137号 SUMMER 目次を見る
■目次
- ≫ 患部をもっと良く見ながら治療をしたい。手指を細かくスムーズにコントロールしたい。患者さんが少しでも快適な治療をしたい。ツインパワータービンを進化させた臨床家の気づきと着想。
- ≫ タービンヘッドは小さければ小さいほどいい。頭に浮かんだのは、“できるだけバーを目視しながら治療したい!”そんな執念だったかも知れません。
- ≫ “小さくても高トルク”。ツインパワーが持つハイパワートルクはそのまま継承。
- ≫ “「小」が「大」を兼ねる!” パワフルマイクロヘッド独自の有用性。
患部をもっと良く見ながら治療をしたい。手指を細かくスムーズにコントロールしたい。患者さんが少しでも快適な治療をしたい。ツインパワータービンを進化させた臨床家の気づきと着想。

ユニゾンデンタルオフィス 院長麻生 昌秀
そんな一臨床家の素朴な疑問と克服への強い信念がツインパワータービン・テクノロジーをさらに進化させることにつながった。その開発の原点となった、気づきや発想は何か?その着想のキーパーソン、麻生昌秀先生(ユニゾンデンタルオフィス院長)の熱い肉声に迫った。

タービンヘッドは小さければ小さいほどいい。頭に浮かんだのは、“できるだけバーを目視しながら治療したい!”そんな執念だったかも知れません。
私たちが毎日行う、う蝕除去、クラウン形成、根管治療などには、正確・安全な作業を妨げるさまざまな障害が待ち受けています。それは、口腔内は狭くて暗く、さらには非常にセンシティブで治療の障害となる舌や頰粘膜が存在している環境で、そこで長時間にわたって精密作業を行わなくてはならないからです。
できるだけ正確な治療を行うためには、自然で無理のない姿勢で、バーの先端に注視しつつ、切削時の歯牙とバーの圧力を手指で感じ、タービンの回転数音を聞きながら、さらにはバーの垂直性をも感じながら、手指を自由にコントロールできることが重要です。
しかし、大きなタービンヘッドは術者の視界を遮り、患部を直視しにくくします。そのためう蝕除去時や根管治療の際、バーの先端を見ようとすれば、姿勢が崩れ手指をしなやかにスムーズにコントロールしにくくなり、過剰切削やパーフォレーション(穿孔)などを招く恐れがあります。また、インレー、クラウン形成など軸壁のコントロールや平行性を重要視する際は、通常さらにバーを長く見るため、タービンヘッドを側方に倒して形成しがちになってしまいます。その結果、ミラーに水滴がかかりやすくなり、隣在歯への損傷や平行性など正確・精密・安全な治療が困難になってしまうのです(写真1)。
さらにもう一つの問題点は、特に臼歯の場合、バーを歯軸に対して垂直に動かそうとすると、患者さんに大きな開口による負担を強いるだけでなく、対合歯にタービンヘッドが接触するために、自由な手指のコントロールをうばわれ、きわめて侵襲性とリスクの高い状況を生むことにつながります。
ですから、何よりもまずタービンヘッドを小さくコンパクトにダウンサイジングすれば、患部もバーの先端もさらに見やすくなるはず!と考えました。
タービンヘッドは小さければ小さいほどいい。まず、頭に浮かんだのは、自分の目でバーの先端を見ながら治療したい!そんな執念だったかも知れません。
写真1
“小さくても高トルク”。ツインパワーが持つハイパワートルクはそのまま継承。
ただ、コンパクトヘッドのエアータービンはかつて臨床に導入されたことがありましたが、思ったほど普及しませんでした。それはなぜでしょうか。理由は二つあります。一つはトルクが低くて切削効率が悪かったこと、もう一つは専用バーが必要で操作性にも難があったことです。その経験を踏まえ、“小さくても高トルク”をまず必須条件と定めました(※1、2)。
水滴がかかる位置と可視角の関係※1
タービンヘッドの真後ろから約30°の空域では、ミラーが濡れない状態が望ましい(図1)。
図1 冷却水量は健全な歯質の色を識別でき、窩洞を洗浄できる十分な水量である約15cc/min.を確保
図2 ヘッドがコンパクトになったウルトラMでは、ミラーが濡れない状態で明視できる領域が大きくなり、形成中にバー軸が見えやすくなった。
“「小」が「大」を兼ねる!”パワフルマイクロヘッド独自の有用性。
以上のようなエアータービンが備えるべきシステマティックな条件やチェックポイントをすべてクリアしながら、パワフルマイクロヘッドの開発が進められた結果、従来のスタンダードタイプと比較して約30%の小型化が実現(写真2)、従来のツインパワーシリーズを継承した握りやすいグリップデザイン、バーの軸方向と歯軸を平行に保つヘッド角15° (図3)もクリアできました。開口度の少ない患者さんでも対合歯に接触せずに高いトルクで安全かつ効率よく形成できるので、小児・高齢者、また臼歯のアクセスキャビティー形成時の根管治療などにも優れたアドバンテージをもたらすことでしょう。
可視角(明視できる領域)は、ウルトラMでは従来のトルクタイプと比較して、さらに大きなエリアを確保できています(図2、図4)。
そのことによって、患部をより快適、鮮明に見ることができますので、口腔内を覗き込んで治療しにくい、マイクロスコープによる形成、根管治療などにも、大きな有用性を感じています。
その他、暗い口腔内を自然で明るい照明で照らすLEDライトの搭載、さらにツインパワーシリーズでおなじみのゼロサックバック機構など、ツインパワーテクノロジーのノウハウを結集した、まさに「入魂の1本」と呼ぶにふさわしい製品になったのではないでしょうか。
私自身は、1点注水で水が飛び散らず、ミラーテクニックが使いやすいウルトラMを多用しています。ウルトラMの場合、20mm以上の長いバーを使うことで可視角が広がり、また、短いバーを使用すれば対合歯に接触することが少なくてすみます(図4)。
視野が広いから患部が鮮明に見え、確実・安全・効率的にアクセスできる。高トルクで軸ぶれがないから確信に満ちた形成がストレスなく可能になる。その結果、私たち人間の感覚に寄り添った柔和なMI環境が構築され、患者さん、術者、スタッフの信頼関係やパートナーシップが自然と醸成される。そんな善循環のリレーションを実現させることこそ、私が求める歯科医療の姿ではないかと感じています。
写真2
麻生院長が求めたパワフルマイクロヘッド4つのポイント※2
1. 細く軽く握りやすいグリップのデザイン
安定したグリップによって、バーの切削感を指先にダイレクトに伝えるとともに、無理な力をかけずに手指を自由にコントロールすることができる。
2. ヘッド角15°の確保(図3)
鏡視による上顎歯形成の場合、隣接歯を傷つけたりテーパーが強い支台歯形成になりがちになる。患者さんが楽な頭部の位置は、おおよそ咬合平面が-7°といわれている。その場合、術者の手首に負担をかけないタービンのヘッド角は15°になる。このヘッド角15°の確保は、バーの先端が術者の身体に対してどの程度、垂直であるかを感じながら形成するためにも不可欠なポイントとなる。
3. 可視角(明視できる領域)を広げて大きな視野をキープ(図4)
ヘッド高とヘッド径をコンパクトにするとともに、ヘッド先端部を最大限に絞り込み、スリム化することによって、歯軸垂直方向からの可視角を拡大すること。
4. ヘッドは小さくても高トルク
ただヘッドをコンパクトにするだけなく、切削効率や操作性を落とさないためにトルクを維持することが重要。
図3 上顎咬合平面
図4
症例紹介
CASE1 見やすい患部で術者の負担減(右側上顎6番 髄室開口)
ウルトラM(SAR-UMX)
髄室開口や大臼歯の治療時にバーの先端が見え、水滴のかからない最適のミラー位置を確保できる。
スタンダード(PAR-EX)
患部が見えにくいため、バーを倒して見ることで余分に切削することがある。
CASE2 バーが歯軸に垂直、低侵襲・低リスク(右側上顎7番)
ウルトラM(SAR-UMX)
大臼歯、智歯、開口の小さい患者さん等のアクセスしにくい部位でも歯軸に垂直にバーをあてて動かすことができる。
スタンダード(PAR-EX)
大臼歯、智歯、開口の歯軸の側方からのアクセスになるため、ミラー位置がヘッドの側方になり、水滴がかかりやすい。またバーを倒して治療を行うため、余分に切削することがある。
CASE3 少ない開口量で、患者さんの負担減(下顎7番大臼歯)
ウルトラM(SAR-UMX)
優れた操作性と見やすさで少ない開口でも治療が可能。患者さんへの負担も軽減。
スタンダード(PAR-EX)
ヘッドが大きく高いため、対合歯に接触することがあり、大きな開口が必要となる。
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