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第80回(187号)

外国人の患者さん増えていませんか?

株式会社ロングアイランド 接遇講師 伊藤 純子

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外国人の患者さん増えていませんか?

株式会社ロングアイランド 接遇講師伊藤 純子

アフターコロナに移行し、街には外 国人観光客があふれています。最近で はメディカルツアー(日本の様々な医 療を受けに来る医療観光)で歯科治療 を受けに来日する方も増えているそう です。同時に外国人就労者も増えてき ています。皆さんのクリニックにも外 国人の患者さんが来院することはあり ませんか?
先日、私が研修に入っている歯科ク リニックに中国人の患者さんが来院し ました。そのクリニックには中国語を 話せるスタッフがいて、ドクターの説 明を通訳していました。治療風景を観 察していると、ドクターは中国語が話 せるスタッフに説明内容を話し、スタッ フは患者さんの後ろからそれを伝えて いました。
国や個人の性格にもよりますが、外 国人の多くは、自分の意見をしっかり と主張することが大切である、という 教育を受けてきた方が多いと言われて います。なので、患者さん自身が明確 な意思を持っていることが多く、言葉 の壁があるからこそ、インフォームド コンセントでしっかりと患者さんの希 望、意思を聞き取り、治療方針に同意 をもらうことはとても重要です。あら かじめわかっている治療内容の説明は 書面で用意しておくとよいでしょう。
治療の間、その患者さんはとても緊 張しているようでした。私が気になっ たことは、スタッフやドクターからの 声掛けは、日本語が通じる患者さんの 時より、言葉数が少なく、無言の状態 が多かったこと。そして通訳者である スタッフが後ろから話しかけているこ とで、直接患者さんの表情が読み取れていないのではないか、ということで す。治療が終わったとき、ドクターは 患者さんの目を見て「OK!」と身振り も交えて伝えました。患者さんはやっ とニコッと笑って、ほっとしたような 表情に変わりました。見ていた私もホッ としましたが、できればその患者さん が治療室に入った時からもっとコミュ ニケーションをとれていれば、治療の 最初から緊張を減らしてあげることが できたのでは…と感じました。ドクター が英語など外国語を話せる場合はよい のですが、そうでない場合、通訳をす るスタッフはたとえドクターから発せ られないとしても、細かい声掛けは積 極的にしていくとよいですね。

私の接遇研修では、『どの患者さんに 対しても治療の前にアイスブレイクを して緊張をほぐすこと、器具をお口の 中に入れたり、次の動作に移る時には 無言で行わず、必ず一言声をかけてか ら動作に入る』つまり患者さんへの声 掛けをまめに行うことで安心感を与え るコミュニケーションの大切さをお伝 えしています。
このクリニックでも、ドクターやス タッフは患者さんとのコミュニケー ションを積極的に行うようになったこ とで、クリニックの雰囲気が明るくな り、患者さんの笑顔も増えてきました。
ただ、今回のように外国人の患者さ んにはどうコミュニケーションをとってよいか分からず、言葉数が少なくなっ てしまったのだと思います。最後の 「OK!」という言葉が患者さんの笑顔を 引き出せたように、今後は治療室に入っ た時から積極的にアイスブレイクがで きるようになるとよいですね。
政府機関の調査によると、日本で働いている外国人のうち、日本語が話せない方の割合は30%ですが『日常生活に困らない程度』の日本語を話せる方は45%だそうです。英語であれば話せる方は日本語よりも多いようです。おそらく挨拶や日常使う言葉はわかるはずです。問診や治療の説明は通訳に任せたとしても、スタッフやドクターも、「大丈夫?」「口を開けてください」など、挨拶やちょっとした声掛けなどを日本語、または身振りでもよいので積極的にコミュニケーションをとることで、安心感を与えることができるのではないでしょうか。
日本で働く外国人の方が病院や歯科に行く必要があるときには、まずは職場仲間や同胞の方に「どこかよいクリニックはない?」と聞くはずです。もし皆さんのクリニックに行って言葉や接し方に対する安心感を持った患者さんであれば、「○○クリニックは言葉が通じるし、親切だよ!」と、必ず仲間を紹介してくださるでしょう。口コミによって同じ職場仲間、同胞の方々もクリニックに来院してくれるはずです。
近隣に外国人の方が多い地域では、「ENGLISH OK!」などの貼り紙をしているクリニックがあります。 外国語が話せるスタッフがいる場合には、ぜひ積極的にアピールするとよいでしょう。英語やその他の国の問診票はネットから無料でダウンロードできるサービスがあります。また翻訳アプリ、会話事例など便利なツールもあるので、それらを活用しているクリニックもあります。ただし、わざわざ訳すまでもない『ちょっとした声掛け』『挨拶』『目を見て話す』『笑顔で話す』などは、日本語が通じる患者さんに対して行うことと全く同じです。むしろ言葉が通じにくいからこそ、普段以上に意識してこれらを行うことで、言葉の不自由さを補い、不安を減らすことができると思うのです。
「うちには外国語を話せるスタッフがいないから…」と受け入れに消極的なクリニックもあるかもしれませんが、これからの日本は人口減少、少子化に伴い、外国人の就労者は確実に増加していくそうです。すべての外国人を受け入れることは難しいとは思いますが、スタッフの強みを生かす、ツールを活用するなど、工夫をすることで、患者さんを受け入れる柔軟性を高めていってはいかがでしょう。

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