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Dental Talk
Er:YAGレーザー発売25周年記念対談 Er:YAGレーザーの多彩な活用方法と将来展望
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モリタが歯科用Er:YAGレーザー装置の発売を開始して今年で25年を迎えました。そこで今回のDental Talkでは、「Er:YAGレーザー発売25周年」を記念して、開発当初からご尽力いただいている篠木毅先生と青木章先生に、Er:YAGレーザーを臨床に応用するメリットや将来期待されることなどについて伺いました。
レーザーに着目した経緯とEr:YAGレーザーの特長
最初にレーザーの歯科応用に着目されたきっかけを教えてください
篠木レーザーとの出会いは『レーザー・メス 神の指先』という一冊の本がきっかけでした。脳外科医の医師が町工場とともにCO2レーザー機器を開発し、脳外科分野に応用していくというストーリーで、「誰がどのような場合で使用しても均一な成果が得られるレーザーを歯科にも応用できたら」と思いついたのがきっかけです。最初はCO2レーザーから使い始めて、その後Nd:YAGレーザー、さらに1996年にモリタから「アーウィン」が発売された時に、他の波長とは異なるEr:YAGレーザーに新たな可能性を感じて、以降はメインで使い続けているというのが私がレーザーと歩んだ歴史です。
青木Er:YAGレーザーの基礎研究は1989年に日本で初めて東京医科歯科大学の口腔病理の故山本肇先生(元学長)の講座で始まり、その後1991年に同じく医科歯科の私どもの歯周病学講座の石川烈先生、歯内療法の須田英明先生、さらに大阪歯科大学の熊﨑護先生の講座で基礎臨床研究が開始されました。私が2年間の学内での研修医期間を経て、講座に戻ってきた1991年からちょうどレーザーの基礎研究が始まることになり、研究を手伝うようになったのがEr:YAGレーザーに携わるようになったきっかけです。
お二人が感じるEr:YAGレーザーの特長についてお聞かせください
篠木まず、Er:YAGレーザーは表面吸収型のため組織への侵襲が非常に低い。これは例えば排膿させたい時には、傷の閉鎖が早くなってしまいますが、チップ選びや照射方法を工夫することで、このような様々な症例に対応することが可能になります。私は長年Er:YAGレーザーのセミナー講師を務めていますが、先生方からチップに関する質問を実に多くいただきます。私は「チップバリエーションが豊富」で「患部に直接コンタクトできる」ことがEr:YAGレーザーの最大のメリットだと考えていますが、先生によってはそれがうまく使いこなせていないケースもあるようです。
青木Er:YAGレーザーを歯周治療に応用すると、治療が楽になるだけでなく、結果も向上するのでとても有効と感じています。しかも他のツールで切開するのとは違って何より処置していて楽しいのです。自然に組織が切れていくのを目視で確認しながら出血もコントロールできる。さらにEr:YAGレーザーで軟組織にアプローチする際は注水下で行うことがほとんどですから、創面がとてもきれいに整っていると感じます。また、このレーザーは硬・軟両組織に応用でき、特に歯周疾患に関してはほとんどの処置が薬機法承認されていることも大きなメリットです(表)。骨に関しては残念ながら現在国内で未承認ですが、欧米ではすでに認められ安全性も確認されています。
そして、篠木先生も指摘されたように組織への侵襲が非常に低い。軟組織を切開したり、根面のデブライドメントを行う際に、照射面の熱影響や熱損傷は非常に限局的です。通常、歯肉や歯にレーザーを照射する場合は、それぞれ骨膜や歯髄の損傷が想定されますが、Er:YAGレーザーの場合、表面で吸収され深部へ高いエネルギーが入っていくことがないので、深部に熱傷害や熱影響を起きていることは考えられにくい。したがって、目視できる範囲をきちっと処置できれば安全性が高く、とても使いやすい。さらにチップ先端が細いため繊細な処置も可能ですから、拡大鏡やマイクロスコープを用いてより精密な治療を行うこともできます。
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表 Er:YAGレーザーでは、多くの使用目的と効果・効能が薬機法承認されている。
Er:YAGレーザーの多彩な活用方法
日常臨床でEr:YAGレーザーがもっとも活躍するのはどんなシーンでしょう
篠木当院では通常のポケット診査を行った後、より深いポケットがある症例では集中的にレーザー照射を行います。メインテナンスに入られた患者さんも同様に最後にレーザーでポケット内の除菌を行います。このように当院では治療の際にほぼ必ずレーザーを使っていて、それがルーティーンになっていますので、歯科衛生士から「この部位にうまくアプローチできないので、後でレーザー照射をお願いします」と言われるなど、治療の流れが変わってきました。現在Er:YAGレーザーは主に多くの歯周分野で多く使用されています。ただ、当初もっとも“有効”とされた硬組織への活用が進んでいない気がします。やはり「切削=タービンで」という固定概念を変えるのは難しいのかもしれません。ただ、初代アーウィンの発売当時に比べ、昨今はう蝕が少なくなっていますから、代わりにシーラントを実施する前の裂溝処置などの活用は有効です。しかし、歯科に関する患者アンケートでは「タービンの振動や音が苦手」という回答が必ず上位に上がってきます。私はそういう時にこそレーザーを積極的に活用してほしいと思います。繰り返しになりますが、「決まった処置の時だけレーザーを使う」というのではなく、私は朝診療室に着いたらすぐにレーザーを稼働準備段階に立ち上げて診療中はずっと使っています。「義歯では使う機会がない」という先生もいらっしゃいますが、義歯の調整時にレーザーを粘膜面に使って痛みを和らげれば義歯の調整量も減らせるでしょう。また、抜歯が禁忌の患者さんで残根部分に義歯が接触する場合には残根の形態修正のためにレーザーを活用すれば歯肉への接触や出血も少なく対応できます。このように応用範囲はとても広く、考え方を少し変えれば活用シーンは無尽蔵にあると思います。
3代目となる「アーウィンアドベールEVO」。小型・軽量化を実現し、操作性も向上した。 青木レーザーには様々な活用方法が考えられますから、先生の日常的な治療に組み入れていただくのが一番良いと思います。例えば歯周治療の場合、レーザー照射でポケット内の細菌はほぼ除去できますし、ポケット内壁の組織の炎症も減少します。さらに根面のデブライドメントでは従来のツールにレーザーを加えることで根面をさらに除菌でき、治癒が向上する可能性は高いと言えます。ベテランの先生の場合は、より高度な治療成果を目指していただくために、組織の付着や再生も視野に入れた治療を行うことができるでしょう。現在の歯周治療は、まず歯周基本治療があって、機械的な治療として根面のスケーリング・ルートプレーニングを行い、その後の評価で問題があれば外科治療に移行するというステップを踏みます。それはそれでよいシステムですが、歯周基本治療の際にポケット内を徹底的にデブライドメントすることで深くなった歯周ポケットを減らし組織付着や骨再生を促すことも可能で、レーザーはそうした治療の際の有効な手段になっています。
一方、レーザーに不慣れな先生は、簡易な症例から徐々に慣れていかれるのが良いと思います。個人的にレーザーが非常に便利と感じているメリットの一つとして、無麻酔で歯肉処置が行えることが挙げられます。臨床的に辺縁歯肉を少し切削して調整したいケースはとても多く、動物実験では、メスで切開するよりレーザー照射の方が痛みを感じることが少ないという報告もあります。とくにEr:YAGレーザーの場合は注水冷却するので、知覚が鈍麻し痛みをより感じにくくなります。無麻酔で処置していると、「チクッとする」とおっしゃる患者さんもたまにいらっしゃいますが、「麻酔しますか?」と聞くと皆さん「大丈夫です」と答えられます。特に重宝しているのは歯頸部の歯質欠損(WSD)ですね。マージン部に少し歯肉がかぶっている場合、ストリップスや圧排糸を使うほか、器具で歯肉を引っ張るなどいろいろな圧排方法がありますが、大臼歯は分岐部が露出してくると圧排はとくに難しくなります。そういうケースでもマージンを簡単にきれいに出したい時にEr:YAGレーザーはとても有効です。
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