121号 SUMMER 目次を見る
■目 次
- ≫ はじめに
■はじめに
今回は3件のHotな情報をお届けします。
1件目は、2月23日にタイバンコックにてEr:YAG LaserErwin Adverl Clinical Lacture 2007を開催しました。25名の参加でしたが、大学関係者が多く当地でのレーザーに対する注目の高さがうかがわれました。ミャンマーやアメリカからも先生方が参加され、今後の大学でのレーザーの展開が楽しみです。日本からは、東京歯科大学加藤純二先生・津久井明先生・長瀬隆之先生が講演をされました。
来年も行う予定ですので、ご希望の先生が有られましたらご連絡ください。
2件目は歯周治療におけるEr:YAGレーザーと薬剤との併用です。臨床検討会で、多くの先生からポケット内への貼薬とレーザー照射との組み合わせについて質問を頂きました。
今回使用した薬剤は、100症例ほどに応用しましたが、非常に効果がありましたので、報告させて頂きます。文献等は日本歯科薬品にお問い合わせください。以下に症例を供覧いたします。
症例1 P急発(上顎右側側切歯、犬歯) 68歳 男性
この患者は歯科治療に対し、非常に恐怖感が強く、プラークコントロールは歯が抜けるようで怖いとのことで実施しなかった。痛みと腫れは処置3回目(初診から2週間後)でほとんど消失。その後、患者はブラッシングにも興味が出てきて相乗効果となった。TCPSはEr:YAGレーザーと相性が良く、特に初期の炎症に対する効果はシャープであった。全身疾患を持っている方が多いため、このような応用は効果的であり、先生方の診療のストレスは軽減されるように思われる(図1~6)。
図1 症例1 初診時- ・動揺なし
- ・歯周ポケット6mm
図2 レーザー+TCPS- ・Er:YAGレーザー(20pps40mj)にて注水下、無麻酔でポケット内照射
図3 術後1週間
図4 術後2週間- ・腫れ、痛みほとんど消失
図5 術後3週間
図6 術後4週間- ・ブラッシングに自信
症例2 歯周膿瘍(下顎左側中切歯) 70歳 男性
レーザー照射を行った後、TCPSを瘻孔から溢れ出るように適用すると早期に炎症が改善された。その際、使用時の疼痛はなかった(図7~9)。
図7 症例2 初診時- ・動揺++
- ・排膿++
図8 レーザー+TCPS- ・Er:YAGレーザー(20pps40mj)にて注水下、無麻酔でポケット内照射
- ・瘻孔から溢れ出るようにTCPSを適用
図9 術後1週間- ・炎症症状は消失
症例3 歯周炎(上顎左側側切歯、犬歯) 48歳 女性
ポケット内照射と内壁の炎症部位の蒸散を行った。出血が多く見えるが、長くは続かない。TCPS適用後1週間後の予後は良好である(図10~12)。
図10 症例3 初診時- ・動揺なし
- ・排膿+
- ・歯周ポケット5~7mm
図11 レーザー+TCPS- ・Er:YAGレーザー(20pps50mj)にて注水下、無麻酔でポケット内照射
図12 術後1週間- ・予後良好
症例4 歯周炎(上顎左側口蓋部) 55歳 女性
降圧剤服用患者は降圧剤服用のため、歯周炎のリスクは高く初期治療(スケーリング、プラークコントロール)に対する反応が低いため、なかなか歯周炎の治療に移行することができずにいた。レーザーとTCPSの併用により、歯肉の炎症は速やかに縮小し初期治療へ移行できた(図13~17)。
図13 症例4 初診時- ・動揺なし
- ・排膿+
- ・歯周ポケット5~7mm
図14 レーザー照射- ・Er:YAGレーザー(20pps40mj)にて注水下、無麻酔でポケット内照射
- ・ポケットより出血
図15 TCPS適用
図16 術後7日- ・術後4日後には炎症縮小、排膿も治まり、術後7日後には初期治療へ移行
図17 術後1ヵ月
症例5 歯肉膿瘍(上顎左側中切歯) 48歳 男性
動揺と疼痛が著しいため、レーザーにより排膿路を確保し、TCPSを適用した。24時間後には疼痛は無くなった(図18~23)。
図18 症例5 初診時- ・動揺++
- ・排膿+
図19 レーザー照射- ・Er:YAGレーザー(20pps40mj)にて注水下、無麻酔でポケット内照射
図20 TCPS適用
図21 術後3日
図22 術後7日- ・炎症縮小
- ・TCPS再適用
図23 術後14日
TCPS(テトラサイクリン・プレステロン)3件目は、内視鏡です。
マイクロスコープの普及により歯科治療に変化が起きました。今まで入口しか見えなかった根管が、内視鏡を使用することにより、内部まで確実に見ることができるようになり、根管治療の革命になるかと思います。
7月の臨床研究会での発表を前に、坂田篤信先生に執筆頂きました。
より詳細な内容・使用体験は臨床研究会で。私の治療の苦手な分野に歯内療法があります。思うように痛みが軽減しなかったり、満足できる根管処置後に痛みを訴える症例があります。
何とか根管内を診ることができないものか、診ることができたならその原因と思われる部位に手が出せないものかと思案していたところ、数年前に太さが1mmの内視鏡と出会いました。
根管内から根尖付近を診ることで肉芽存在することに驚きを覚え、当時唯一ファイバー導光できるNd:YAGレーザーを使用して処置を行ってきました。もちろん、根管内の破折やパーフォレーションを診ることは容易なことです。Nd:YAGレーザーで内視鏡下で根尖からの進入している肉芽を除去することは可能ですが、組織深達性のレーザーでの処置の限界を感じていたところ、浅在性のEr:YAGレーザーをアドベールの細いチップが可能性を示唆してくれました。
昨年より、モリタの協力でEr:YAGを使用できる内視鏡の開発に取り組んできました。1mmの先端径に6000画素のカメラ・光源・Er:YAGレーザーを挿入するチャンネル・注水部を入れ込み、焦点距離を長めにすることで必要以上の根管拡大をしなくても根管内を診ること・内視鏡下でレーザー照射が可能になりました。
画素数は、内視鏡の先端のレンズ径によって決まります。動きの中で1mmの隙間から診える世界は、必ずや診断や治療の中に大きな可能性を秘めていると思われます。
今回、開発している内視鏡は、多くの可能性を秘めた治療機器です。詳細については、7月の臨床研究会(京都)で発表します。(www.er-yag.gr.jp/10th/)
Erwin Adverlは日々進歩しています。うまく応用していくにはスキルが必要です。各地方でユーザーのための臨床検討会が開催されていますので、新しい情報を得るためにもまずご参加ください。
図24 左から、Er:YAG用内視鏡、曲タイプのNd:YAG用内視鏡(メディカル・サイエンス社製/MS)、直タイプのNd:YAG用内視鏡(MS)、診断用内視鏡(先端径:0.45mm/MS)
図25 上から、Er:YAG用直タイプの内視鏡(モリタ製・プロトタイプ)と200μのチップ、Nd:YAG用直タイプの内視鏡(MS)と200μのチップ
図26 内視鏡は先端部分を除くと4つで構成される。①内視鏡本体②光源③モニターと記録装置④送液ポンプ
図27 抜髄前の歯髄組織
図28 感染根管の拡大・洗浄後の根尖部付近
図29 根管中央部に診られたパーフォレーション
図30 根管中央部に診られたパーフォレーション
同じ筆者の記事を探す篠木 毅 】
【モリタ友の会会員限定記事
- 181号 Dental Talk Er:YAGレーザー発売25周年記念対談 Er:YAGレーザーの多彩な活用方法と将来展望
- 168号 Field Report 歯科診療の可能性を広げる 高画質の歯科用X線CT装置
- 166号 Clinical Report レーザー歯科医療における保険収載の潮流と安全性について
- 135号 CLINICAL REPORT 2波長のレーザーを利用した 光学的なカリエス治療の実際
- 130号 CLINICAL REPORT Er:YAGレーザーの再考 -程度大切-
同じテーマの記事を探すレーザー 】
【モリタ友の会会員限定記事
- 179号 Clinical Report 歯周病患者におけるEr:YAGレーザーの日常臨床への導入 SPTを通じた歯科衛生士との連携
- 178号 Clinical Report 歯周病治療におけるEr:YAGレーザーの臨床的有用性
- 177号 Clinical Report Erwin AdvErL EVOの臨床応用の有用性と実際
- 176号 Clinical Report 日常臨床におけるEr: YAGレーザー
- 175号 Clinical Report Erwin AdvErL EVO を使用した口腔軟組織の切開、切除の実際
目 次
モリタ友の会会員限定記事
他の記事を探す
モリタ友の会
セミナー情報
会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能
オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。
商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。