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第81回(188号)

中堅スタッフのステップアップ

株式会社ロングアイランド 接遇講師 伊藤 純子

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ASSISTANT ASSISTANT

中堅スタッフのステップアップ

株式会社ロングアイランド 接遇講師伊藤 純子

皆さんのクリニックの中堅スタッフの方は順調に成長していますか?
はっきりとした定義はありませんが一般的に中堅スタッフとは、入社4~5年目以降でリーダーやチーフなどの役に付いていないスタッフのことを指すようです(※人数の少ないクリニックでは、3~4年で中堅、リーダーになることもあります)。入社して3~4年目以降ともなると、任された業務は一人で行えるようになっていると思います。しかしそれで十分というわけではありません。自身の仕事を確実にこなすと同時に、今後は、周囲に気を配りながら積極的なコミュニケーションを図り、主体的にクリニックの目標達成に向けて取り組むことでクリニックの基盤を築くこと、つまり一つ上のステップへ進むことが期待されています。
クリニックによっては、個々に目標を立てさせているものの、実際は本人の意欲に委ねられていることもあるようです。自発的に勉強会に参加しているスタッフもいれば、日々の業務をこなすことだけで満足しているスタッフもいて、その成長に差が出てきているようです。自分の仕事をただこなす毎日では、スタッフの順調な成長は望めませんね。中堅スタッフが次なるステップへ進むためのモチベーションをどう持っていくかを考えることが必要です。
一般企業には、新入社員に対して、入社後4~5年目の社員を教育係として付け、日々の業務をバディのように組ませて指導させる方法があります。
新入社員とは年齢的にもそう離れていない先輩ですから、新人にとっては話しやすく、分からないことを聞くことはもちろん、時には悩んでいることを相談するなど、人間関係も築いていくことができます。
新入社員は教育係の仕事ぶりから実践で学び、自身の仕事もフォローされながら仕事の能力を身に付けていき、職場にも馴染んでいきます。教育係に任命された社員は、指導をするために、曖昧だったことを調べ直したり、率先垂範するために自身の行動を見直すなど、初心に帰ることができます。時には、自分の仕事も同時に行っていかなくてはいけないので、負担と感じることもあるようですが、実はこの役割を担当することは、中堅スタッフが次なるステップに進むための貴重な機会となるのです。

ある歯科クリニックで、これに近い方法を取り入れているところがありました。20名規模のクリニックで、毎年、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手と数名の新人が入職します。それぞれの職種ごとに入社4~5年目の社員を教育係として担当させ、日々の指導を行っていました。指導の状況は定期的にチームリーダーや院長にミーティングや書面で報告・相談をするという流れです。研修に携わっていた私も時々、その内容を伺うことがありました。
「○○さんは呑み込みが早くて、謙虚に学ぼうとするので教えやすい」「△△さんは、間違えても言い訳が多い。素直に謝らないのでだんだん指導することが億劫になってしまう」「仲良くなり過ぎたせいで、最近は注意しづらくなってきた」など、相手によって性格や難易度も異なるので、日々苦労しているようでした。教育係同士で相談し、リーダーからのアドバイスを取り入れながら、このような悩みや不安を克服し、何とか一年間の教育期間が終わりました。終了時の報告会では「教育係を担当してみて、自分が新人だった時にいかに生意気だったかと痛感した。先輩に申し訳なかったと反省」「毎日当たり前に行っていることを教えるとなると、何から、どのように説明したらよいのか不安になり、改めて考え、調べたりすることで、自分自身の勉強になった」などの感想がありました。
最初に彼女たちに会った時、自信無さげで受け身的な印象だったのですが、半年ほど後に会った時には、自発的に質問をし、現状や計画していることを話してくれるなど、見違えるほどしっかりとした印象に変わっていて、とても頼もしく感じたことを覚えています。
教育係の役割としては、業務の流れ、作業のスキルはもちろん、患者さんや職場内でのマナーも指導していくことが求められます。
現場での指導の仕方は、“自身の姿を見せて学ばせる”“説明して実際にさせてみる”“様子を見てアドバイスする”という流れでしょう。教育係は、いざ見本を示すとなると、今までは無意識に行っていたことも確実に示そうと意識して行い、どう説明すればよいか、どう伝えれば分かり易いかを考えるようになります。また業務中に指導するとなると、作業の一部分ごとに指導することもあるでしょう。
もし新人が全体の流れを把握していなければ、その時に教えた作業はできても、そのほかの業務との関連性が分からないことで、受け身的に指示を待つようになってしまうかもしれません。業務全体の流れを説明し、今行っていることはどの段階なのか、重要性などについて把握させることが必要です。
さらに、いつまでに、どこまでできるようになってほしいかという目標と指導計画を立て伝えていくことで、新人に意識させることも必要です。
このように、教育係は“新人を育てる”という機会を通じて、“自身のスキル”を見直し向上する機会となると同時に、新人にアドバイスするための“観察力” “コミュニケーション力”さらに“計画性”を磨く、またとない機会となるのです。
スタッフの入れ替わりが激しいクリニックでは、新人を育てることで大変かとは思いますが、クリニックの基盤を固めるためには中堅スタッフを成長させることがとても重要なのです。時間と手間はかかりますが、中堅スタッフのステップアップとなるこの貴重な機会に重きを置いて取り組んでみてはいかがでしょうか。

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