181号 SUMMER 目次を見る
Clinical Report
MIと予防の接点におけるう蝕診断を考える - ダイアグノデント ペンの活用 -
キーワード:MIと予防/ダイアグノデント ペン/う蝕診断/感度特異度/適中率/有病率
目 次
う蝕判定とその精度
非侵襲&客観評価指標としてのメリット
ダイアグノデント ペン(以下DD)は、低出力レーザー光(655nm)がプローブ先端から2mmの透過深度でう蝕の代謝産物への蛍光反射を読み取る仕組みでう蝕の進行状態を確認できる検査機器であり、非侵襲的なう蝕診断になるため小児や妊婦の診断にも利用しやすい。また、明らかなう蝕窩洞の場合、X線透過像や口腔内写真による切削介入への患者の同意は容易であるが、MI介入の是非を問うような着色や脱灰、初期う蝕などの場面では、視覚的にその必要性を示すことが容易ではないため、DDは客観的数値を示すことができる説得力のあるう蝕診断ツールとなりうる。
ホントにむし歯?
DDによる臨床対応基準(表1)が示されているが、検査数値に大きく影響を及ぼすと考えられる要因、測定条件として十分考慮しなければいけない要因を挙げておく(表2)。検査手技を誤ることで偽陽性判定(むし歯でないのにむし歯と誤って判定)になりかねないため十分注意が必要である。また、う蝕判定の基準値(カットオフ)が変化すれば、う蝕歯に対する感度※1や特異度※2は変化し、偽陽性や偽陰性の割合も変化することも十分留意していただきたい(図1、表3)。また、検査結果、本当に「むし歯」である確率を陽性反応適中率、「むし歯でない」確率を陰性反応適中率として評価することができる(表3)。
対象を「診る」数値を「読む」
2つの異なる対象集団に同じ検査精度(感度・特異度)を有する検査法でう蝕判定を行った仮想データを示す(表4、5)。12歳児のDMFTを1と換算して計算された健診データ(表4)は、むし歯の判定よりもむしろ「むし歯でない判定」(陰性反応適中率が高値)を示した。予防概念が浸透し、低いう蝕有病率を有する地域やクリニックでは、DD検査数値を継続的に観察していく中で「むし歯でなくてよかったね」あるいは「むし歯になりかけたけど削らないで守っていこう」のような指標にもなりえる。一方、健診データと同様の感度・特異度を設定した仮想のクリニックデータ(表5)は、陽性反応適中率、陰性反応適中率ともに70%超を示した。
たとえ感度・特異度ともに高い検査であっても、対象集団の有病率が低いと陽性反応適中率が低くなることを意味する。つまり、検査陽性時の正解率は低くなることがうかがえる(表6)。
感度は高いが、特異度が低い場合は、陽性者の中に実は「むし歯でない」偽陽性者が多く混入する恐れがある。こういったう蝕の誤分類を招きうる判定基準の設定により結果の解釈が歪められることに注意が必要である。う蝕判定の基準値を下げて緩いう蝕診断基準を設定すれば、希釈効果によりその関連性を弱める過小評価につながるだろう。
切削介入に際しては、接着理論を支える高性能材料の適切な使用および高度な充填技術の修得によるMI修復の実践に加え、マイクロスコープなど拡大視野下での精密治療環境を手にすることで、早期切削介入の判定基準を設定する意義は高まると考える。進行スピードやステージの異なるう蝕病態、検査診断後の早期介入による患者の心理的負担を考慮した上で、個々のう蝕リスクの影響を把握し、治療介入のタイミングを決定する必要があり、DD検査数値の変化をどう「読み」どう「解釈」するかの判断が術者の手に委ねられる。
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表1 ダイアグノデント ペンの測定値と臨床の対応基準 -
表2 測定値に影響を与える要因 -
図1 う蝕の判定基準における感度と特異度の変化。 -
表3 感度と特異度、適中率と有病率の関連 -
表4 健診データ(仮想)における適中率 -
表5 クリニックデータ(仮想)における適中率 -
表6 検査精度と有病率に影響する適中率
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