121号 SUMMER 目次を見る
■目 次
■はじめに
既に本邦における日常臨床において、コンポジットレジンを用いた接着修復は、従来の通常の光硬化型のコンポジットレジンとフロアブルコンポジットレジンの使用の比率が、ほぼ同等になっている。約3年前に、クラレ社によって開発されモリタ社によって市販されたクリアフィルフローFXは、その適度なX線造影性によって高い臨床評価を得ていたが、A系3種とホワイトの4シェードのみであり、審美修復を含めた種々の症例に対処するにはいささかの困難を生じていた。最近、これらの種々の症例にも十分対処可能となり、さらに比較的幅の広い臼歯部咬合面窩洞においても高い耐摩耗性を発揮すべく81%もの重量フィラー充填率を有する「クリアフィルマジェスティLV(クラレメディカル)<以下:マジェスティLV>」(図1)が開発市販された。本報においては、高い耐摩耗性を有し、乳歯色を含め13ものシェードで供給されて十分に審美修復にも対応できるように設計された最新の“マジェスティLV”の臨床応用について、基礎的な知見を踏まえながら解説しようと思う
クリアフィルマジェスティLV
■1. マジェスティLVの基礎的性能について
1)マジェスティLVの組成
マジェスティLVの組成は、レジン成分として、TEGDMA(トリエチレングライコールジメタクリレート)とメタクリル酸系モノマー、フィラー成分として、特殊表面処理を施した平均粒子径3μm以下のバリウムガラスと同様に特殊表面処理を施した平均粒子径20nmのシリカマイクロフィラーであり、その他に触媒、顔料、安定剤を含有しており、フィラー重量含有率は81%である。
この硬化物を、FE-SEM(フィールドエミッションSEM)観察した像を図1に示す。
図1は5,000倍像で、3ミクロン前後の比較的大きなフィラー粒子の周りに非常に細かいフィラーが密に配合されていることが明らかとなった。
2)マジェスティLVの機械的性能
マジェスティLV硬化物の曲げ強さは、145MPa,曲げ弾性率は10GPaを越え、ビッカース硬さは、約80Hv弱であり、また、耐摩耗性はクリアフィルAP-Xのそれに匹敵し、フロアブルレジンといえども口腔内で十分に機能する機械的性能が与えられている。
さらに、重合時の収縮量が低く、X線造影性は、従来のクリアフィルフローFXの約2倍もあり、重合後の給水率はクリアフィルフローFXの約5分の1にもなっている。
3)その他の改良点
マジェスティLVは、フロアブルレジンとして最適のフロー特性を有し、形態保持性がよく、窩洞に対するぬれが良好で、シリンジから押し出す際に糸を引くこともない。結果的に、マジェスティLV1本でハイフロー、ミディアムフロー、ローフローの症例に対応できる。
また、これまでのフロアブルレジンに見られたようなペースト中の気泡の混入もなく、シリンジ形態も手になじみやすく改良されている。さらにシリンジの先端径も細く設計されており、小さな幅の狭い窩洞にも填入し易くされている。
4)マジェスティLVのシェード構成について
マジェスティLVのシェードは、A系が、A1、A2、A3、A3.5、A4の5種、OA系が、OA2、OA3、OA4の3種、その他にサービカル(CV)、乳歯色、OC(オクルーザル)、XL(エクストラライト)、E(エナメル)の計13シェードが用意され、また、硬化後の色調もマジェスティに合わせているため、審美修復的にも十分対応している。
5)マジェスティLVの適応症例
フロアブルコンポジットレジンはその開発目的のとおり粘稠度を比較的低く設定してあるため、幅や深さの小さな窩洞が適応となる。現在臨床家の間では、幅が2mmを越えるような比較的大きな臼歯部咬合面の窩洞にもこのフロアブルレジンを用いる傾向が往々にして見られるが、このような場合にもマジェスティLVは安心して用いられよう。2級窩洞では、隣接面に終始する場合、3級窩洞では比較的小さなもの、5級、歯頸部窩洞、根面窩洞でも比較的小さな窩洞が修復対象となる。
その他比較的大きな窩洞のライニングなど、またOA系のシェードが3種も用意されているので、補修修復にも用いられよう。
図1 マジェスティLV硬化物のFE-SEM像(x5,000)、3ミクロン前後の比較的大きなフィラー粒子の周りに非常に細かいフィラーが密に配合されている。
■2. マジェスティLVの臨床応用について
マジェスティLVを用い、クラレメディカル社のボンディングシステムであるクリアフィルトライエスボンド、並びにクリアフィルメガボンドFAを併用した場合の各種症例の術式を図2以下に示す。また比較的大きな症例には、クリアフィルマジェスティが併用された。
いずれも簡便な手順で、なおかつ極めて容易に接着性コンポジット修復が行われ、審美的な結果に患者さんの満足度も大きかった。
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図2 下顎大臼歯咬合面の小窩裂溝う蝕の術前 -
図3 窩洞完成 -
図4 トライエスボンド塗布 -
図5 光硬化 -
図6 マジェスティLVの填入(シェード:A2) -
図7 光硬化 -
図8 ダイヤモンドポイント(FO-30F)による仕上げ -
図9 修復完了 -
図10 上顎左側犬歯歯頸部実質欠損の術前 -
図11 窩洞完成 -
図12 メガボンドFAのプライマー塗布 -
図13 メガボンドFAのボンド塗布 -
図14 光硬化 -
図15 マジェスティLVの填入(シェード:サービカル) -
図16 光硬化 -
図17 修復完了 -
図18 上顎右側側切歯隣接面の二次う蝕の術前 -
図19 窩洞完成 -
図20 トライエスボンド塗布 -
図21 光硬化 -
図22 マジェスティLVの填入(シェード:A3) -
図23 光硬化 -
図24 ダイヤモンドポイント(FO-41EF)による仕上げ -
図25 ダイヤグロス(粗粒)による研磨 -
図26 ダイヤグロス(細粒)による研磨 -
図27 修復完了 -
図28 上顎中切歯隣接面の修復物脱落、二次う蝕の術前 -
図29 窩洞完成 -
図30 トライエスボンドの塗布 -
図31 光硬化 -
図32 マジェスティLV(シェード:OA3)によるライニング -
図33 光硬化 -
図34 クリアフィルマジェスティの3シェ-ド(A4、A3.5、A3)を順次填入 -
図35 光硬化 -
図36 修復完了 -
図37 右側第一小臼歯の変色歯の術前 -
図38 窩洞完成 -
図39 トライエスボンドの塗布 -
図40 光硬化 -
図41 クリアフィルSTオペーカー(シェード:L)の塗布 -
図42 光硬化 -
図43 マジェスティLV(シェード:OA3)によるライニング -
図44 光硬化 -
図45 クリアフィルマジェスティ(A3)を積層 -
図46 光硬化 -
図47 クリアフィルマジェスティ(T)を積層 -
図48 光硬化 -
図49 修復完了 -
図50 上顎左第一小臼歯遠心隣接面のう蝕の術前 -
図51 トンネル窩洞完成、バイタリングとセクショナルマトリックスにより隔壁装着 -
図52 メガボンドFAのプライマー塗布、窩洞が深いのでマイクロブラシが使われている -
図53 メガボンドFAのボンド塗布 -
図54 光硬化 -
図55 マジェスティLV(シェード:OC)を填入 -
図56 光硬化 -
図57 修復完了 -
図58 上顎第一乳臼歯咬合面、遠心隣接面のう蝕の術前 -
図59 窩洞完成 -
図60 トライエスボンドの塗布 -
図61 光硬化 -
図62 マジェスティLV(シェード:乳歯色)を填入 -
図63 光硬化 -
図64 修復完了
■まとめ
今回発売されたマジェスティLVは、高いX線造影性と耐摩耗性を有し、13種のシェードで供給され、審美修復にも応用可能である。色調適合性、研磨性も良好でダイレクトアプリケーションシリンジから直接窩洞に搬送、填入し易く臨床操作性は非常に良い。
う蝕、歯頸部の実質欠損も比較的初期のうちに修復しておくと、さらにそれ以上に進行を抑えることができる。
このような非常に臨床操作性のよい、また審美的で簡便なシステムがさらに臨床の現場で多用され、国民の口腔健康の増進に役立つことを願い、稿を閉じる。
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