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Clinical Report

iTeroを活用したSPIインプラント治療

医療法人ひかり歯科クリニック 理事長・院長 富永 知穂

キーワード:補綴用IOS /3種類のカラーラインナップ/インプラント治療におけるデジタルデンティストリーの応用

目 次

はじめに

株式会社モリタは、2023年よりアライン・テクノロジー社のIOSであるiTeroの取り扱いをスタートした。さらに、2024年6月、CAD/CAMを用いた歯科診療が一部保険適用となったことで、ますます光学印象機器への注目が集まっている。
2020年より当院では、インプラント治療における診断から上部構造装着、メインテナンスまでをiTeroのデータを用いて行っている。矯正用として認識されているiTeroであるが、補綴用IOSとしても優れた機能をもっていることを本稿にて紹介したい。

症例概要図15

患者は62歳女性。右下臼歯部に装着しているブリッジへの違和感を主訴に当院を受診された。初診日、パノラマX線撮影、歯周基本検査、口腔内写真、iTero Element 5D Plus(以下iTeroと略す)による全顎スキャニングを行い、診断のための資料採取を行った。
各資料より、清掃状態はやや不良、#47において、近心歯周ポケット12mmと歯牙破折を疑う所見が認められた。また、iTeroによるスタディモデル分析の結果、臼歯部咬合関係1級、前歯部における叢生が認められたが、臼歯部離開は得られており、矯正介入は患者が希望しなかった。
以上より、基本歯周治療を行った後、#47抜歯および#47#46へのインプラント治療の診査診断へ移行することにした。
なお、側方運動時における臼歯部離開、欠損形態、頰や舌といった周囲軟組織の状態は、光学印象では十分記録はできないため、口腔内診査にて行った。

  • [写真] iTero 口腔内3D写真(初診時)
    図1 iTero 口腔内3D写真(初診時)
  • [写真] パノラマ(#47抜歯前)
    図2 パノラマ(#47抜歯前)
  • [写真] 口腔内写真正面観(#47抜歯2か月後)
    図3 口腔内写真正面観(#47抜歯2か月後)
  • [写真] 口腔内写真咬合面観(#47抜歯2か月後)
    図4 口腔内写真咬合面観(#47抜歯2か月後)
  • [写真] パノラマ(#47抜歯2か月後)
    図5 パノラマ(#47抜歯2か月後)

CT撮影から診断、インプラント体選択

抜歯2か月後、CT撮影および全顎スキャニングを行い、インプラント診断ソフトであるSMOP(株式会社医科歯科技研)を用いて、CBCTのDICOMデータとスタディモデルのSTLデータおよびデジタルワックスアップ重ね合わせとインプラント埋入位置のシミュレーションを実施した(図6)。その結果、骨幅、高さ、骨密度ともに、レギュラー径(#46:4.0mm、#47:4.5mm)のインプラント埋入が可能と判断された(図7, 8)。
埋入位置を決定後、サージカルガイドを設計し、3Dプリンターを用いて出力した。なお、変形を防ぐためにサポート部を付与することや、適合状態を把握するための構造など、造形時に生じうる誤差への対応策は重要である(図9, 10)。
本症例における粘膜の厚みを測定した結果、2.0mm程度と薄かったため、生物学的幅径の確保にやや注意が必要と考えた。インプラント周囲粘膜は、生物学的な防御機構を果たしており、粘膜の厚みとインプラント周囲骨の吸収には関連があることが報告されている1)
SPIイニセルインプラントは、骨頂とインプラントアバットメント接合部との間に垂直的な距離が設定され、いわゆるティッシュレベルタイプに分類されるインプラントである。さらに、イニセルインプラント エレメントタイプでは、2.5mm、1.0mm、0.5mmの3種類のカラーの長さから選択することができる(図11)。生物学的な観点から考えるとプラットフォームは骨面から距離をとることが望ましいが、エマージェンスプロファイルや、埋入時の創部閉鎖性と患者の外観への要求度など、さまざまな視点から検討する必要がある。その点からも、3種類のカラーサイズがあることは大きなメリットである。
本症例では、歯肉はThinタイプであること、外観への患者要求が高かったことから、粘膜下にメタルカラーを留めたうえで、可及的に骨面からの垂直的距離を求めるため、1.0mmカラー(RC)を選択した。
また、初診時総合的口腔内診査時の筋電計検査(マイオニクス筋電計を使用)による咬筋圧検査結果からも200μVと高値を示し、力のコントロールにより両臼歯部への欠損が生じていることが示唆された。これを考慮し、力に対する抵抗力を増強させるため、#46:径4.0mm×長さ11mm、#47:径4.5mm×11mmのインプラント体を選択し、上部構造については連結冠を装着することを決定した。また、骨状態良好であることと患者からの希望もあり、ティッシュパンチを用いてホール形成を行い、可能な限り低侵襲にインプラント体を埋入することにした。

  • [写真] マッチングデータレポート(CBCT : RF社製NAOMI-CTにて撮影)
    図6 マッチングデータレポート(CBCT : RF社製NAOMI-CTにて撮影)
  • [写真] #46埋入シミュレーション
    図7 #46埋入シミュレーション
  • [写真] #47埋入シミュレーション
    図8 #47埋入シミュレーション
  • [写真] サージカルガイドの設計
    図9 サージカルガイドの設計
  • [写真] SMOPサージカルガイド
    図10 SMOPサージカルガイド
  • [写真] 3種類のカラーラインナップ
    図11 3種類のカラーラインナップ

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