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113号 WINTER 目次を見る

TRENDS

象牙質知覚過敏の症状を防ぐ歯磨剤 -DENT. システマセンシティブ-

渡辺 和志/紀藤 信哉

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■目次

■はじめに

象牙質知覚過敏とは、主として、熱、脱水、擦過、浸透圧、化学的刺激に対する反応として露出象牙質に誘発された短く鋭い痛みを特徴とし、象牙質の欠損や病理学的な病因によるものではないと定義されています。
自覚および診断による発症率は15~18%という報告がありますが、ライオン歯科材(株)の調査では、来院される患者様の中で象牙質知覚過敏を訴える割合は、およそ10~30% でした(2003年度歯科医院アンケート調査、n=711)。
部位としては、頬側歯頸部に発症する可能性が高く、ここは歯肉退縮の好発部位であり、エナメル質が最も薄い部位でもあります。歯種では、犬歯と第一小臼歯、次いで切歯と第二小臼歯が多いと報告されています。

■象牙質知覚過敏の発生機序

まず、歯周組織の喪失(歯肉退縮)あるいはエナメル質の喪失が起きることによって、象牙質の露出が生じます。歯肉退縮の因子としては、解剖学的(歯槽骨の形態、厚みなど)、生理学的(加齢による歯肉の量の変化など)生化学的、病理学的因子が関係しています。特に、ブラッシングによる作用(歯ブラシの硬さ、ブラッシングの強さ、研磨性など)や、急性および慢性外傷(外来物質の圧入など)、非外科的(ルートプレーニング)・外科的歯周治療も影響を与えていると推測されています(図2)。
また、セメント質あるいは象牙質スミヤー層の喪失により、象牙細管が露出します。さらに、酸性の飲食物等により、象牙質表面に象牙細管が開口し、象牙質の喪失を加速します。そこに刺激が加えられると、刺激は象牙細管内液の流れを増加させ、象牙細管の最内側すなわち歯髄の最外側に存在する神経終末を刺激します。このプロセスは動水力学説として最も広く受け入れられている仮説です(図3)。
一方、電流や低温は歯髄神経を直接刺激し、疼痛が知覚されます。そして、それらの疼痛のために充分な歯面清掃が行えないと、プラークが形成されやすくなり、象牙細管がさらに開口するという悪循環に陥ってしまう可能性があります。

  • DENT. システマセンシティブ
    図1 DENT. システマセンシティブ
  • 象牙質知覚過敏発症のしくみ
    図2 象牙質知覚過敏発症のしくみ
  • 象牙細管封鎖と刺激伝播の抑制(イメージ図)
    図3 象牙細管封鎖と刺激伝播の抑制(イメージ図)

■象牙質知覚過敏への対処(プロフェッショナルケアとセルフケア)

従来からの治療法は、動水力学説の理論に基づき、象牙細管内液の流量増加の防止と、歯髄神経の興奮抑制をすることで痛みの連鎖を断ち切ることにあります。
つまり、象牙細管の直径が小さくなるほど、象牙細管内液の流れをより大きく減少させることができることから、象牙細管の開口部を封鎖する方法は、臨床的な効果が期待できるのです。
また、スミヤー層や、歯の表面の物質が非浸透性沈着物であり、表面から脱落しにくいものであれば、さらに効果が持続します。
また、カリウムイオンを象牙質表面に作用させると、象牙細管内に拡散し、局所の細胞外イオン濃度を上昇させることで歯髄神経の働きを阻害するという知見もあります。これらの知見は、診療室での処置やセルフケア用品に応用されています。治療としての直接的な除痛法は、象牙細管の開口部をバリヤー(局所薬、バーニッシュ、象牙質接着剤、コンポジットレジン、グラスアイオノマー、レーザーなど)で封鎖することや、歯髄除去があります。
一方、セルフケアで重要なことは、知覚過敏を発症して疼痛がある部位でも、きちんとブラッシングを行って、象牙細管開口部にプラークが形成されるのを防ぐことです。その際に、象牙細管開口部にプラークや酸性の飲食物などが押しこまれないよう、封鎖する役割をもった成分の沈着や、痛みを抑える効果などが必要とされます。
このため、海外も含めて市販されているセルフケア用品には、歯磨剤や含嗽剤、ジェルなどがあり、薬用成分としてカリウム塩やストロンチウム塩、乳酸アルミニウム、フッ化物などが含有されています。これらの成分は、知覚過敏による疼痛を抑制・緩和し、ブラッシングをしやすくすることや、象牙細管を封鎖して症状を抑えることを目的に配合されています。

■DENT.システマセンシティブについて

象牙質知覚過敏発症の機序に基づいて開発されたDENT.システマセンシティブは、2つの薬用成分「硝酸カリウム」と「乳酸アルミニウム」によって、象牙質知覚過敏の症状を効果的に防ぎます。すなわち、冷気や冷水、擦過などの刺激によって、開口した象牙細管の内液が移動すると歯髄神経が刺激され、一過性の疼痛を生じますが、その刺激が伝わるのを、薬用成分「硝酸カリウム」が抑えます。
また、薬用成分「乳酸アルミニウム」が開口した象牙細管を封鎖し、細管内液の移動を抑え、痛みが生じるのを防ぎます。それにより、ブラッシングをしやすくすることと、香味(ラベンダーハーブタイプ)や、泡立ちを抑えた磨き心地が、滞りがちなブラッシングを促します。

(1)刺激閾値の測定
象牙質知覚過敏発症患者の刺激閾値は、電気歯髄診断器によって刺激を感じる電圧として、測定することができます。この時の電圧が高いと、痛みを感じにくい状態といえます。
象牙質知覚過敏発症患者4名の7歯を対象に、象牙質知覚過敏の症状を防ぐ代表的な歯磨剤と、DENT.システマセンシティブで、歯磨剤使用前、使用直後、使用2分後から30分後まで刺激閾値の測定を行いました(図4)。この結果、使用直後において、極めて発現が早い刺激の抑制作用が、認められました。

(2)象牙細管封鎖能の測定
上述の「動水力学説」に基づいて作製された、象牙細管内液の透過性を測定する装置(Pashleyの装置)を用いた実験で、透過性の抑制(率)を測定することによって、象牙細管が封鎖されていることを評価することができます。この装置に、ヒト抜去歯歯根部の象牙質脱灰切片をサンプルとしてセットし、一定圧のガスで水溶液を透過させた時の量を測定します。次に、サンプルに象牙質知覚過敏の症状を防ぐ代表的な歯磨剤またはDENT.システマセンシティブによる薬剤処理を行い、同様に透過液量を測定しました(図5)。さらに、薬剤処理による持続効果を評価するために、各サンプルの表面をブラッシングしてからも測定を行いました。
これらの評価結果(透過抑制率)から、DENT.システマセンシティブによる薬剤処理は、象牙細管の封鎖と、その持続効果が期待できることがわかりました。

(3)象牙細管の封鎖
また、象牙細管が封鎖されたことを確認するために、DENT.システマセンシティブによる薬剤処理後の象牙質表面と断面を、走査電子顕微鏡で観察しました(図6)。DENT.システマセンシティブ処置後の象牙質表面は、一面に付着物で覆われ、象牙細管の中まで封鎖されている様子が認められました。

(4)実効感と使用感
渡辺歯科医院(埼玉県北埼玉郡)にて、DENT.システマセンシティブの実効感および使用感について、使用テストを実施しました。
象牙質知覚過敏発症患者(各群10名)を対象に、象牙質知覚過敏の症状を防ぐ代表的な歯磨剤またはDENT.システマセンシティブ使用前後での「歯磨き後に、口をすすいだ時の歯の痛み」と「冷たいものを飲食した時の痛み」について、それぞれの痛みの段階で4段階絶対評価を行いました。歯磨き前と、使用1週間後から4週間後までの痛みの段階の変化は図78のとおりでした。DENT.システマセンシティブ使用後は、それぞれの評価項目で、継続的な効果の持続が推測されました。また、香味や味などの使用感についての7段階絶対評価の結果(図9)では、DENT.システマセンシティブの使用感が好評であったことがわかりました。

  • 電気歯髄診断器による刺激閾値の測定 測定値:歯磨剤使用前後の刺激を感じる電圧(閾値)
    図4 電気歯髄診断器による刺激閾値の測定
    測定値:歯磨剤使用前後の刺激を感じる電圧(閾値)
  • Pashley法による象牙細管封鎖能の測定 W1:歯磨処理後の透過量 W2:歯磨処理前の透過量
    図5 Pashley法による象牙細管封鎖能の測定
    透過抑制率={(W2-W1)÷ W2 }X 100(%)
    W1:歯磨処理後の透過量
    W2:歯磨処理前の透過量
  • 乳酸アルミニウムによる象牙細管の封鎖乳酸アルミニウムによる象牙細管の封鎖
    図6 乳酸アルミニウムによる象牙細管の封鎖
  • DENT. システマセンシティブの実効感 痛みの段階:3 耐えられない痛み 2 がまんできない痛み 1 ごく弱い痛み 0 痛みはなし
    図7 DENT. システマセンシティブの実効感
    -歯磨き後に、口をすすいだ時の歯の痛み-
    4段階絶対評価
    痛みの段階:
    3 耐えられない痛み
    2 がまんできない痛み
    1 ごく弱い痛み
    0 痛みはなし
  • DENT. システマセンシティブの実効感 痛みの段階:3 耐えられない痛み 2 がまんできない痛み 1 ごく弱い痛み 0 痛みはなし
    図8 DENT. システマセンシティブの実効感
    -冷たいものを飲食した時の痛み-
    4段階絶対評価
    痛みの段階:
    3 耐えられない痛み
    2 がまんできない痛み
    1 ごく弱い痛み
    0 痛みはなし
  • DENT. システマセンシティブの使用感
    図9 DENT. システマセンシティブの使用感

■最後に

SRPや歯肉縁下歯石の除去、中等度以上の歯周疾患外科処置後の知覚過敏症状の緩和ばかりでなく、ブリーチング(ホワイトニング)やPMTC後にも、同様の予防に関する指導が行われるようになってきています。これらの場合、疼痛は一過性のものですが、象牙質知覚過敏予防歯磨剤の使用が望ましいと考えます。
象牙質知覚過敏になるとブラッシングが滞りがちになることで、バイオフィルム(プラーク)が形成されやすくなり、細菌代謝物によってさらに象牙細管の開口が進みます。また、このプラークの蓄積がう蝕の発生や歯周病の進行につながっていきます。このため、象牙質知覚過敏の症状を軽減し、適切なプラークコントロールを行うためには、硝酸カリウムと乳酸アルミニウムの2つの薬用成分を配合したDENT.システマセンシティブが、推奨に値する製品であると考えます。

参考文献
  • 1)Martin Addy et.al.:小林賢一,他(監訳):Tooth Wearと象牙質知覚過敏,医歯薬出版株式会社,2003年
  • 2)中嶋省志,他:象牙細管の液通過性におよぼす乳酸アルミニウムの効果.日本歯科保存学雑誌,33:1114-1121,1990.

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