193号 SUMMER 目次を見る
Interview
開業を目指す先生に 開業の際に必要な考え方と武器となるツールの選択
目 次
- ≫ 最初に、開業されるまでの経緯についてお聞かせください
- ≫ そのスタディグループでは、どんな学びや出会いがあったのでしょう
- ≫ 勤務先のクリニックでは、勤務医として主にどんな役割を担っておられたのでしょう
- ≫ 実際に開業を決めた時期や、導入されたツールについて教えてください
- ≫ 開業に必要な知識はどのようにして身につけられたのでしょうか
- ≫ 根管治療を武器にすることで、どんなメリットがあるとお考えですか
- ≫ 歯科用レーザーは開業何年後に導入されたのでしょう
- ≫ 開業の際に注力すべき診療科目はどのように決めればいいのでしょう
- ≫ 自分の強みを見つけるための方法があれば教えてください
- ≫ 5年先、10年先のビジョンを持つために必要な考え方をお聞かせください
- ≫ 最後に今回ご提示いただいた症例についてお聞かせください
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京都市中京区
医療法人修明会 御所南しげおかデンタルオフィス
院長 重岡 修司
Digital Dentistryの発展に伴い、開業の際に必要となる医療機器が多様化・高額化する中、より使用頻度が高い機器を厳選して選ぶ必要があります。そこで、モリタ開業セミナーの講師でもあり、日常臨床でさまざまな先進機器を使いこなしておられる重岡修司先生に、開業の際に必要な考え方や、マストアイテムとその選択基準について、ご自身の経験をもとにお話しいただきました。
最初に、開業されるまでの経緯についてお聞かせください
2003年に徳島大学を卒業して、最初は先輩の誘いで滋賀県にある大型医療法人に約3年勤務しました。とにかくそこで同期の勤務医と切磋琢磨して働きながら、月々の保険点数を競い合う生活を続ける中で、「これが自分がやりたかった歯科治療なのか」と、ふと疑問に感じて、新たな職場を探すことにしました。また、勤務地探しと同時進行で、学生の頃から興味のあった歯周病治療をもっと学びたいという思いもあり、あるスタディグループの歯周病のセミナーを受講しました。当時の若い自分にとっては負担を強いられる高額な受講費でしたが、いざ参加してみると研修内容がとても充実していて「社会人になってもこんなに密度の濃い学びを得られる場があるんだ」ということに驚きと感動を覚えました。
そのスタディグループでは、どんな学びや出会いがあったのでしょう
そのスタディグループで出会ったのが、その後の歯科医師人生に多大な影響を与えてくださった恩師の先生でした。技術だけでなく、何よりそのお人柄に惹かれて、 休診日のたびに自分で撮影した症例写真を持参し、指導を仰ぐ日々が続きました。実際に手術を見学させていただくこともありましたし、「歯科医療に対する向き合い方」など、歯科医師として必要な考え方を丁寧に教えてくださいました。
そんな中、同じ勉強会に所属されていた京都の先生のクリニックで勤務医をやってみないか、と声をかけてくださいました。歯周病やインプラント治療の分野において、国内外でも高名な先生で、私も研鑽を積める千載一遇のチャンスだと思って飛び込んだのです。
その先生のクリニックは、私が過去に経験した一般歯科医院とは全く違う世界でした。来院する方はほとんど自費治療の患者さんでしたが、とにかく良質な治療を受けたいという方がたくさん来院していたんですね。その中で勤務していると、全ての患者さんに最善の治療方針を提案し、常に自分のベストパフォーマンスで患者さんに向き合うことができました。このクリニックでの経験が、その後の私の歯科医師人生に大きな影響を与えてくれたと感じています。
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図1 15歳、中学生。セカンドオピニオン希望で父親と一緒に来院。
10歳の混合歯列期から永久歯の生え変わりまで、4年間矯正治療を受診。近隣のかかりつけ医で、#35 抜歯と診断を受け、矯正医より紹介されてきた。全顎的には患部以外に大きなペリオ的な問題を認めないが、#35は根尖まで骨吸収が重篤に進行していた。 -
図2 中心結節の破折によるPrimary Endoを疑ったが認められず。
う蝕やクラック、過度な咬合干渉も認められない。歯髄はVital反応を認め、頰側に9~11mmの根尖に及ぶ骨吸収を認める。Primary Perio Lesionであろうか?
勤務先のクリニックでは、勤務医として主にどんな役割を担っておられたのでしょう
当時、勤務先の院長が行う外科治療や再生治療の前に行う前処置として、まずは治療計画の立案や精度の高い基本治療を行うことが勤務医としての私の主な仕事でした。そうした毎日の積み重ねを通じて、インプラント治療や歯周外科治療を行う際の一口腔単位での治療の組み立て方、さらに、口腔内全体を診た上で、効率的な治療計画を立てていくプロセスは、私にとって大変勉強になりました。
当時、クリニックにはマイクロスコープはまだ導入されていませんでしたが、「マイクロスコープを導入するので、早急に根管治療について強化するように」というお達しがありました。それまで私はマイクロスコープを使った根管治療は全く経験がありませんでした。しかし、せっかくいただいたチャンスを臨床に活かすために、セミナーなどを受講しながらエンド担当として日々研鑽を積みました。その結果、勤務医時代にマイクロスコープを使った根管治療という新たな引き出しができ、それ以降は歯科治療の強みの一つになってくれました。
実際に開業を決めた時期や、導入されたツールについて教えてください
大学を卒業した時点で、いずれは開業医としてやっていくことをおぼろげには考えていましたが、36歳を迎える頃、将来をより強く意識しました。自分のやりたいことや強みは何なのかをあらためて考えました。その結果、私がこれまで取り組んできた歯科治療の中でも、勤務医時代に学んだマイクロスコープを用いた根管治療は、開業するときにも他院と差別化を図れると感じていました。
開業したのは37歳の時です。開業時に、先立つ資金はほとんどなく、ほぼ全額銀行借入でした。その返済を考えると、そのあたりが開業のデッドラインになると以前から考えていました。そうした余裕のない資金計画の中で、たとえチェアユニットが1台や2台しか購入できなくなろうが、LeicaのマイクロスコープとモリタのCTの導入は私の中では必須と考えていました。開業時はチェアユニット3台でスタート、その後増設して現在は5台体制で落ち着いています。モリタのEr:YAGレーザーも開業時に導入したい機器でしたが、資金の都合で先延ばしにしました。
開業に必要な知識はどのようにして身につけられたのでしょうか
初めての経験ですから、具体的に資金がどれだけ必要か詳しくは知りませんでした。そもそも開業に関する知識もノウハウもまったくなかったので、試しにモリタが主催する「開業セミナー」に参加してみたんです。開業に詳しい税理士さんが講師として来られて、どの程度資金が必要かなど、初めて開業に関する具体的な話を伺いました。当時モリタのベテランスタッフの方が担当されて、数人のスタッフの方々がチームになって、資金借入や開業地探しまで、全力でサポートしてくれました。本当に開業に特化したプロ集団といった印象で、私はそのチームに身を任せて、すべてをお願いしたというのが本当のところです。自分の中でどんな診療スタイルでやっていきたいか、はっきりと意識していたのは、利便性の良い場所でLeicaのマイクロスコープを駆使した精密根管治療と歯周治療に特化した歯科医院をコンセプトにしていきたいということでした。
図3 CT画像では頰側に限局した根尖に及ぶ骨破壊を認める。このようなケースにおいては生活反応が残っていても歯周治療に先立って抜髄を行う。(株式会社モリタ製作所 Veraviewepocs 3Dfにて撮影)
図4 Endo Firstの原則に準じて治療を行い、3か月間根尖周囲組織の炎症の消退を待った。たとえ生活反応は残っていても、血流の乏しい変性した歯髄組織であることがわかる。
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モリタ友の会会員限定記事
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