会員登録

イメージアップ講座 一覧を見る

第82回(189号)

IT技術、AIの進化で歯科スタッフはどうするべきか

株式会社ロングアイランド 接遇講師 伊藤 純子

PDFダウンロード

ASSISTANT ASSISTANT

IT技術、AIの進化で歯科スタッフはどうするべきか

株式会社ロングアイランド 接遇講師伊藤 純子

近年、歯科医院のデジタル化は目覚ましいと感じています。インターネットが普及したことにより、ホームページでの医院紹介は当たり前となり、予約、問診票のネット受付、電子カルテの導入、インカムやLINEを活用したスタッフ間でのやり取りや情報共有、さらに患者説明におけるPC活用、矯正治療の経過をリモートで診断できるシステムなどなど、様々なIT技術を取り入れているクリニックが増えてきています。
あるクリニックで、患者さんへの説明をより分かり易くするための資料作りに取り組むことになりました。入職したばかりのスタッフがPCスキルに長けていたので担当を任せたところ、パワーポイントを活用した分かりやすく見やすい資料ができ上がりました。結果、周りのスタッフからの信頼も高まり、本人も自信、やりがいが出てきたと話していました。デジタル化が進んでいる中、ITスキルを磨いていくことは、スタッフにとって強みと言えるでしょう。
以前、「IT技術(AI含む)の導入により今後10~20年後に日本の労働人口の49%の職業が消える」という調査結果がありました。当時は、「AIに仕事を奪われるかもしれない」と脅威に感じた方もいたようですが、近年では、“今後はどのような仕事が必要とされるのか”、“AIとどのように共存していくか”ということが注目されています。
ファミリーレストランやスーパー、ビジネスホテルのフロントなどでは、注文の受付から精算まで店員やスタッフの方と接することがほとんどないということがあります。これらはIT技術によって人手不足や人件費削減を可能としている事例です。しかしイレギュラーなことが発生した時にはやはり人間の臨機応変な対応が必要になります。つまり自動化、無人化ができない分野に人間の能力が求められていきます。
IT技術やAIの進化は「生産性の向上」「業務の効率化」や「ヒューマンエラーの防止」に役立っていますが、苦手とすることもがあります。
AIが得意とすることは、
①大量のデータを効率よく整理し、分析したり、処理することができる
②規則的な作業を効率的に同じ速度で行うことができる
③24時間稼働することができる
など、人間よりも精度の高い処理を圧倒的な速さで行うことが可能です。確かに人間の場合は原則8時間労働ですし、それ以上働いたとしても、疲れると効率が落ち、ミスも起こりやすくなるので、休みが必要です。その点、AIを活用した技術では、24時間休みなく、大量のデータを正確に瞬時に処理し、むらなく決められた作業をこなすことができるのです。
しかしAIは万能ではなく苦手なこと もあります。例えば、
①ゼロから新しいことを生み出すこと
②人の気持ちを汲むこと
③その場の雰囲気や相手との関係性で臨機応変に判断すること
など、人間的な感情やコミュニケーション、発想力や柔軟な対応を必要とする分野は今現在のAIには不得意な分野です。

IT技術やAIの進化によって無くなっていく職業もあります。しかし無くならない職業として、介護、医療、カウンセラー、教育など、クリエイティブな仕事が挙げられています。歯科医師や歯科衛生士もそのうちの一つです。
歯科のデジタル化はすでに進んでおり、口腔健康データ管理、予防指導のサポート、予約スケジュールの管理など、IT技術を導入することで効率化を図ることができるようになりました。また技術面においても、口腔内カメラ・スキャナー、3Dプリンタによる補綴物の作製、さらにAIの解析による最適な歯列模型の作製など、IT技術は作業効率や精度を上げることに役立っています。
しかし、人間が行う患者さんとのコミュニケーションはこれからも必要です。患者さんと直接話すことで、その方の症状や心理状態、要望、不安を理解し、一人ひとりその患者さんに合った対応をすることが求められます。これらは患者さんが何よりも重視していることなのです。今後はこれらのコミュニケーションから得た情報と過去のデータを照らし合わせ、最適な治療方法を導き出したり、効率を上げていくのがITやAIの役割です。
結論を言うと、歯科医師、歯科衛生士はAIにとって代わることのできない職業の一つといえるでしょう。だからといって安心することはできません。次々登場する治療技術を取り入れるため、日々勉強を重ねている歯科医師や歯科衛生士はたくさんいます。
最新鋭の設備、システムを取り入れていくためには、スタッフにもそれらを使いこなすことが求められます。例えば、最新鋭の多機能電子レンジを購入しても「使っているのは“チン”だけ」という話をよく聞きますが、使いこなせなくては単機能の電子レンジを使っているのと同じことです。取扱説明書を読み込み、今までやったことのない方法にもチャレンジし、使い慣れていくことで初めて、最新鋭の電子レンジを購入した意味があると思います。
進化するIT、AI技術は私たちの生活を豊かにし、仕事の幅を広げ、新しい仕事を生み出してくれるでしょう。IT、AIを味方につけ、共存していくことが求められます。人間としての強みであるコミュニケーション力を強化すると同時に、ITを使いこなすスキルを磨くこと、チャレンジ精神を持った人材が求められていきます。今後も新しい時代において柔軟に対応していける人間でありたいですね。

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。