130号 AUTUMN 目次を見る
■目 次
■はじめに
義歯が苦手と尻込みしていても、義歯の破折や不適で困り果てて来院される患者さんを拒むわけにはいきません。何はともあれ、とりあえず修理をし、リベースをしてみてはいかがでしょうか?
古くても、不適でも慣れている義歯が修理やリベースによって即座に元に戻ることは、患者さんにとってはとても有難いことですし、歯科医師にとっては新義歯作製の保険点数の低さのストレスから解放されることになります。つまり修理やリベースを上手にこなすと、患者さんは「こんなに修理やリベースが上手な先生は腕が良い先生に違いない。この際新しい入れ歯を作っていただこう」と思ってくださるものなのです。
このチャンスを逃してはいけません。この時、間違っても「では保険で作りましょう」とは、決して言ってはいけません。自信有り気に高額な自費義歯を勧めて下さい。そして「お車は何にお乗りですか?1日に何時間乗りますか?私の作る入れ歯は1日中、24時間、何万回も使います。それを車より高いとか、安いとか言われるなんて考えられません!」と高額に驚く患者さんより、さらに驚いて下さい。
「先生、もう少し安いのはありませんか?」と聞かれても「松竹梅の寿司屋ではありません」と無視しましょう。そして「一生持ちますか?」という質問に対しては「私が作ったものです。一生持ちますが、あなたがいつまで生きるかによります。車の場合は10年が目安ですので…。それより使う入れ歯がいつまで持つかは使い方次第です」と煙に巻いて下さい。
■修理とリベース
Ⅰ)修理
では手始めに修理に取り掛かりましょう。割れた義歯(図1)をステッキーワックスで固定し(図2)、粘膜面にワセリンを塗ります(図3)。石膏を盛り、破折ラインに石膏が行き渡るように義歯を軽く押しつけます(図4)。
石膏が硬化したら義歯を外してステッキーワックスを除去した後、バーでギザギザのグルーブを入れ、ワセリンを塗った石膏に戻し、即重レジンを充塡します(図5、6)。
硬化後、研磨して完成です(図7、8)。
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図1 -

図2 -

図3 -

図4 -

図5 -

図6 -

図7 -

図8
Ⅱ)増歯
次にクラスプを掛けていた歯の抜歯後の増歯のケースです。32を抜歯します(図9)。抜歯した部位に口蓋側からユーティリティーワックスを付け(図10)、増歯する人工歯を固定します(図11)。止血とレジンの流入防止のため抜歯窩に小綿球を入れ、ワセリンを塗布します(図12、13)。
図11の義歯を口腔内へ戻し、唇側から即重レジンで軽く固定し(図14)、硬化後に義歯を外してユーティリティーワックスを除去してから再度義歯を口腔へ戻し、空隙に即重レジンを圧接します(図15、16)。完成です(図17、18)。
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図9 -

図10 -

図11 -

図12 -

図13 -

図14 -

図15 -

図16 -

図17 -

図18
Ⅲ)不適のリベース
少々難しい不適義歯のリベースです。リベースで最も重要なことは、例えガタガタの義歯でもできる限り事前に必ず咬合調整をして下さい。
リベース前の咬合調整前後の義歯です(図19、20)。
接着材を塗り(図21)、計量したクラリベース(図22、23)を辺縁から盛ります(図24)。
<クラリベースの量の目安>
・総義歯……………2目盛り
・両側遊離端……1.5目盛り
・3~5歯…………1目盛り
義歯を咬ませたまま、辺縁を明確にし(図25)、取り出したあと余剰のリベース材を除去し(図26)、研磨して完成(図27)。
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図19 -

図20 -

図21 -

図22 -

図23 -

図24 -

図25 -

図26 -

図27
Ⅳ)挙上(粘膜面)のリベース
さらに難しい挙上(粘膜面)のリベースです。つまり、クラスプが沈下する程、低位になった義歯の場合、粘膜面にシートワックスを軟化して1~2枚付与し(図28)、シートワックスが軟らかいうちに口腔内で咬ませて、予定の挙上量かを確認し、高さを決定後、リベース材を盛り再度咬ませます(図29、30)。
硬化途中で取り出し(図31)、ワックスを除去し(図32)、再度クラリベースを盛り(図33)、再び口腔内に戻します。※(この時の作業は息を止めて、手早くして下さい。事前に再度盛りのリベース材を少量計量して用意しておくことがポイントです。)
硬化後にバリを取り、研磨して完成です(図34)
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図28 -

図29 -

図30 -

図31 -

図32 -

図33 -

図34
Ⅴ)歯列による挙上
よくある症例の歯列による挙上です。低位な部分を確認後(図35)、練和した即重レジンを盛り(図36)、口腔内で咬ませます(図37)。
余剰レジンをハサミで除去後(図38)、咬合調整をして、全体的に咬合するよう調整を繰り返します(図39、40)
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図35 -

図36 -

図37 -

図38 -

図39 -

図40
Ⅵ)増歯、修理、リベース
最後に増歯、修理、リベースの混合です。まず事前の義歯(図41)です。義歯に装着したまま印象を採り、石膏硬化後取り出し、バーでギザギザのグルーブをつけます(図42、43)。石膏にワセリンを塗り(図44)、義歯を石膏に戻し(図45)、レジンを圧接します(図46、47)。
義歯を口腔へ戻し、ユーティリティーワックスを保持として(図48)、増歯する人工歯を固定した後、唇側より即重レジンを盛ります(図49)。義歯を口腔より取り出し、ユーティリティーワックスを除去し(図50、51)、口腔内で即重レジンを圧接します(図52)。咬合調整後(図53)、全体的にリベースをして完成です(図54)。
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図41 -

図42 -

図43 -

図44 -

図45 -

図46 -

図47 -

図48 -

図49 -

図50 -

図51 -

図52 -

図53 -

図54
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クラリベース ノーマル、ライブピンク色 -

クラリベース ノーマル、ピンク色 -

クラリベース ファースト、ライブピンク色
■おわりに
いかがでしたか。義歯は修理、リベースが基本です。
以前、訪問診療を数年間実施していた時、介護の現場のほとんどは修理とリベースでしたが、なかなかいい材料に出逢えませんでした。
今回クラリベースを使用し、
1.抗菌性(カンジダの予防)
2.耐着臭性(臭いがつきにくい)
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