121号 SUMMER 目次を見る
■目 次
■1.はじめに
近年、歯科の現場を取り巻く環境は、法改正に伴う診療報酬の改定や、少子高齢化による来院者数の減少などにより、これまでになく厳しい状況となっています。また、根管治療の困難さ、および根管治療の保険制度での位置付けをめぐって論議が高まってきました。
このような状況を前提に、根管治療を効率的に行っていただく装置として、2002年度に「デンタポート」を発売いたしました。この「デンタポート」は、モジュール追加で機能拡張できるという画期的なシステムのもと誕生した根管長測定・根管拡大形成器ですが、この度、新たに光重合機能にも対応して新しく生まれ変わりましたのでご紹介いたします(図1)。
図1 光重合機能対応「デンタポート」
■2.デンタポートの機能拡張コンセプト
デンタポートの基本は、コアとなる高精度根管長測定モジュールです(図2)。
この根管長測定モジュールは、ルートZXの根尖検出精度、および使い勝手の良さをそのまま引継ぎ、さらに便利な機能を追加した製品ですが、根管拡大と光重合の両機能を備えた別売の追加モジュールを接続することで、根管長測定器、根管拡大器、および光重合器と様々な機能に対応できるようになっています(図3)。
一つの装置で多彩な使い方に対応できるため、作業効率の向上、設置スペースやトータルコストの低減が図れます。
以下、デンタポートの持つ拡張機能を説明します。
●根管長測定器として使用
コアとなる根管長測定モジュールは、ルートZXの性能、操作性を引き継いだ高精度根管長測定器で、正確に根尖を検出します。
もちろん、根管内の薬液や出血状態の影響はほとんど受けませんので、面倒なキャリブレーションや根管を乾燥させるなどの操作は不要です。
またこの度、メーターの動きが一段と改良されより使いやすい根管長測定器となりました。また、根管長測定機能だけでなく、将来の機能拡張にも対応できるという点はデンタポートだけが持つユニークな機能です。
●根管拡大形成器として使用
根管拡大形成器として使用する場合は、光重合・根管拡大形成モジュールを追加して、チューブに根管拡大形成ハンドピースを装着します(図4)。
根管拡大形成ハンドピースをチューブに接続すると自動的に根管拡大形成モードに切り替わり、多彩な拡大支援機能で精細かつ効率的に拡大作業を行うことができます。
●光重合器として使用
光重合を行いたい場合は、光重合ハンドピース(図5)をチューブに接続します(図6)。光重合ハンドピースを接続すると自動的に光重合モードに切り替わります。
●従来の根管長測定モジュールを導入済みの場合
もちろん、すでに根管長測定モジュールをご購入していただいている場合でも、光重合・根管拡大形成モジュールとそれぞれのハンドピースを追加することで、光重合器および根管拡大形成器として使用することが可能です(図7)
図2 根管長測定モジュール-
図3 根管長測定モジュールと追加モジュール -
図4 根管拡大形成器としての構成 -
図5 LEDハンドピース -
図6 光重合器としての構成 -
図7 従来の根管長測定モジュールにも接続可能
■3.新型デンタポートの各機能の特長
新型デンタポートの機能をより詳しく紹介いたします。
●光重合機能
新型デンタポートの最大の特長は、青色LED方式による光重合機能に対応したことです。新たに設計されたLED方式の光重合ハンドピースは、光学系の改良により10mm離れた患部でも照射光量がほとんど減衰しないという特性を持っています(図8-a、b)。
図8-aは、照射面からの距離により光量がどれだけ低下するかを示す図ですが、新型デンタポートの光重合器は、照射面からの距離が10mm離れても、光量がほとんど低下せず、ほぼ800mW/cm2以上の光量を維持可能という性能が明らかです。
ところが、従来製品の場合、5mm以上の距離より光量が50%程度に低下し、十分な重合特性が得られないことがわかります。
デンタポートに搭載されている光重合器は、患部と照射面からの距離が大きくなっても、光量がほとんど変化しませんので、図8-bに示すように、重合特性中最も重要な硬化深度もほとんど変化しません。
このように、患部から10mmはなれた位置から照射しても重合特性特性の低下がありませんので、これまでは難しかった根管治療終了後の根管内のボンディングや、ファイバーポストの埋入にも対応できます(図9)。
また、小児や女性のように口全体が小さいため適切な位置での照射が難しい患者でも、少し離れた位置から照射するといったことが可能です。
ペンキュアーと同様、ヘッド部分にLEDを搭載しているためライトガイドが不要となり、7番遠心部などへの照射も容易に行えます(図10)。
もちろん、通常のレジン重合も楽々とこなせます(図11)。
●多彩な根管拡大支援機能
デンタポートには、根管長測定器に連動した便利な根管拡大形成ハンドピースの回転制御機能と、ファイルに印加されるトルクに連動した安全機構が多数備わっています。
代表的な機能を紹介します。
○オートアピカルリバース
ファイル先端があらかじめ設定された作業長に到達すると、ファイルの回転方向が自動的に反転します(図12)。
この機能により、作業長位置まで、高精度に根管拡大・形成ができます。
根管長測定器で常にファイル先端位置を確認し、予め設定された位置にファイルの先端が到達すると自動的に回転方向を逆転して、その位置より根尖側の根管拡大は行わないという回転制御はモリタ製品の技術です。
○オートトルクリバース
ファイルに加わる負荷があらかじめ設定されたトルクリミット値に達すると、ファイルの回転方向が自動的に反転します(図13-a、b)。これによりファイルに過剰な負荷がかかるのを防ぎ、ファイルの破折頻度を低減します。新型デンタポートでは、ファイルの回転方向が反転するまでの時間が短縮され、より効果的に動作するようになっています。
○オートアピカルスローダウン
ファイル先端が作業長に近づくにつれ、ファイルの回転速度を自動的に低下させます。ファイル破折時のリスクが大きい根尖付近での拡大作業をより精細に行うことが可能です。
新型デンタポートでは、従来のデンタポートより回転数の変化が滑らかになり、精度が高く操作性が向上しています。
○オートトルクスローダウン
新型デンタポートで新たに追加された機能です。ファイルに加わる負荷に応じて回転数を低下させる機能です。高負荷時に回転数を低下させることにより、ファイルの破折頻度を低減します。
図8-a 照射面からの距離と光量-
図8-b 照射面からの距離と硬化深度 -
図9 ボンディング(左)およびファイバーポストの埋入(右) -
図10 7番遠心部への照射時位置づけの例 -
図11 一般的な照射時位置づけの例 -
図12 オートアピカルリバース動作模式図 -
図13-a トルクリミット値 -
図13-b オートトルクリバース動作模式図
■4.おわりに
根管治療をより精細・効率的に行って頂くため、光重合機能に対応し、従来の機能も改良され、デンタポートが新しく生まれ変わりました。他に類を見ない優れた拡張性や機能の数々を備えた新型デンタポートが、これまで以上に精細な根管治療の一助となれば幸いです。
また今後も、より一層高精度で作業の効率化を実現するため、根管充填機能など新たな機能の拡張が行えるよう、デンタポートは発展を続けていきます。
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