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Clinical Report

普段の診療にプラスアルファの差別化を-キレイキープの使いどころと勧め方-

神庭歯科医院(島根県松江市) 神庭 光司

キーワード:義歯コーティング/プラーク付着抑制機能

目 次

はじめに

総務省統計局のデータでは2020年の日本国内の平均高齢化率は28.7%であり、日本人の約3人に1人が高齢者という超高齢時代を迎えている。筆者が開業している島根県の高齢化率は2012年に30%を超え、2019年のデータでは全国3位の34.3%とさらに深刻である。加えて高齢化に伴う国内の義歯装着患者数は、2,000万人を超えている(図1)。
義歯の衛生状態の悪化は、誤嚥性肺炎やカンジダ菌増殖による義歯性口内炎などの疾患を引き起こすことは周知の事実であるが、それを予防するための義歯の洗浄と言えば、従来から義歯用ブラシと義歯洗浄剤によるものが主流である。
しかしながら、フレイルにより手先の動きが衰える後期高齢者や、認知症が進行しつつある要介護者の数は年々増加しており、患者任せの義歯清掃ではいずれ衛生状態が維持できなくなることは容易に想像ができる。
元気な頃には義歯が衛生的に保たれていた患者でも、加齢変化により義歯を衛生的に保つのが難しくなっていくのを実感しているのは、筆者だけではないはずである(図2)。
今後増えゆくこのような患者の義歯の衛生状態を保つために、臨床現場の多様な声(図3)を元に開発されたのがMPCポリマーコーティングシステム「キレイキープ」(図4)である。

  • [グラフ] 義歯使用者
    図1 義歯使用者は年々増加の一途をたどっている。(厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットより引用して改変)
  • [写真] 加齢により口腔衛生状態を維持できなくなる患者
    図2 加齢により口腔衛生状態を維持できなくなる患者は多い。
  • [図] 高齢者歯科治療で、義歯の衛生状態を保つためには多大な労力がかかる
    図3 高齢者歯科治療で、義歯の衛生状態を保つためには多大な労力がかかる。
  • [写真] 2022年1月に改良されたキレイキープ
    図4 2022年1月に改良されたキレイキープ。 キレイキープスプレーⅡでは様々な口腔内装置に適用が可能となった。

キレイキープの特長

キレイキープは義歯全体を超親水性の「光反応性MPCポリマー」1)でコーティングし、バイオフィルムの形成を抑制するという新発想の製品である(図5)。自動車のポリマーコーティングをイメージするとわかりやすいのではないだろうか。
キレイキープの製品構成は、キレイキープスプレーⅡとキレイキープライトからなる(図4)。キレイキープスプレーⅡには光反応性MPCポリマーとエタノール・水が含まれ、キレイキープライトは波長260~280nmの深紫外線(UVC)照射器である。
これまでに光反応性のないMPCポリマーは、東京医科歯科大学や東京大学での基礎研究を基に、医科用途で実用化されていた。しかしそのポリマーは処理表面と化学結合しないため、歯科領域においてはブラッシングなどの擦過により剥離し、コーティングが維持できないことが課題であった。
そこで、東京大学大学院工学系研究科石原一彦研究室で開発されたのが「光反応性MPCポリマー」である。光反応性MPCポリマーはUVCを照射することで樹脂表面に化学結合し、摩擦に対する耐久性を大幅に向上させている2)(図6)。
使用に際しての特長は下記の3点である。

  • [写真] プラーク付着抑制効果により、義歯をよりきれいな状態に保つことができる
    図5 プラーク付着抑制効果により、義歯をよりきれいな状態に保つことができる。
  • [写真] 図6 光反応性MPCポリマーの開発により、コーティング被膜の耐久性は大幅に向上した。
    図6 光反応性MPCポリマーの開発により、コーティング被膜の耐久性は大幅に向上した2)
1. 操作手順が簡単で誰でも操作できる

① 通常の洗浄を施した義歯にキレイキープスプレーⅡを塗布し、弱圧エアーブローで乾燥させる。
② 汚染防止のため、付属の袋に義歯を入れ、キレイキープライトで義歯の表と裏に各3分ずつUVC照射を行い、MPCポリマーを固定化させる。
③ 袋から義歯を取り出し、流水で軽く洗い流す。
以上のシンプルな操作手順で、操作に習熟する必要が無い(図7)。
本製品は歯科医療機器ではなく雑品の扱いであり、歯科衛生士や歯科助手も使用できる。
また、当院では主に、新製義歯装着日に義歯の使用方法を説明している間や、患者を定期検診で診ている間に並行して使用しているため、診療時間のロスはほとんどなく使用できている。

  • [写真] [写真] キレイキープの操作
    図7 キレイキープの操作にトレーニングは必要ない。
2. 様々な口腔内装置に使える

旧製品は、射出成型材料である熱可塑性樹脂のうち、熱可塑性アクリルレジンに適用すると床が白化することがあった(図8)。
再研磨で元に戻すことは可能であるが、他医院から転院してきた患者の旧義歯には適用をためらうことがあった。
今回、改良されたキレイキープスプレーⅡでは、エタノールと水の混合溶媒に変更することで全ての樹脂床への適用が可能となっている。

  • [写真] 熱可塑性アクリルレジンの白化
    図8 キレイキープスプレーⅡへの改良により、このような熱可塑性アクリルレジンの白化の心配もなくなった。
3. 比較的安価な導入コスト

キレイキープライトの標準価格は29,800円で比較的安価な価格帯であり、高価な大型器械が必要ないことも導入しやすいポイントである。

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