、今日は○○のカウンセリングですね。恐れ入りますが、先に体温を測らせてください…。ありがとうございます」など、必要最低限の会話といえども、せめて“恐れ入りますが、お手数ですが、ありがとうございます。少々お待ちください。お待たせしました”などの最低限の接客用語は意識して使ってください。
マスクをしていると、言葉がこもりがちになり伝わりにくくなります。声を張り上げなくてもはっきりと発音することを意識すれば充分に伝わります。また「足元は寒くないですか?」「今からお口の中の写真を撮りますね」「痛いですか?」「痛いときには左手を上げて知らせてくださいね」など不安を取り除くための声掛けは必要です。これらの会話は決して無駄話ではありません。説明や声掛けがないと患者さんは何をされるのか不安になり、スタッフや院内の雰囲気を殺伐と感じ、ただ治療されるだけというマイナスの印象になりかねないのです。
チェアに誘導する際は「〇〇様どうぞお入りください。マスクはしたままで結構です」とさりげなく促します。チェアに座っている患者さんに説明する際には患者さんの真横や頭の後ろから話しかけるのではなく、一歩下がり、斜め前あたりから話しかけることを心がけてください。面倒かもしれませんが、患者さんの安心感は増すはずです。もともと人と話すときは目を見て話す、顔を見て話す、聴くということは基本ですが、新型コロナ以降は距離に対する意識が必要になりました。治療が終わったら、「どうぞマスクをしていただいて結構です」というように安全対策をしっかりと意識していることを動作や言葉で伝えて下さい。
もちろんカウンセリングでの説明、ヒアリングは重要であり、時間を省くことはできません。患者さんとの理解度を深め、かつ少しでも接する時間を減らすためには、画像を使って説明する、資料をお渡しするなどの工夫が必要です。その他の注意事項やお願いは、ホームページへの掲載に加え、受付周りやチェアで待っているときに見られるようにモニターで流したり、リーフレットを渡すなどでお伝えするとよいでしょう。
ニュー・ノーマルへと移行してきた今、ホスピタリティやインフォームドコンセントは今まで以上に必要です。感染対策をしたうえで、どうやってホスピタリティを伝えるのか、どうすれば安心感や信頼感を持っていただくことができるのか、医院全体で考え、工夫していただきたいです。
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